【感想】アイデアの99%――「1%のひらめき」を形にする3つの力

スコット・ベルスキ, 関美和 / 英治出版
(46件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • japapizza

    japapizza

    「2つの段階があると思うんだ」とジョナサンは説明してくれました。「最初はひらめきを感じて受け止める段階。なに気なく蓄積されていたものが、あるひシャワーを浴びている最中に突然ひらめく瞬間があるんだ。次は『より、これを実際にやろう』と決める段階。一度決めたら、そこから気持ちをがらりと入れ替える。少なくとも決めたアイデアに関しては、合理的でロジカルに考えなくちゃいけないし、自制心が必要になる。受け身にならずに、足したり引いたりしながら、最終的に作品として形にするんだ。クリエイティブな人たちが苦労するのはそこだと思う。だってひらめいているだけの方が楽しいから。だけど、実際になにかをやろうと思ったら、2つ目の段階を乗り越えるしかない」

    ■緊急の用件を部下に任せる
     業務の責任をだれかに任せているときでさえ、緊急の用件が持ち上がると自分で対処しがちです。プロジェクトのことを心から気にかけていると、自分が解決したくなるのです。たとえば、日常的な問題のことでクライアントからメールが届いたとします。その責任はチーム別の人にあるのに、「ああ、これならすぐ手直しできるから、自分が片づけよう」と思ってしまうのです。すると次第に長期目標からエネルギーが移ります。
     緊急の用件を自分で片づけようとするのは、若くして成功したクリエイターにありがちな、もっとも危険な傾向です。もし自分がそうなら、緊急の用件をだれかに任せるよう努力しましょう。

     アイデア実現の大きな要素の一つは、粘り強さです。他者に頼って勢いを保つ場合には、そのプロジェクトは彼らの意思に左右されます。アイデアを前進させ続けるためには、他者を執拗に追いかけ続けることが必要です。


     フランクは「夢追い人」なのです私たちの研究で、よく見かけるクリエイターの特徴を大きく分類した中の1つです。その3つとは、「夢追い人」「片づけ魔」そして「両刀使い」です。この世界には、上ばかりを見ている起業家や、書けない作家や、フランクのように限りない創作欲を持ちながら、それが障害になっている情熱的なアーティストが星の数ほどいます。フランクのような「夢追い人」は、常に新しいアイデアを考えています。これが起業家の場合、「夢追い人」は、新しい商売のアイデアにすぐに飛びつきます。既存の商売の範囲でも、彼らは常になにか新しいことを考えています。広告業界のクリエイティブディレクターの中には、整理と集中は他人まかせで、自分はアイデアを考えてさえいればいいつまり夢見るだけという人も少なくありません。非営利の世界で「夢追い人」と言えば、理想主義者です彼らは、現在進行中のプロジェクトを投げ出して新しいプロジェクトに取りかかる傾向があります。また、アーティストの夢追い人は、新しいプロジェクトをはじめるとき、壮大な長期的なビジョを掲げて、大規模な取り組みばかりを思い浮かべていることが少なくありません。夢追い人は、一緒にいて退屈しませんが、1つのことに関心を持ち続けることができません。アイデアはあちこちに飛び、電話を返さず、進行中のプロジェクトを完成できず、家賃の支払いさえも忘れます。夢追い人は、だれよりもすばらしいアイデアを思いつく半面、それを最後までやり遂げることはほとんどありません。私たちが出会ったもっとも成功している夢追い人は、「片づけ魔」と組んだことが成功につながったと言います。
    「片づけ魔」は、それほど夢想することはありません。実行の手順に常に集中しているからです。片づけ魔は、ブレインストーミングのとき、実現性が考慮されないとイライラします。新しいアイデアは好きですが、アイデアを実現するために必要なその次のステップに没頭する傾向があります。「夢追い人」は、簡単に新しいアイデアにほれ込みますが、「片づけ魔」は、まず疑いを持ち、けちをつけてみた後に、それを気に入るようになるのです(結局気に入らないことも少なくないのですが)。「片づけ魔」は、アイデアを分解し、行動する「整理人」兼大切な「お目付け役」になります。アイデアは行動可能な要素にきちんと落とし込まれてはじめて、現実のものになります。斬新で受けのいいアイデアでも、形がなく非現実的なら、「片づけ魔」はこれを疑い、受け入れないこともあるでしょう。

