【感想】社員を大切にする会社――5万人と歩んだ企業変革のストーリー

ヴィニート・ナイアー, 穂坂かほり / 英治出版
(12件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • 刈北

    刈北

    ITの進化はこれまでソフトウェアとハードウェアにあった境界線を破壊し、ソフトもハードもない一気通関のITソルーションを企業は求めるようになった。

    クライアントの近くにいてニーズを知ることができる末端社員を生かし、中間管理職達の管理の枠を飛び越えられる会社になるにはどうしたらいいのか?をこの社長は考え抜いて従業員第一主義を生み出した。

    世界のどんな経営者も思いつかなかった従業員第一主義。顧客を取り込むために従業員第一主義ですよーと言うと結局顧客第一主義になるが、この人は社内外に向かって従業員第一主義を打ち出した。

    忙しくても従業員に会いに世界中を飛び回り、自分の360度調査結果を世界中の社員にイントラで公開し、社員がイントラに書き込んだ質問や要望に回答を書き続けた。

    会社業績が右肩上がりになると後任に会社を委ね、自分が作った基金で若者を育てる道を選んだ。

    この人にとっては社長という椅子は地位や名誉ではなく、従業員を幸せにし、会社を次世代につないでいく責任を負う役割でしかなかったのだ。
    こんな経営者の下で働きたい。

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    投稿日:2019.11.27

  • たこすけ

    たこすけ

    インド5大IT企業のうちの1社、HCL TechnologiesにおいてCEOを務めた著者による、企業の飽くなき成長を目的とした組織変革の道程を語った回想記。
    著者は、「従業員第一、顧客第二」というスローガンを掲げ、顧客へ価値を創造する最たる主体である従業員が、その能力、可能性を発揮させるために必要な施策を次々と実施した。それは、マネジャー層による従業員へのアカウンタビリティの徹底や、CEO自らと組織内の課題について議論できるソーシャル・ネットワークの構築など、従来の「ピラミッド型」の企業組織形態の成り立ちをひっくり返すものであった。
    当初、従業員の中には、変革者、喪失者、傍観者と様々な立場をとる者がいたが、徐々に賛同者が増え、組織全体が変革され、結果的には実績として「従業員の離職率が約50%低下」「4年間で売上が3倍に増加」という、企業・従業員・顧客の三方よしが実現された。

    「社員を大切にする」というと、待遇を改善したり、残業時間を減らしたり、など条件面の施策を行うことが連想されやすいかと思われるが、本書を読み終えると、(そういった側面も含むだろうが)社員が最も活躍できる環境を整備することこそが、「社員を大切にする」真の含意なのだろうと理解し、納得もできた。

    また本書では、経営側の人間が、組織をどのように変えていったのかを語っているため、マネジメント層、リーダー層向けの著書と捉えられる面もあるかもしれないが、その中身は、バリューゾーンたる従業員が、どのように組織を見つめるか、どのように顧客に価値を提供するか、という部分をも含んでおり、いかなる立場にある読者にとっても示唆に富む内容であると思う。
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    投稿日:2017.05.04

  • deco

    deco

    「従業員第一、顧客第二」経営という方針により業績を伸ばしたインド HCLテクノロジー総帥自ら語る経営についての書籍。
    良かった点は、①信頼を測る尺度、②アカウンタビリティーを逆転させる施策、③360°評価の実運営方法、の3点である。
    ①信頼を図る尺度として、信憑性、信頼性、親密さ、自己指向性の4つがあると述べている。組織の信頼度を図り改善させる軸を理解できる。
    ②アカウンタビリティーを逆転させる施策は、有名なヒエラルキーピラミッドを上下反対にさせる考えであり、それをどのように実現させたのかの道筋が示されている。とてもむずかしいことへのアプローチの一端を理解できた。
    ③360°評価の実運営方法では、360°評価の課題を示し、その改善を踏まえた施策が示させ、非常に参考になった。私の実業で取り入れたい。

    マーケティングの4Pには、付け加えるべきPがある。
    それはPersonであると述べている。
    確かに、顧客はProduct/Price/Promotio/Placeに対し評価をしているが、どんなに優れたProductでも人を介するビジネスの場合は、「誰から買うのか」も重要な要素だと改めて気づいた。よい気づき。

    実例からくる各種従業員対策の諸点はよい気づきが多く含まれていた。
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    投稿日:2017.05.04

