0
森茂暁 / 講談社学術文庫 (8件のレビュー)
レビューを書く
総合評価:
"powered by"
きのさん
南朝の生まれから、歴史から消えていくまでを描く。 吉野の山奥まで遁れ何とか命脈を保ってきたか弱い存在といった私の歴史観が、北朝と同様の統治組織を持っていたという記述で覆された本。
投稿日:2023.07.09
かおるひめ
鎌倉時代から室町時代に亘った約200年の歴史を持つ、南朝。 大覚寺統の始まりから建武の新政、そして消滅までを解き明かす。 第一章 鎌倉時代の大覚寺統 第二章 建武の新政 第三章 南朝の時代 第四章… 南朝を読みとく 第五章 後南朝とその終焉 研究文献目録、南朝年表、索引有り。適宜、略系図や図表有り。 始まりは兄と弟。 それぞれの子孫、大覚寺統と持明院統の両統迭立と、 鎌倉幕府の調停と斡旋が重要だったのだが、 子孫は増えるし、同じ系統だっていろいろあるしで、 天皇、上皇、法皇、東宮、親王が入り乱れての、皇位継承争奪戦。 そこに登場したのが「一代の王」後醍醐天皇。 「王権至上主義」と倒幕への執念で鎌倉幕府滅亡へ。 建武の新政の夥しい綸旨の発行と皇子派遣による全国制覇の夢。 だが、武家社会の支配、綸旨万能主義での混乱と失墜。 離反した足利尊氏+持明院統=室町幕府と北朝の成立に。 そして後醍醐天皇は三種の神器を抱えて吉野へ。 ついに南朝と北朝が併立する事態に。 後醍醐天皇が築いたその朝廷は、彼の遺言に縛られる。 表舞台の京へ・・・彼の執念と怨念の凄まじきこと。 観応の擾乱での幕府のごたごたで、正平の一統で北朝を廃し、 京都を制圧した南朝の、半年の束の間の夢へ。 その後、満を持しての足利義満による南北朝の合体だが、 皇位の両統迭立の不履行は、旧南朝側の皇位の 問題への不満となり、諜叛を引き起こすことになる。 幕府の将軍たち、義満、義持、義教と、代が替わるにつれての 後南朝へ対する厳しい状況・・・隔離と出家での忍従と服属。 対して、禁闕の変では三種の神器の一つ、神璽の奪取。 更に応仁の乱にまで関わり、徐々に南朝の者たちは消えていく。 「闇の歴史、後南朝 後醍醐流の抵抗と終焉」を読んで、 更に南朝に興味を持っての選書です。 後南朝だけでなく、南朝時の代を重ねる毎に乏しくなる史料。 それらを粘り強く読み解き、推察する過程が垣間見えます。 特に「新葉和歌集」から読み解ける南朝を構成した、 公家や僧侶たちの存在、朝儀や儀式。 綸旨等から分かる武者所や訴訟制度の聴断の存在。 政治や軍事、宗教、文化の実体を備えた朝廷であったこと。 九州の制西府と日明貿易や倭寇との関係、 地方との関係も推測されていきます。 南朝とは、思ってた以上に複雑で、一筋縄では語れない 存在だったのだなぁと、感じました。続きを読む
投稿日:2022.05.29
1440612番目の読書家
南朝研究は、明治以来の南朝正統史問題、資料の少なさという二つの大きな問題を抱えている。 鎌倉中期頃、後嵯峨天皇の後継者を巡り親王兄弟が大覚寺統、持明院統に分派。幕府は両統併立の立場。 後醍醐は後宇田の…謀略により31歳という異例の高齢で天皇となったが、後宇田の嫡孫への践祚のための中継ぎであった。ところが後宇田の発言力が低下し死んだため、後醍醐新政が可能となった。中継ぎを保証したのは幕府であったため、後醍醐は独裁的な新政を行い幕府に対抗した。持明院統は幕府についた。 建武の新政では綸旨が乱発され、土地問題などに混乱が生じた。特に軍事に関する綸旨に権限を持たせた点に特徴がある。天皇自ら軍事指揮をすることは稀有である。分身として皇子を大いに使った点も特徴である。 尊氏は後醍醐に廃位されていた持明院統の光厳と結託し、その宣旨を受け後醍醐討伐を行う。後醍醐は神器を持ち吉野に逃れ南北朝時代が始まる。 観応の擾乱により南朝は漁夫の利を得て延命する。正平の一統により南朝が北朝を摂取するも、尊氏により短期間で北朝が再興され再び分裂。南朝三代の長慶天皇は大正時代まで即位が疑問視されていた程資料に乏しい。義満の仲裁で和議がなり南北朝時代は終わる。南朝延命の理由の一つに反幕府の地方軍事勢力の協力がある。条件は両統の併立と南朝側への経済的保証であった。 しかし条件は履行されず南朝残党は後南朝として政治的に敗北する。両統併立もされなくなる。続きを読む
投稿日:2022.04.16
モンタニャールおじさん
南北朝時代に関して多くの著作がある研究者による南朝の全体像を明らかにする著作。鎌倉時代における大覚寺統の成立、その中での後醍醐天皇の特殊な位置(「傍流の傍流」)、綸旨万能主義の統治体制としての建武の新…政、地方の南朝支持勢力、特に懐良親王の征西府の動向、宗良親王が編纂した『新葉和歌集』からの南朝の制度の析出、後南朝勢力の動向…といったトピックが、乏しい史料からの手堅い史料解釈によって肉付けられている。戦前のイデオロギー的な南朝の高評価、それに対する反動としての戦後の南朝軽視をともに乗り越えて、一個の政治的・軍事的勢力としての南朝が南北朝から室町時代にかけて、日本全体の外交・内政を少なからず規定していたことを克明に描き出している。続きを読む
投稿日:2021.02.06
his360
鎌倉時代の皇統分裂から後南朝までを射程とした南北朝時代における南朝の通史。史料の少なさによる研究の困難さが伝わってくる。日本史における南朝の位置づけが少しながら理解できたように思う。
投稿日:2020.07.10
重度積読症
太平記を読んでから、南北朝時代に関心が持てるようになりました。本書は、両統迭立から後南朝の終焉までをカバーしており、複雑なこの時代の動きが概観できます。
投稿日:2020.04.20
ポイントが追加されました。ポイント明細ページからご確認いただけます。
クーポンコードの形式が正しくありません。半角英数12桁で入力してください。
エラー(エラーコード: )
本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック
スマートフォンの場合
パソコンの場合
このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?
ご協力ありがとうございました 参考にさせていただきます。
レビューを削除してもよろしいですか? 削除すると元に戻すことはできません。