【感想】わたしは英国王に給仕した

ボフミル・フラバル, 阿部賢一 / 河出文庫
(8件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • モリゾウ

    モリゾウ

    読み始めてすぐに「これはいつ頃のお話なんだろう?」と気になり出したが、そうした疑問をすくい上げるように、物語の中盤からヒトラーやナチと言った単語が現れ始める。この展開自体が、まさに時代や国家と言った大きなものに個人がなすすべなく流されて行く情景を物語っている。続きを読む

    投稿日:2021.08.21

  • tom555

    tom555

    B・フラバルのように生きたい! 軽い語り口で人間の表と裏、悲劇と喜劇、権威と失墜、愛と憎しみ、貧乏と金持ち。人は対局を持っているが、人前では隠しているし、時として自分自身にも嘘をついている。そんな人間の本性を面白く、切なく、身近に感じさせてくれるすごい本。鳩に餌を上げようとして転落死したとされる作者の、教養に随伴する知性を前面に出さないことをモットーとしているところ、カッコいい!!続きを読む

    投稿日:2021.05.14

  • bw.the.bars

    bw.the.bars

    素晴らしすぎた
    美しく愛しい寂しい物語
    最終章は最初から最後の一文まで素晴らしすぎるんだけど、それはそれまでの4章のユーモアなど茶目っ気があるからで。
    4章までの語り口や歴史の混ぜ方などが去年読んだイ・ギホさんの『舎弟たちの世界史』を想起した。
    どちらも歴史に翻弄される一市民の物語で、ユーモアとシリアスとのバランスが良い。
    『舎弟たちの~』の方がブラック度が高いかな。


    少しずつ大きな歴史の動きがジーチェの生活に影を落としはじめてから、それがひたひたと文章にも潜んでいく。
    そんな中にもユーモアがあって基本的に最終章までは可愛いなぁ、愛しいなぁと思いながら読んでいけるんだけど、
    ラストのラストは静謐さの中でユーモアも悲しみも全てが美しく愛しく哀しくて目の端に涙が溜まっていった。
    寒い中読んだからか涙が温かく感じられて…。



    読んで良かった。
    大好きな本です。
    続きを読む

    投稿日:2021.01.24

  • kasuran

    kasuran

    【G1000/29冊目】チェコがナチスドイツの占領下にあった時代。あるホテルの給仕見習いは、客の釣り銭をごまかす等して貯めたお金を使って周りの人がドイツ人を疎ましく思っている中、彼は資本主義の荒波に乗り、ドイツ人に取り入ることによってまたたく間に百万長者となり、自分のホテルをも持つことになりますが、チェコ人にとってはドイツ人に取り入って成り上がった彼を良く思っていませんでしたが、成功者であることには間違いありませんでした。
    しかし、戦争が終わり、共産主義であるチェコスロバキア共和国が再び立ち上がった時、彼の手元には何一つ残されていませんでした。そんな中、誰も来ない辺境で晩年を過ごすことになった彼は改めて自分を見つめ直すことができ、本当に生きることの価値を見出すことになったのではないでしょうか。「これからする話を聞いて欲しいんだ」という言葉は読者のみならず、鏡に写った自分に聞かせたい物語なのかも知れません。
    続きを読む

    投稿日:2020.04.19

  • shiroyagie

    shiroyagie

    池澤夏樹の世界文学全集は、インパクトがありました。けばけばしい色合いの表紙もそうですが、ラインナップがすごかった。知らない物語がたくさん。ハードカバーはかさばるのであまり買えませんでしたが、近年、次々に文庫化されていて、ついつい買ってしまいます。そんなかんじで、この本も、池澤夏樹のあれだ、という知識以外はほぼ知らないままに買ってしまいました。
    そういう動機だったので、他に読まねばならない本に劣後してしまい、何年か積読状態だったんですが、このたび一念発起して読みました。チェコ文学なんてはじめて。おりしも100分de名著のハヴェルの指南役に、この訳者の阿部さん。タイミングがかぶりました。
    おもしろかったですよ。シュールで。いや、シュールという一言で片づけるには、他の要素がいろいろ入り込んでいますが。というかたぶん、重いんですよ。いろいろ。時代背景として戦争はあるし、いろんなひとの没落なんかもあるし。でも、なんにせよ、どんなに重いテーマであっても、語り口は軽やかで、サバサバしていて、読んでいてすがすがしかったです。
    どこだったが、「男なんて、ちょっとしたことをなんでもエロティックにとらえちゃうんだよね」みたいなことが書いてあったりしてたんですが、ちょっとエッチなこともちりばめられたりして、そのへんも気分転換になりました。読んでよかったです。【2020年3月14日読了】
    続きを読む

    投稿日:2020.03.15

  • oaktree0426

    oaktree0426

    第二次世界大戦をはさむ激動のチェコで、ホテルの給仕人として働いていた少年、のちにホテルオーナーとなった男の半生を描く。激動の時代ゆえに、重い話題もあるが、どこかほら話のテイストがあって、イメージが豊かで、決して重々しくはなく、非現実的なんだけど、面白くて、やがて悲しい。ヴォネガットのいくつかの作品を思い起こしたりもした。特に主人公が手に入れたホテル「石切り場」の描写は、浮世離れした美しさがお気に入りである。続きを読む

    投稿日:2020.01.19

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