0
一穂ミチ, 竹美家らら / ディアプラス文庫 (7件のレビュー)
レビューを書く
総合評価:
"powered by"
yukimisake
表紙が綺麗すぎる!!(表示されないけど) みんみんさんの沼落ちシリーズ、一穂ミチさんです。 前作『ふったら、どしゃぶり』で幸せになった整と裏腹にフルボッコになってしまった和章がどうなったのか心配でたま…らなかった私。 あとがきで「和章はこのまま独りでいて欲しい」「やっぱり和章は整とくっついて欲しかった」等の読者からの声が多かったと一穂さんが書かれていましたが、私の思いは一つです。 誰か!和章を幸せにしてやってー!!涙 みんみんさんに救済があると聞いた時は本当に安心しました、ありがとう一穂さん。 今回の和章は前作以上に猛省しています。整が弱っている所につけ込んで、整をずっと側に置いておいた事に対して更に自責の念にかられている様子。(整も辛いんですが、和章が可哀想だった…) デザイナーとして売れっ子なのに、あれ以来ぱったりと物作りを止めてしまっています。 そんな折に、大学時代の講師だった元教授の石蕗から書庫の整理のアルバイトをしてくれないかと連絡が来ます。 魂の抜けたような状態で山奥の先生の住まいの近くに仮住まいをして通う事に。 そこで運命の出会い、待ってましたよ。どうか、どうか一つ和章を幸せにしてやって下さい!!と謎の親目線で頼み込んだ相手は、石蕗の孫の柊です。 訳あって親元を離れて石蕗おじいちゃんの元で2人で暮らしています。 植物園で一生懸命に花を育ててる純粋なイケメン。良いじゃないの、和章を頼みましたよ!と早々に拝みますが、2人が結ばれるまでにかなりの紆余曲折が…。そりゃそうか。 和章のイメージは優しいけど手先が器用なのとは裏腹に不器用すぎる人だったんですが、それが今回大分掘り下げられてる上に、石蕗おじいちゃんと柊のお陰で前作では最後の方でしか見られなかった和章の人間らしい所が垣間見えたり、前と違って結構笑ってくれるのでとても魅力的なキャラに変貌していました。 こういうクールで自分を持ってるキャラって笑うだけで破壊力ありますね。 柊がこんな笑い方もするんだ、と見入ってしまうのも分かります。 今回のテーマはおじいちゃんが教授時代に和章に教えた『Einmal ist keinmal』というドイツ語。日本語で『一度はものの数じゃない』という意味ですがこの解釈が2人それぞれ違ったのが面白かったです。私はどちらかと言えば「一度駄目でも諦めるな」という柊寄りの考え方が好きです。 その一度が和章に結構な傷を残してるんですが、柊なら何とかしてくれそうだと期待しましたが、柊も中々にきつい過去をお持ちだった…。 柊が花の手入れで刺さってしまった棘を和章が丁寧に抜いていくシーンがあるのですが、お互いの棘を溶かして行くお話なんだなとこちらに分からせてくれる印象的なシーンでした。 ですが1番好きなシーンは、柊がおじいちゃんから貰った腕時計が止まってしまい上手く戻せないのを和章が直してあげるシーンです。これが多分2人の距離を近付けたきっかけだと思うのですが、なんて事ないシーンなんですがなんか良いんですよね…(語彙力がまた消えた) 前作でも思いましたが一穂さんてちょっとしたシーンでも美しくしてしまうんですね。 時計もキーアイテムなんですが、和章の止まった時間が動き出したようで嬉しかったなあ。 和章の時間を進めたもう1人の立役者、石蕗おじいちゃんがもう、理想のおじいちゃんすぎて今すぐこんなおじいちゃんが「やあ、君のおじいちゃんだよ」って現れてくれないかなあと思った程。 穏やかだけど鋭くて、悩み事があればすぐに相談したい! そらこんな良い孫もいるわけだ!! そんな穏やかに見えるおじいちゃんにも壮絶な過去が…。皆さん辛すぎませんか…?とある事件のせいでおじいちゃんは教授を辞めてしまっています。柊だけは心からおじいちゃんを信じていたのですが、そんなおじいちゃんが和章に放った言葉…。そしてその後に和章が返した心からの言葉…。 泣ける…泣けるよおじいちゃん!!私も信じてるよ!! 私もフルボッコにされていますが、まだ2人はラブラブになりません。これは相当に幸せになってくれないと困りますよ!?とじりじりと近付いて行く2人に1人でやきもきしておりました。 今回も雨が重要なシーンで使われていますが、本作の1番重要な場面の雨は台風レベルの豪雨でした。これはこれでかなり盛り上がるのでとても良かった! 前は雨の音も届かないタワーマンションに居た和章ですが、雨の音が届く場所にいる方が似合う気がします。水も滴るなんとやら、良い男は濡れておけば良いのです。 最後の最後に色々と乗り越えて漸く幸せになってくれた2人に心の中で万歳三唱、良かったね和章…!