【感想】生存する意識――植物状態の患者と対話する

エイドリアン・オーウェン, 柴田裕之 / みすず書房
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
3
6
0
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • sora

    sora

    2018年出版の本なので、今現在ともなると、もっと研究は進んでいるだろう。けれども、グレイゾーンは残り続けるのではないか。そもそも科学で切り分けることができるのか。意識の有無、発生と消失などは、倫理的、法的問題も絡んでくるだろう。グレイゾーンでの、死ぬ権利、治療拒否、自殺、ほう助自殺、放置死は法的な違い。個人的には、意識が自分の体に閉じ込められるのが恐怖。続きを読む

    投稿日:2023.10.07

  • katsuya

    katsuya

    事故や病気で脳が損傷し、生きてはいるが反応がない、意識がない、いわゆる植物状態となった患者さんたち。実は、そのうちの15%〜20%の方は、周囲で起こっていることを認識し、理解しているし、コミュニケーションを取ることができることがわかったという驚愕の事例。まだまだ検証が必要ではあるものの、技術の発達や、診療の工夫により、今までわからなかったことがわかるようになり、それによって、定義や判断基準が大きく変わることになる。今まで話しかけても意味がないと考えられていた患者さんが、実はそのことを認識していて、我々にわかるように反応はできないけれど、ちゃんと思考している。これは、その後の治療方針や、もっというと延命措置の是非に関わる重大事項。技術の発達によって、いろいろな、複雑なことを、前例にとらわれずに考えなければならないのだ。続きを読む

    投稿日:2022.11.24

  • サマ

    サマ

    このレビューはネタバレを含みます

    面白かった。植物状態の人間に意識は、人格はあるのか?どうすればそれを証明できるのか?という謎にせまる研究者の本。なかば著者のエッセイのような趣で、植物状態となった患者の人となりにも触れ、家族の献身にも目を向ける。著者は子供の頃に生死をさまよう壮絶な闘病生活を経験しており、母親の脳腫瘍による死、元恋人の突然の植物人間化という個人的な事情にも突き動かされ、たくさんの患者との実験、ふれあい、科学技術の進歩を通して植物人間の隠された意識へと手を伸ばしていくのだ。
    意識があるのかないのか不明な「グレイ・ゾーン」と呼ばれる状態はまさに人の生と死のはざま。必然的に常にドラマティックになり、どうか実験でいい成果が出ますようにと思わず祈りたくなる場面も多い。植物状態の人でも明瞭に意識と感覚、記憶を保っている場合がある、というのは驚いた。救いの見えない状況でもわが身をなげうって懸命に介護を続ける家族たちの姿に心は痛むが、世界でどんどん進む研究や科学技術の進歩への信頼が著者の中で揺らがず存在しているため、この本はあくまで希望的な調子を崩さない。現代では人類の進歩というものに悲観的になることも多いけれど、それでもどこかで人類は進んでいると信じたくなる一冊だった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.08.28

  • 花梨

    花梨

    意識とはなにか、様々問いを立て、実際の症例と共に脳の仕組みを解き明かしていく非常に興味深い本だった。哲学的な問いや倫理的な問題もはらんでいるが、テクノロジーの進化に期待せずには居られない。著者の様々な問いを見て、改めて脳の不可思議さを感じた。まさに脳とは宇宙なのだと思う。続きを読む

    投稿日:2022.05.08

  • ことぶき28

    ことぶき28

    この本に出会ったのは、日本経済新聞の毎週土曜日に掲載される「リーダーの本棚」で日本医療研究開発機構センター長の浜口道成氏が取り上げておられたことがキッカケでした。

    fMRIという機器を使って脳の画像を検証することで、いわゆる植物状態にある人にもさまざまなレベルの意識があることを明らかにした画期的な本です。植物状態=脳死=人間の死だと勝手に思い込んでいた私にとってはまさに目から鱗の衝撃でした。

    テクノロジーの進化と新たな実験方法の開発により、生と死の狭間のいわゆるグレイの領域にいる植物状態の患者とのコミュニケーションが可能となり、そこに意識が存在することが明らかにされた。このことは人間にとって新たな希望をもたらすものではあるが、同時にとても重たい課題をも突きつけるものだと思う。AIや遺伝子、宇宙などの大変革時代の中にあって、この人間の意識についての新たな知見は最も根本的で重要なものだと思う。
    続きを読む

    投稿日:2022.04.29

  • 春谷(はるや)

    春谷(はるや)

    いわゆる植物状態の患者の脳内はどうなっているのか?

    学術書のようでありながら、まるで小説のように読みやすく、興味をひかれる場面も多く、感動もする。
    植物状態にある人は、ドラマで見るようにあんなにきれいに眠ったままの姿なのか?少しは反射的に動いたりするのではないかな…というか実際に仕事で意識障害に陥った患者さんを何度も見かけるので、でもずっと看護したりしているわけでもなくチラッと見かける程度なので、きちんと知りたいな…という気持ちから手にとった書籍だったけど、多くのことを学べたし、考えさせられることも多く、繰り返して読みたいと感じた。
    延命するかどうかという選択、そこに意識の有無が深く関わっている。意識とは、その人をその人たらしめるもの。さらに、他人とも共有しうる集合意識と著者の考えが展開されるにつれ、なんだか泣きそうになった。感動した。読み応えのある一冊。
    それにしても、意識を確認するために様々な取り組みをして発見を重ねていくのは、すごいですね。
    続きを読む

    投稿日:2021.07.29

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。