  • oqo99980841

    oqo99980841

    売り上げを伸ばす、あるいは競争に勝つための手段として従業員を大切にするというスタンス。

    なぜ競争に勝たねばならないのかということを、もうすこし掘り下げてみたい。

    投稿日:2014.01.24

  • araratakeshi

    araratakeshi

    このレビューはネタバレを含みます

    ここに書かれているフレームワークに合致しないとか、自分たちには当てはまらないとかを直ぐに考えがち。だけど、試行錯誤の繰り返しのためのツールとして、結果的にこれらが生まれてきたのであって、これらだけを、単に実践しても上手く行く訳がない。文脈もことなれば、制約条件も異なる訳だから。根本思想を理解して、仲間と信頼関係を創り、やってみて、改善しようとするチームワークとそれぞれのリーダーシップが重要なんだ。

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    投稿日:2013.12.15

  • whiteprizm

    whiteprizm

    ~導入

    バリューゾーンはもはやテクノロジーそのものの中にはなく、もちろん特定のハードウェアやソフトウェアにあるわけでもない。顧客は多くのテクノロジーと多種多様なサプライヤーの中から好きなように選ぶことができる。おおそらくそのうちのどれを取っても、自分の目的に到達することは可能だ。
    根に、バリューゾーンとは、どのようにテクノロジーを結集して、導入するかである。何を提供するかではなく、どのように提供するのかが問われているのだ。
    …私はこの問題についてじっくり考えてみた。どうすればバリューゾーンを強化できるのだろう?どうすれば、「何を提供するか」から「どのように価値を提供するか」へと焦点を移すことができるのだろう?ふとある突飛なイメージが脳裏に浮かんだ。逆さまのピラミッドだ。単に逆さまにするだけではく、マネジメント層がバリューゾーンとそこで働く従業員に対してアカウンタビリティ(権力の源泉は情報の独占なので)を持つとしたら?
    …もしそれが実現すれば、会社はとてつもなく強力な何かを手に入れることになるのではないか?いかに価値を顧客に提供するか、その方法を変革し、顧客と従業員との間の地帯を特別な何かに変える事ができるのではないだろうか?


    実際の施策が、
    ・会社と部門の財務情報の開示
    ・U&Iサイト(経営陣への公開質問)
    ・SSD(スマートサービスデスク、現場の質問・課題にバックオフィスがダイレクトに答える。当初対応件数の多さをベンチマークにしていたが、その後SSDを使わなくても良いルール整備に転換)
    ・評価でなく、フィードバックに使う360度評価とそれを関係部署内だけから社内に広げたハッピーフィート
    全体が意思決定をする軟体動物のような組織。きっとそれはIBMの<踊る巨象>の先にあるもの。「真実の瞬間」を生む組織の真実。素晴らしい。

    ・ニューヨークからフランクフルトへ向かう飛行機の中で、引退した元カーレーサーと隣り合わせた。お互いワイングラスを傾けていると、不意に彼がかつて遭遇した出来事について話しはじめた。あるレースの最中、突然、彼の車のブレーキが利かなくなったという。彼は言った。「そのとき、私にはどんな選択肢があったと思いますか?」
    いくつか可能性を考えてみた。が、全くと言っていいほど何も思いつかなかった。
    「たいていのドライバーは二つのうちどちらかを選ぶでしょうね」と彼は言った。「一つは、何とかブレーキを利かせようとしてみる。もう一つは、スピードを落とす。一つ目を選べば、ドライバーは気が散ってしまい、衝突事故を起こす危険性があります。二つ目を選べば、今度はドライバー自身がほかのドライバーの事故原因になる。やはり衝突事故を起こす危険性があるでしょうね。」
    「じゃあ、どうすればいいんです?」と私は訊いた。
    「スピードを上げるんですよ」と彼は言った。「加速して、他の車を追い抜くんです。必要なことがあれば、その後ですればいい。」

    ・本書は私たちが「何を」戦略としたかについても述べてはいるものの、それは変革の一翼を担っていたからにすぎず、むしろ「どのように」について、より多くを語っている。それこそが、私たちの物語の最も魅力ある点であり、価値のある点だからだ。私たちはこの「どのように」の取り組みを「従業員第一、顧客第二(Employees First,Customers Second)、略してEFCSと呼んでいる。もちろん、従来の常識に従えば、企業は常に顧客を第一としなければならない。しかし、どんなサービス産業でも、真の価値は、顧客と従業員との接触を通して創造される。したがって、従業員を第一とすることで、企業が顧客のために独自の価値を創造して、提供する方法に根本的な変化が生まれ、それが競合他社との差別化につながるのである。

