【感想】ドナルド・キーン自伝 増補新版

ドナルド・キーン, 角地幸男 / 中公文庫
(5件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • koba-book2011

    koba-book2011

    「ドナルド・キーン自伝」ドナルド・キーン。初出は1993のようですね。中公文庫。



    実は別のキーンさんのエッセイをふらっと読み始めたんですが、びっくりしまして。日本語が、きれいで。文章が、きれいで。こ、これは只事ではないな、と思い、その本を中断して「知ってるつもりだけどこの人、どんな人なんだけっけ」興味で自伝に乗り換えて、スルスル読了。これだけ日本語文章がきれいだと、極端な話、何を書いても読めてしまうのでは。



    1922アメリカ生まれ、2019没。
    戦争前に日本文学に魅入られて、日本語を習得。その特技で太平洋戦争に従軍、戦後に紆余曲折を経て念願通り日本文学研究者として、「日本とアメリカの半々の学者・作家生活」を送った人です。

    この手の自伝あるあるで、「日本文学研究者」として安定した地位を得るまでの時代のお話が面白い。戦争前後の混沌混乱の中で、そういう「夢」をあちこちにぶつかってアザを作りながらも追い続ける青年の物語ですね。

    後半はもう安定しちゃうので。ご本人が分析している通り、「同じことを同じような熱量と日本滞在時間でやっている人類がほぼいない」 「ガイジンがこういうことをやっている、ということで、戦後日本のジャーナリズムでパンダ的な人気を博してしまい、著名な文学者たちが軒並み自分と交友してくれる」という好循環にはまっていきます。
    なのでこの辺は、(おそらくご本人も自覚的で)「ほらあの有名な小説家とも僕は個人的に付き合ったんです、こんな人でしたよ」という話ばかりになります(笑)。
    まあご本人も「結局、有名人との交流を書かないと商品として成立しないよね」という諦めもあるんだろうなあ、という筆使い。ただそれも、本当に文章が謙虚で均整が取れている。加えて衒学的にならないけど足腰の強い本物の「教養」ってのが匂いたちます。透明度の高そうな人柄が透けます(本当のところは知りませんけれど。会ったこともないですから)。

    ともあれ日本文学、日本語への愛があるんだろうなあ、という好感度高し。それにこの生涯って、母国アメリカの価値観から考えたら、風変わりで数奇な人生でしょうねえ。

    この人の書かれたものはおいおい楽しもうと思います。(でもこの自伝が結局いちばんなのではないかなという気もしますが)

    あと、日本の、昭和の文学などに、なーんにも興味がなかったら、全般別に面白かないかもですね。。。
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    投稿日:2022.10.29

  • ぴあ野

    ぴあ野

    →「つながる読書」
    https://blog.goo.ne.jp/mkdiechi/e/ee72b9d5ed744c03ef44378f14cfead5

    投稿日:2021.03.24

  • miyuki

    miyuki

    日本文学者として名高い著者の自伝。昨年亡くなったがその数年前に日本国籍を取得し「日本人」として生涯を終えた。著者の語りはまさに20世紀の歴史一コマとも言えるものである。
    著者が初めて出会った日本文学が「源氏物語」でその美しい物語世界に魅せられ、それまで何も知らなかった「日本」という国を生涯深く探求していくことになる。
    それはまだ第二次世界大戦が始まる前のこと、10代の頃である。そして終戦後、日本、日本文学、文化という未知の世界を追い求め、日本に対する情熱を元に、当時としては苦難とも言える来日、日本での勉学、生活を始めるのである。若き学者の情熱と行動力が伝わってくる。
    終戦後は日本人は長い歴史に培われた日本の文化を否定し、軽んじたりする中、著者は文化の素晴らしさ認識し、研究していったのである。我々日本人でさえ、「源氏物語」を原文で読むことは難しい中、著者は日本語で「源氏物語」はじめ日本の古典を読み、研究したのである。
    「日本文学」「日本文化」を海外の目で評されることは、日本人がそれを研究するのとは少し違った客観的とも言える新しい発見さえ感じられる。
    著者の長年の来し方を振り返る語り口は感動を覚える。
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    投稿日:2020.04.19

  • norihon

    norihon

    キーンさんが、アメリカに生まれ育ちながら、どのように日本に惹かれていったかがよくわかる。コロンビア大学時代、ケンブリッジ大学時代、そして日本でいろんな人と会い、交友を深めてゆく。有名人が多い。バートランド・ラッセル、ウェイリー、マリア・カラス、グレタ・ガルボ、三島由紀夫、川端康成、大江健三郎、安倍公房、吉田健一、…。読んでいて華々しくもなる。日本文化を愛し、オペラを愛す。日本人になり、日本で亡くなったが、よい人生だったと思う。続きを読む

    投稿日:2019.06.08

  • 中央公論新社

    中央公論新社

    日本文学を世界に紹介してきた著者。ブルックリンの少年時代から、日本国籍取得まで、三島由紀夫ら作家たちとの交遊など、秘話満載で綴った決定版自叙伝。

    投稿日:2019.05.27

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