もう1人で壊れた時計を見なくて良いんだよ! そして本当の最後にタイトルの真の意味が分かり感動。なんつう…なんつうロマンティックが止まらない!! 私もこんなん欲しい!!(未読の方には何がなにやらさっぱりだと思いますが、きっと皆さん欲しい!!となるはず)まあ私の部屋にこれがあっても浮きまくるだけなんですけども。 表紙の緑色がこの色なのかなーと何だか幸せな気持ちになりました。ありがとう、一穂さん(2回目) 今回はちゃんと完全版を手に入れたので書下ろしが付いていたのですが、こちらはもうずっとハッピーなのでほっこりできました。 本編で久々に少しだけ登場した整を見て思ったのですが、やっぱり整は一顕と、和章は柊と居た方が無理していない感じがして良いですね。 余談ですが、みんみんさんがラブシーンが多いけど、と気にして下さっていたのですが、BLを読んで毎回思うのですが、めちゃくちゃ綺麗に書いて下さるので全く抵抗なく読めます。作家さんて凄いなあ。 さて、次の沼落ちシリーズはおびのりさんオススメの『仮面の告白』とまたまた木原さんが順番待ちです。次は重めが続くのかな?続きを読む
投稿日:2024.04.29
しろこ
このレビューはネタバレを含みます
ふったらどしゃぶりを読んでいた時は、正直、和章のことがよく見えなかったし(整というフィルターが強すぎて)ちょっと悪者な印象だったけれど、悪い人では全然なかった。傷ついた人だった。そして真っ直ぐな人。 柊が、本当にいい子で、優しい。そして、柊も傷ついていて。 先生の最後が悲しかったけど、本心がみえて、人間らしさが出たところは、心にささった。 傷ついた人たちの、癒しと再生の物語かな。 穏やかで、前向きな終わりに、救われました。
投稿日:2021.12.30
あんこ
なんてぴゅあなふたりなのか… すべての人にとげがあるんだなぁ。人にとっては些細なものに見えるかもしれないとげたち、抜けなくなったとげたち。それも含めて今そこにいるあなたで。これからはそれ以上とげは増え…ないようにはできる。 なんて真っ直ぐな人たちなんだろう。続きを読む
投稿日:2021.07.08
らい
和章の、石蕗先生の、柊の、それぞれの抱えたいびつな棘が、歪なまま静かに受け入れ、他者の存在によって許されていくまでの物語。 柊ちゃんの両親はいわば息子に捨てられたも同然で、書き下ろしでお母さんの痛みがちゃんと触れられていたのにもホッとしました。 柊ちゃんはあそこで両親ともちゃんとわかり合った上で本当の意味で大人になれたんだなぁと。 一文一文の研ぎ澄まされた表現がとにかくどうしよもうなく好きで、初めて読んだ場面と同じ場面でやっぱりまた泣いてしまう。 和章と柊が異なる世界に生きてきた同士だからこそ惹かれ合い、和章の中に新しい色がどんどん足されていくこと、その色彩に戸惑いながらもふたりの恋がどんどん花開いていくところがとても好きです。
投稿日:2019.08.17
miow
「ふったら、どしゃぶり」読了。 前作では、どうしても整に肩入れして読んでいたので、今作で和章の人となりが理解できて良かったです。勢いよく展開するというより、静かに氷が溶けていくのを見守るようなお話でし…た。書き下ろしは温かい空気感で、優しい気持ちになりました。続きを読む
投稿日:2019.07.20
shirotae16
「ふったらどしゃぶり」のスピンオフ完全版。 前作との違いは読み比べていないのでわかりませんが、読むとやっぱり和章も幸せになって良かったな~という気持ちに。 その相手である柊の話でもある今作は、傷を負っ…た人間が傷を背負ったまま生きていくのに苦しんで、悩んだ末に自分以外の人間によって救われる…というか背負ったまま生きていけるようになる話、かなと。 解決を得ないまま死んでしまった柊の祖父のことを考えると悲しくなりますが、和章がいることによってその痛みが少しでも軽くなるのなら、それ以上のことはないように思います。自然と寄り添い合っていくこの二人には、穏やかで静かな愛情が似つかわしい。素敵なお話でした。続きを読む
投稿日:2019.07.14
ポイントが追加されました。ポイント明細ページからご確認いただけます。
クーポンコードの形式が正しくありません。半角英数12桁で入力してください。
エラー(エラーコード: )
本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック
スマートフォンの場合
パソコンの場合
このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?
ご協力ありがとうございました 参考にさせていただきます。
レビューを削除してもよろしいですか? 削除すると元に戻すことはできません。