    ・HCLTの社長になるにあたり、私たちが今どこにいるのか、どこに行こうとしているのかについてよく検討し、現状を単純化して把握しようとした。だが、驚いたことに、A点もB点も定義されていないことに気づいた。人によって、会社がいまどこにいるのか(先頭を走っているのか、衝突寸前なのか)意見がまちまちだったし、会社がどこに向かっているのか、あるいは向かっているべきなのかについては、はっきりと答えられる者は誰一人いなかった。
    …まず鉛筆の先を紙の上の一点に置くことなしに、子どもは線が書けるだろうか?そうして考えていくと、私たちが取るべき最初のステップが明らかになってきた。まず、私たちのA点を定義し、現実がどれほど変わってしまったかを知らなくてはならない。

    ・ところが、ベッドに入る前にふと鏡の中の自分を見た。私の目に映ったのは、世界でトップクラスのMBAホルダーでも、思い描いていたような未来の最高幹部でもなかった。そこにいたのは、一人の若い研修生だった。実際のところ、会社の提供する製品やサービスについて詳しく学ぼうとする努力もせず、それが競合他社のものとどう違うのか知ろうともしていない。

    ・私が12歳ぐらいのときだった。私は腕いっぱいに古着を抱えて、そのスラムに行った。そこには大勢の子どもたちがいて、私たちが渡すものを次々に受け取っていた。でもそこにみんなから離れて、一人でぽつんと座っている少年がいた。どうやら彼は古着には興味がなさそうだった。ただ、私の通学かばんをひたすら見つめていた。
    寒い日だった。そこで私が彼に『セーターをあげようか?』と訊ねると、少年は『いらない』と言った。彼の視線は依然、私のかばんに据えられたままだった。
    やがて少年は私にこう言った。『かばんの中には何が入っているの?』私は中を開けて、少年に見せた。そこには数冊の本が入っていた。『それで何をするの?』と少年が訊くので、『読むんだよ』と私は答えた。すると少年はこう言ったんだ。『ぼくに本を読んでくれない?』

    ・その頃、私は世界的大手100社に入るある企業のCIOと興味深い会話をした。私たちはその会社へのサービス範囲を著しく拡大する契約を締結したところだった。商談が成立した後、私はそのCIOにこの案件に入札していた数社のベンダーの中からなぜHCLTを選んだのか訊ねてみた。
    そんな形式的な質問に対して、最初、彼は形式的な答えを返してきた。ソリューションがイノベーティブであること、サービスの品質の高さ、対応の速さ、拠点とその立地、価格の優位性などについて挙げ連ねた。ところが、それから彼は言った。「でもね。ヴィニートさん、この種の仕事でこれだけの入札の手間をかけるなんて、本当はあまり意味がないと思っていたんですよ。われわれは提案依頼を出し、みなさんはそれに対し真面目に提案してくださいました。でも実際のところ、提案書ではおたくの会社についてこちらが本当に知りたいと思っていることなど、分からないんですよ」
    「どういうことでしょう?私どもの提案書が不適切だったということでしょうか?」と私は訊いた。
    「いや、そういうことじゃないんです。事実、われわれは御社を選んだんですから。私が言いたいのは、提案書では本当に重要なことは伝わらないということです」
    「例えば?」
    「例えば、おたくの社員すべてについてですよ。彼らはどういう人間なのか?何を考えているのか?道徳観はしっかりしているのか?何に情熱を持っているのか?使用するツールやテクノロジーなんて特に興味はないんですよ。ほかのどの会社が使っているものとも対して違いはありませんからね。私が知りたいのは、かれらが私と私のプロジェクトのために、求められている以上のことをしてくれるかということです。契約に無い内容のことでも喜んで知恵を貸してくれるのかどうか、自分の全存在をわれわれの仕事に投入してくれるかどうかですよ。」

    ・2005年、この旅を始めたとき、私はまるで目が見えず、手探りで前に進んでいるも同然だった。当時から道ははっきり見えていたと言いたいところだが、そうではなかった。だが、この地図に載っていない旅に出て本当によかったと思っている。地図がないからこそ面白かったからだ。
    今日、私は目を開けているつもりだが、もしかしたらまだ暗闇の中にいるのかもしれない。今から数年後、2010年の自分を振り返った時に、私は再びこう言うのではないだろうか―あの頃、私は目が見えず、手探りで前に進んでいた、と。
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    投稿日:2013.06.29

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