     他人があなたの長所を自然に受け入れると思い込んではいけません―特に上司や顧客はそうです。理想の世界では、上司はどうしたら部下を最大限に活用できるかを考え、顧客はあなたの可能性を引き出してくれるでしょう。しかし、現実には、上司や顧客は自分のキャリアを心配するのに精一杯です。自分の強みは、自分で売り込むしかないのです。

     ビジョナリーと言われる経営者は、たいてい最初に話したがります。その業界に長く身を置ビジョナリー・リーダーたちは、みんなに崇められ、すべてを経験しつくしたような気になります。だから、最初に口を開き、さっさと動き、他者を関わらせることができません。代理店や、スタートアップや、その他のクリエイティブチームの才能ある若いクリエイターたちが、キャリアの途中で辞めるのは、自分のアイデアを聞いてもらえないからだと言う人が少なくありません。
     だれしも自分の提案に情熱を持っていれば、それを話すときに熱が入ります。ですが、仲間の創造性を取り入れる責任がある立場なら、それを抑えなければなりません。クリエイティブチームの目的は、アイデアを考え、磨き、それを実行することです。メンバーそれぞれの知恵をくみ取ることができなければ、価値が失われてしまいます。
     ものづくりのプロセスは、参加のプロセスでもあります。若くて、あまり経験のないメンバーにアイデアを共有してもらうには、彼らの論理を育て、仲間に引き入れなければなりません。彼らのアイデアがあなたのすばらしいアイデアの陰に隠れてしまわないように、あなた自身は口を閉じて、新鮮で時には未熟なアイデアを歓迎しましょう。断言する前に質問するように心がけましょう。
     口を閉じている間は、周囲に耳を傾けることを忘れてはいけません。最後に話すことを心がけているリーダーでも、自分が話すまでの間に聞くことができない人もいます。
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    投稿日:2022.10.22

  • explorer1048

    explorer1048

    このレビューはネタバレを含みます

    Making Ideas Happen 
    Overcoming the Obsatacles Between Vision and Reality

    原題が、示すように、アイデアを実現する上での
    障害が何か、
    それらをどう乗り越えるか、
    を記した本。

    99%というのは、エジソンの「1%の閃きと99%の汗」からとったものだ。
    要するに、努力なくして、閃きを実現することはできないということだが、閃きを受け止める段階とこれを実行しようと決める段階の2つがあり、これが、全く異なる段階だというのは、興味深い。
    前者は、連想や啓示といった楽しい時間である一方、後者は、合理性や自制心など努力や意志力が試される時間といってもよい。

    特に、後者の時間における、その努力は、どんな障害があると認識するかによって変わってくる。
    一番の障害は、アイデア自体が破壊的で、非経済的であることから、取り上げられにくいということ、もう1つは、自分の中だけにとどめることで、他のことに忙殺され、生まれてすぐ死んでしまう運命にあること、自分で勝手に見殺しにしてしまうということだ。

    こうした本質的障害に対して、本書は、
    アイデア実現力=整理力+仲間力+統率力
    と必要なスキルを定義している。英語でいえば、Organization and Execution, The Forces of Community, Leadership Capability が章題になっており、なるほど、アイデアの「実行」というより、「実現」という言い方の方が、適切だとわかる。つまり、アイデアは、どんなによいもであっても決して一人で「実行」するものではないということが、実は最大のメッセージである。

