【感想】なぜ世界は存在しないのか

マルクス・ガブリエル, 清水 一浩 / 講談社選書メチエ
(45件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
8
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7
5
1

ブクログレビュー

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  • rafmon

    rafmon

    勿体ない読み方だったかも知れないが、理解を放棄したというか、言葉遊びに付いていけなくなった。一旦離れて、ならばAIはどう答えるかと問う。返答は以下だ。

    ー 「世界が存在しない」という観点は、哲学的な複雑さを含んでいます。通常、我々が「世界」と指すものは、私たちの存在する物理的な現実や宇宙を指します。存在に関する問いに対する答えは、哲学的・宗教的な信念、科学的な視点などによって異なります。

    つまり、視点によって異なる。それは、一人一人の解釈や信仰により異なるという事であり、共通する事実は無いという事。現前に世界はある。しかし、それが存在しない場合、これは、「知覚」と「空想」を分けて考える必要がある。知覚する世界は間違いなくある。しかし、解釈上の脳内世界は、あったりなかったりする、という事。

    難しく言うと、本書では下記の通り述べられる。

    ー 私たちは他でもない自らの生存への理解、関心ゆえに自分自身を特別視していて、人間とその生活世界と何か特別なもののように考える傲慢な幻想にふけっているに過ぎない。関連性のある粒子の集積を同定する。どんな考えであっても、それが脳の状態である以上、脳のニューロンの状態といった形で現れる。素粒子の配置関係に他ならないというのが唯物論だとすれば、考えの正しさそれ自体は素粒子ではない。

    世界とは何か。目の前の「りんご」や「木」が例題に用いられがち。それを指し示す他人を含めた景色を例題にしてみる。下等な動物は、その指の動きを見る。人間は、示す方向を見る。そして、他人の意図を読み取ろうとする。我々は、その景色全体を文章からメタ認知する。では、この例題の世界とは。その景色こそが意味の場だとして、その登場人物の脳内も含む「世界観の切り抜き方」で気難しい用語を当て嵌めた言語ゲームだという気がする。
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    投稿日:2023.12.28

  • daisuket

    daisuket

    新進気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルによる「新しい実在論」の解説書。物理的な宇宙は存在するが、それが即ち「世界」ではない。私たちは物理的でない意味合いも当たり前に実感し存在することを感覚的に理解できるのだから。「世界」とは物理的な意味合いもその他の意味合いもすべて含んだものであるはずだがそのようなすべてを包含する視点は存在しえない、というような話。めちゃくちゃ屁理屈言ってるようにも感じるが、ものすごく当たり前の感覚のことを言っているようにも感じる。ですます調の訳も含めて哲学書にしてはかなり読みやすい。続きを読む

    投稿日:2023.12.10

  • Mkengar

    Mkengar

    哲学初心者ですが、世界で爆発的に売れたということで手に取りました。難しい個所も多くすべてを理解したわけではありませんが、本書の核となる「新しい実在論」の骨子は理解できました。これについてはかなり丁寧に説明されているので哲学初心者でもガブリエル氏の主張は理解できると思います(同意するかはまた別問題だと思いますが)。形而上学での存在の扱いをテーゼ、構築主義による考え方をアンチテーゼとするならば、そのジンテーゼとして「新しい実在論」が提示されていると解釈しました。

    本書の前半では存在するとはどういうことなのか、ということで新しい実在論についての説明が続きますが、個人的に興味深かったのは後半部分です。後半では自然科学の世界観、宗教の世界観、そして芸術の意味について「新しい存在論」的視点から解説をしていますが、目から鱗が多数あり、宗教編にいたってはこれだけで本1冊にまとめてほしいというくらい面白い内容でした。宗教編を読んでいるときにふと密教が思い浮かんだのですが、密教では、宇宙の摂理としての大日如来がいるという点でガブリエル氏の主張と相容れませんが、無数の意味の場に我々が存在しているという主張は、まさに曼荼羅図で表現されていることです(我々は仏にもなれるし魔にもなれる)。物事は無限の視点から見ることができること、無限の意味の場に表象されること、人生とは意味の場を創造し通り抜けていくことだ、という著者の主張を、まさに本書を読みながら「体験」することができました。
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    投稿日:2023.05.04

  • sota

    sota

    ー 意味の場の存在論が、ハイデガーの有名な表現を借りて言えば「存在の意味」とは何かという問いにたいする、わたし自身の答えです。存在の意味、つまり「存在」という表現によって指し示されているものとは、意味それ自体にほかなりません。このことは、世界は存在しないということのうちに示されています。 世界が存在しないことが、意味の炸裂を惹き起こすからです。いかなるものも、何らかの意味の場に現象するからこそ存在する。そのさい、すべてを包摂する意味の場が存在しえない以上、限りなく数多くの意味の場が存在するほかない、というわけです。それらの意味の場は、互いに連関をなして一個の全体を形づくったりはしません。もしそうなら、世界が存在することになってしまいます。

    さまざまな意味の場がなす連関は、じっさい、わたしたちによって観察されたり惹き起こされたりしますが、それ自体、つねに新たな意味の場のなかにしかありえません。わたしたちは、意味から逃れることはできません。意味は、いわばわたしたちの運命にほかなりません。 この運命は、わたしたち人間にだけでなく、まさに存在するいっさいのものに降りかかってくるのです。人生の意味の問いにたいする答えは、意味それ自体のなかにあります。わたしたちが認識したり変化させたりすることのできる意味が、尽きることなく存在している―このこと自体が、すでに意味にほかなりません。

