【感想】ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か

水島治郎 / 中公新書
(49件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • mm

    mm

    各国のポピュリズムについてよく理解できた。ラテンアメリカとヨーロッパのポピュリズムのありかたの比較が興味深い。2016年の本だが、現在はどうなっているのか、別の本で学びたい。

    投稿日:2023.10.03

  • ysano911

    ysano911

    水島治郎『ポピュリズムとは何か』中公新書 読了。民主主義の敵か、改革の希望か。多様性や平等など立憲主義的な価値に対する脅威か、それとも、既成政党や政治エリートによる支配を打倒し、人民に取り戻す救世主か。リベラルやデモクラシーの本質を突き詰めるほど、ポピュリズムとの親和性を帯びる。続きを読む

    投稿日:2023.09.24

  • akira_sapporo

    akira_sapporo

    各国のポピュリズム政党などに関する記述が多いため、知識ほぼ0で挑んだこともあり読み進めるのに予想以上に時間がかかった。
    各国のポピュリズム政党を俯瞰して見渡すことにより、歴史的な文脈を理解できるのは非常に有益だった。
    歴史が教えてくれるものは大きいので、ここで学んだことをフィルターとして政治を見られるようになる必要がある。
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    投稿日:2022.03.19

  • minougun

    minougun

    とても面白かった。
    本書では、ポピュリズムを『既存のエリート層を批判することで人々の支持を集める手法』と定義付けしており、当たり前だけどポピュリズムだからといって必ずしも抑圧的であったり問題があるとは限らない。

    ポピュリズムというのは民主主義の部分集合であって、問題が発生する時というのは、全体の一部あるいは多数派が結集することで、彼ら自身も含めた共同体全体の利益を結果的に損ねてしまう場合である。
    近ごろだとEU離脱やトランプ政権、もっと言えば先月31日の衆院選での維新の会の大阪での大躍進がそれにあたる。

    本来の民主主義の崇高な()理念というのは、多数派によって、少数派も含めた多様性を尊重することだけど、ポピュリズムの台頭はマジョリティに紐付けされていないマイノリティは問答無用で排除しても、切り捨てた側は痛くも痒くもないという現状を顕にしている。

    本書では、党組織や労組などに依存した既存政党が、無党派層の増大や組合加入率の低下によって機能不全に陥り、直接民主主義を主張するポピュリズムに振り回される様子が活写されている。
    ヨーロッパでは特に比例代表制がポピュリズムの躍進に一役買っているという指摘も正しい。

    エリートの方々はとりあえずポピュリズムを批判するのがお決まりになっているけれど、彼らの頭が本当に良ければポピュリズムにも対応できるのでは?と思う。
    それが出来ていない時点でお察し…ってことだよね。

    #読書感想 #ポピュリズム #民主主義 #EU離脱 #トランプ #橋下徹 #維新の会
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    投稿日:2021.12.30

  • タゴマゴ

    タゴマゴ

    各国で猛威を振るっているポピュリズムに関する概説書。ベネズエラのチャベス政権といった南米のポピュリズム政権も取り上げられているが、筆者の専門はヨーロッパ政治史、比較政治なので、ヨーロッパのポピュリズム政党に関する記述がほとんどを占める。本書では、ポピュリズムの定義として、①固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイル、②「人民」の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動といった二つの定義があるが、後者の定義が採用されている。

    ヨーロッパのポピュリズム政党において、大きく分けて、極右に起源を持つ政党と「リベラル」に起源を持つ政党の2種類がある。前者はフランスの国民戦線、オーストリアの自由党、ベルギーのVBといった政党であり、後者は、デンマークの国民党、オランダのフォルタイン党、自由党、スイスの国民党といった政党が含まれる。後者のタイプの政党は、前者のポピュリスト政党と同じく「極右」勢力と日本のマスコミで報道されるが、露骨な人種差別・民族差別を唱えていない。これらの政党は、自由・人権・男女平等といった近代的価値を全面的に擁護して、その近代的価値観をイスラムが決して受け入れず、「後進的」であると批判して、移民・難民の排斥を主張する。西洋的な「リベラル」価値観を守るためがゆえに、反イスラムであるというのは、『西洋の自死』のダグラス・マレーと同じであろう。現代のポピュリズムは「リベラル」と「デモクラシー」との間に親和性があるというのは興味深かった。また、ベルギーのVBの進出に対して、さまざまな対抗運動も活性化した。VBの躍進とそれに対する反対運動の活性化を通して、ベルギーの人々の政治不信が高まるのではなく、むしろ低下したという。

    以前にミュラーの『ポピュリズムとは何か』を読んだ際に、その定義の狭さゆえに、ポピュリズムは悪いものだという前提で不満を持ったが、本書では、ポピュリズムの定義を少し広く取り、ポピュリズムが既成政党に危機感を与えて改革を促すこと、ポピュリズム政党の進出とそれへの対抗運動によって、社会が「再活性化」するなど、ポピュリズムの「効用」まで触れられており、射程はミュラーの本よりは広く、納得のゆく議論がなされている。本書は、かなり情報量が多く、この情報量でたった820円とは価格破壊である。ハードカバーなら最低でも3500円以上のだろう。ポピュリズムのみならずほぼ現代ヨーロッパ政治史の優れた概説本なので、一家に1冊は確保しておきたい。
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    投稿日:2021.10.17

  • はま

    はま

    出版時から気になっていたが、ようやく読了。出版後、少し時間が経ったが面白かった。

    ポピュリズムを理解するために、民主主義・デモクラシーの「二つの原理」という枠組みは、考え方の整理に役に立つ。

    一つは、自由主義的・実務型デモクラシー。法の支配、個人的自由の尊重、議会制などを通じた権力の抑制を重視する立場。

    もう一つが、民主主義的・救済型デモクラシー。人民の意思の実現、統治者と被治者の一致、直接民主主義を重視する立場。

    どちらもデモクラシーだが、どちらに重点を置くかで、運動の進め方は、かなり違ってくる。

    実務型デモクラシーが優位に立ち、救済型デモクラシーがないがしろにされると、民衆の疎外感がひろがり、この差を埋めようとしてポピュリズムが支持を広げる。なるほど。

    現代ポピュリズムの流れとして、解放のポピュリズムとしての南米と、抑圧のポピュリズムとしての欧州が取り上げられる。

    興味深かったのは、欧州の流れ。当初は、極右の泡沫政党だったポピュリズム政党が、民主主義の価値を全面に押し出しつつ、民主主義の精神を尊重しないイスラムの排斥、福祉タダ乗りの移民の排除を訴え、支持を広げていったということ。

    それが、「置き去りにされた人」「サイレントマジョリティ」の支持拡大につながり、各国でポピュリズム勢力拡大につながり、ブレグジット、トランプ旋風にもなった。

    外からみていると、なぜ米英であんなことが起こったのかと不思議に思っていたが、仏、オーストリア、デンマーク、ベルギー、オランダ、スイス等々、民主主義先進国で着々と進んでいたというのは、ちょっと驚き。

    日本のポピュリズムとして、橋本の維新の会が取り上げられていたが、日本で、「置き去りにされた人」は誰なのかは考えていかないといけないポイント。「公」が極端に弱い日本で、サンダースのように、左派ポピュリズムが出てきても面白いと思うんだけどなぁ。
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    投稿日:2021.10.11

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