【感想】引っ込み思案な神鳥獣使い2―プラネットイントルーダー・オンライン―【電子書籍限定書き下ろしSS付き】

このレビューはネタバレを含みます

　「このライトノベルがすごい！2021」でも紹介された期待のVRMMO物、シリーズ二巻ではさらにゲーム世界を楽しむ物語が描かれている。
　この作品のポテンシャルを余すことなく描いた「メインクエスト『影の興国』」のエピソードはネット版からさらに加筆が行われ、より充実した内容となって刊行されている。
　一読者としては本当に幸福な限りである。ありがとうございます……！

　VRMMOはおろか、本格的なRPGゲーム自体が初めてだという主人公・ツカサによるゲーム物語は、この二巻でさらに豊かな世界を描いてくれている。
　全体的には上述したメインクエ、先行アーリーアクセス期間のプレイである前半と、長期にわたるベータ期間終了による正式リリース後のクラフト方面へのチャレンジが描かれた後半が収録された形だ。

　様々な出会いを経て、色々な人が色々な考えでプレイするMMOの面白さ、厄介さが描かれたこの巻は、まさに二巻に相応しい。
　一巻で始めた世界をより広げて、より深く物語世界を楽しめる代物である。とても楽しい。


　書籍化として見ても、掲示板回での加筆でわかりづらかった箇所（ロット取り逃げ事件など）が修正され、ネット版では触れられなかった箇所（他国グランドスルトのメインクエなど）にも触れられている。
　上述したように、メインクエはかなり加筆が見られ、メインNPCらとの交流はより濃厚なものとなった。
　それゆえにこそ……とこの辺は触れるべきではない部分だろうが、描かれたメインクエのストーリーはより深みを増した印象だ。

　メインクエでの好感度アプデ適用は、もしかすると書籍版でオリジナルな展開に繋がっていくかもしれない。
　ネット版ではなかなか出番のないサブクエも含めて、その辺の加筆には期待したいところである。

　描き下ろし番外編は「山村は、つれづれよりも移ろいに」。
　主人公を見守る里見滋の、大人側に寄ったクールな視点が描かれた一編である。短いながら、主人公との初対面も描かれている点は見逃せない。
　加えて、春からの連載が決まっているコミカライズの１話が収録されているのも特典としては大きい。
　こちらもこれからに期待したい優れた一話だった。

　公式オンラインストアの購入特典は「主役はチョコ！」。
　今回初登場したチョコの前日譚、いかにしてゲームを始めたか、彼女が憧れるレジェンドさんとの出会いや、覇王さんへの恩義、あるいはあっさりフラれるSkyダークなど、ファンはニヤニヤ不可避な特典だった。

　総じて優れた書籍化である。一切の瑕疵のない、完璧な星五つだ。
　イラストの選択もどれも素晴らしい。
　ちょい役ゆえにイラスト化されなかったキャシーだけが惜しまれるが、みすぼらしいルビー、クラフトでテーレッテレーしてるツカサ、力の入り方が尋常じゃないチョコとカワウソなど、どれも本当に素晴らしかった。

　間違いなく外れることのない良作なので、未読の方はぜひとも読んでもらいたい。
　ややお高めなので、なかなか手が出ないという方は、まずはネット版だけでも覗いてみてもらえたら幸いである。

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