    ポイントをはっきりさせて言えば、人生の意味とは、生きるということにほかなりません。つまり、尽きることのない意味に取り組み続けるということです。幸いなことに尽きることのない意味に参与することが、わたしたちには許されています。そのさい、わたしたちが必ずしもつねに幸福に恵まれているわけではないことは、おのずからわかります。必要のない苦しみや不幸が存在することも事実です。しかし、そのようなことは、人間という存在を新たに考え直し、わたしたち自身を倫理的に向上させていくきっかけとすべきものなのだろうと思います。こうしたことを背景として大切なのは、わたしたちの存在論的状況を明らかにすることです。人間は、この現実の基本構造にたいする自らの考えに関しても、つねに変化し続けるからです。 ー

    世界は存在しない。

    なので、「意味の場」が問われる。「意味の連関」が問われる。「世界観」が問われる。

    「世界」は存在しない。だから、「世界観」が生きてく上で重要になる。私はどのような世界観が生きるべきか。私が生きている世界はどのような世界なのか。それを問い続けることが重要。
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    投稿日:2022.10.29

  • ltwrs

    ltwrs

    「本書では新しい哲学の原則を示してみせたいと思っています。~中略~すなわち「世界は存在しない」ということです」

    といきなり大風呂敷を広げたうえで、「世界は存在しない!」というキャッチーな主張の理由を、今までの様々な哲学の歴史をおさらいしつつ、やさしく説明してくれます。とても読みやすかった。(と言っても自分は読むのに2ヶ月以上かかったけど)
    それにしてもこの煮詰まった時代に、いきなり「新しい原則を示す」という野心がすごい。もはやロマンチスト。
    そして説明されるガブリエルさんの主張は、多様性の時代にフィットした哲学という感じで、とても面白かった。

    なぜ世界は存在しないのか、を要約すると、

    1.存在とは何かが「意味の場」に現れている状態
    例 - サイが草原に立っている場合は、サイは草原という「意味の場」に存在する

    2.基本単位は「意味の場」。すべては何らかの意味の場に現象する

    3. 「世界」とはすべての意味の場を包摂する意味の場。世界にはすべてが現象しているはず

    4.とすると、その「世界」はどのような「意味の場」に現象するのだろうか?→「世界は、世界に現れてこない」

    5.つまり世界は存在しない。そのかわり存在しているのは無限に多くの意味の場。

    6.無限に多くの意味の場がある→すべてのものは存在する。ただし世界はべつである。



    僕は「意味の場」を「おぼん」と置き換えるとわかりやすいと個人的には思いました。

    つまり、何かが存在するためには、その何かを「おぼん」の上に置かないといけない。いろんな「おぼん」があるけど、すべての「おぼん」を乗せることができる「大きなおぼん」は存在しない。なぜならその「おぼん」ももっと大きな「おぼん」の乗ってないと存在できないから。つまり「大きなおぼん」=「世界」は存在しない。


    さらに「世界は存在しない」ことよりも、だからこそ「無限に多くのおぼん=意味の場」が存在する、というのが、もっと大事なこと。つまり無限に意味の場があるということは世界以外は「あらゆるものが存在している」ということ。例えば「魔女」は草原にはいないけど、本の中にちゃんと存在する。わたしの見るさまざまな夢、進化、水洗トイレ、脱毛症、様々な希望、素粒子、月面に住む一角獣さえもが、それぞれの意味の場に存在する。


    そして著者は「だからといって、あらゆるものが良いということにはならないからです。私たちは、何を維持すべきで、何を変えるべきなのかを、いっそうよく判断できるようにならなければなりません。」と結ぶ。


    そもそも「意味の場」って?勝手に基本単位とか言うなよ!、しかもそれってそんなに革新的な考えなの?、とか批判もありそうですが、全体主義とか排他的な考えを批判しつつ、かといって「人それぞれでしょー」という冷めた意見でもないところが、モノの見方、考え方としてとても面白かった。

    訳者の人があとがきで書いているように
    「解説書でもなければ、日常生活に有益なヒントを与えてくれる人生論の本でもなく、じっさいに哲学的思考を行ってみせる書物であろうとしている」本なので、要約でなく全部読んでみて本当によかった。そして例えばメタバースに対する考え方とか何かしらのヒントを与えてくれる本だと思う。
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    投稿日:2022.07.22

  • かさじま

    かさじま

    哲学を全く知らない自分にはちょっと難しく感じました。
    アヴェンジャーズを全く知らずにエンドゲームを見た感じかもしれない。
    なので是非また読み返してみたいです。

    哲学についてなにも知らなかったので、役割や、ものの見方に関して勉強になりました。
    まず、哲学者は地球に降り立った地球外生命体のように世の中を観察する、という説明で哲学とは何か、というのがなんとなく掴めた気がしました。
    また、物理学的に捉えられる宇宙こそが世界そのものであるという考え方や、
    科学が他の全てのものごとの捉え方と比較して優位になりすぎていることへの指摘も印象に残りました。
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    投稿日:2022.01.22

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