    「どのようにプロジェクトをまとめ、優先順位をつけ、エネルギーを配分するかが、実現しようとするアイデアの質よりもある意味で重要」
    「仲間の力を活用することで、価値あるフィードバックを得て、アイデアが磨かれ、お互いを助ける関係が育ち、発想を資源や援助に結びつける「組織細胞」ができあがる」特に、「他者に対して責任を負うようになれば、クリエイティブな衝動が目に見えるプロジェクトになる」
    「統率力とは、常にアイデアを追求しながら規模を拡大し、最終的に成功に導く能力・・・クリエイティブなプロジェクトを育て維持するには、みんながあなたのアイデアに情熱を持ち続けることが必要」

    これらが、キーメッセージだが、実践する上でのノウハウというより、肝は、以下のようなものが挙げられる。

    整理力
    アイデア実現をプロジェクトとして捉える。プロジェクトは、アクション・ステップ、バックバーナー、レファレンスの3つに分解し、これらを管理する時間をとる。ただし、活力の限界を知って優先順位をつける、確信がなくてもまず行動してボールを前に転がし続ける、「不安が生む作業」を減らし、集中力を持続する。

    仲間力
    アイデア実現には、関わる人ごとの役割があると認め、夢追い人、片付け魔、両刀使いをそろえ、アイデアを皆で共有し、自分が全力で取り組む。賢い自己宣伝を行い、コミュニティにアイデアを広める、さらにはコミュニティの外にアイデアを広める。

    統率力
    「働く見返り」を見直し、チームを育てる。一方で、自己統率力を引き上げる。一番難しいだろうことは、アイデアの所有権を誰かに譲ってしまうことだ。「アイデアを本当に部下に分け与えるということは、つまり
    信頼できるチームメンバーにプロジェクトの命運を預け、大きな決定を下す権限を与えるーーあなたなら違う決断をするかもしれないと思ってもーーことに他なりません。」

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    投稿日:2021.07.22

  • maple

    maple

    アイデアから現実のものとして、完成させるまでの、困難なことをひととおり説明してくれている気がする。
    行動が大事、反対する人も必要。わかっているようで、わかっていないことを気づかせてくれる一冊

    投稿日:2019.06.12

  • kakabalika

    kakabalika

    3つに分ける。アクション・ステップ(すぐやる)、レファレンス(検討中)、バックバーナー(いつかやる)。
    天井が高いと大まかな思考、低いと具体的な思考。
    情報の独占は背信行為。スティーブ・カー。
    すべきこと、やめるべきこと、続けるべきことの3つに分ける。
    TEDのキャッチフレーズはみんなに宣伝したくなるアイデア。
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    投稿日:2018.01.09

  • sanochihi

    sanochihi

    アイデアの「発想法」ではなく、
    アイデアを何か思いついたとき、それをどう実現するか? に重点をおいて書かれた本なので、

    クリエイティブ系の職業以外の人にも十分役立つ本だと思います。

    何か新しいことを始めよう、というときに、それを 「今すぐできる次の行動」 に落とし込めなければ、一生実現できない。
    だからアイデアを思いついたら、まずは、 「次の行動」 をリストアップすること。

    あと、人を巻き込むこと。

    人を巻き込んで、 「次の行動」 をどんどん書き出して共有して、実行して・・・ というプロセスの中で、アイデアは実現されていくのだー!

    ・・・ということを、もっと詳細な具体例を交えて論じた本です。

    打ち合わせのときは、ちゃんと 「誰がいつまでに何をやってくるか」 を決めるまでやろう(※)、とか、

    そういう発想をこの本から学びました。

    ※そういうやり方になかなか巻き込まれてくれない「場の雰囲気」というものもあったりするので、難しい部分もありますが^^;
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    投稿日:2017.06.27

  • keizoh

    keizoh

    アイデアは、色々なところで浮かんでは来るが、それが最終的な形になる事は非常に少ない。
    アイデアを形にするツールとして欠かせないものとして3つの力、整理力、仲間力、統率力を紹介している。

    整理することは枠組み作り
    (創造性*整理力=インパクト)

    仲間力(夢追い人、片づけ魔)

    統率力:働く見返りを見直す、チームの雰囲気を上げる、クリエイティブチームに育てる、自己統制直を引き上げる
    続きを読む

    投稿日:2016.06.18

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