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奥透湖, 芒其之一 / ソーニャ文庫 (1件のレビュー)
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総合評価:
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megumi33
このレビューはネタバレを含みます
とても素敵なお話でした。 150年もの間、代替わりもせず妻を娶ることもなく生き続ける「怪物」。エンゲイト家の当主「クリストファー」は人々から本気で信じられていました。 もちろん、そんなはずはなく、実は代替わりしても披露せず、息子は「妻ではない女性」に生ませて家を存続させていたのです。 その理由は5代前の「クリストファー」が妻に裏切られた苦さを忘れず、子孫に二度と同じ過ちを犯させてはならないと決めた「しきたり」によるものでした。 その5代後の当代の当主「クレストファー」は禁を破り妻を迎えます。愛人の子として義母に虐げられていたセルマでしたが、美しく優しい少女です。 そんなセルマはクリストファーと「家族」になりたいと強く願うのですが、彼は冷たく ―俺は「妻」も要らない。家族も欲しくない。エンゲイト家は俺の代で終わりだ。 と、セルマを突き放します。 哀しみと絶望に打ちひしがれるも、セルマはめげずに「夫」に近付こうとします。 そんなセルマにクリストファーも次第に不器用な優しさや感情を見せるようになって―。 「あとがき」を読んで、作者さんがこの作品を書くのに相当の労苦と日にちをかけられたことを知り、納得しました。 とても良い作品です。 エンゲイト家の奇妙な掟、更には掟に疑問を持ち、自分の代でそれを終わらせようとした若きクリストファーの悲壮な決意など、よく練り込まれた設定、更には主役のセルマとクリストファーの心の内面をも深く掘り下げて描かれていて、読み応えもあると共に人物への共感も感じることができました。 ソーニャさんは「執着系の愛」がテーマのレーベルとのとで、実際に束縛しようする恋愛が多いですが、この作品は執着愛というよりは、閉ざされた環境で育った一人の男の深い絶望と哀しみがテーマのように思いました。
投稿日:2017.09.18
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