【感想】死体格差 解剖台の上の「声なき声」より

西尾元 / 双葉社
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
4
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ブクログレビュー

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  • ともこ

    ともこ

    読みたかったのは、同タイトルの別の著者の本だった。と読み始めてから気がついたけど、これはこれで面白かった。

    投稿日:2022.10.22

  • 1wan1wan

    1wan1wan

    法医解剖について、よく知っているという人はほとんどいないでしょう。
    解剖される側になる人はもちろんここにはいないし、異状な死や事件に関わることは珍しいし、極めて少ない法医解剖医は社会で声を大にして発言することが少ない。

    本書はそんな法医解剖について、法医解剖医が、自身の経験に根差したリアルな法医解剖の実態を描いたものです。
    わかりやすい言葉、柔らかいタッチで、亡くなられた方を言葉で傷つけないように注意して書かれています。
    法医解剖について知りたい人(どんな人?)がまず手に取る一冊目として、良い本だと思います。


    法医解剖にいたるまでの流れはざっくりいうと
    異状な死
    →警察の検視など(解剖の必要性の判断)
    →法医解剖
    というもの。

    本書ではその解剖される方の社会的生活的背景にスポットがあてられ、そこにある貧困、孤独、アルコール依存などが描写されます。
    この社会で暮らしている実感としても、法医解剖まで至るかどうかはともかく、異状な死は貧困、孤独などの人に多いだろうと思います*。また貧困の人のほうがアルコール依存になりやすいことはすでに証明されており、アルコール依存の方がおられることもうなずけます。

    *法医解剖率(法医解剖数/警察の取り扱い遺体数)は10%くらいとのこと。そのため検視から解剖に至るまでで何らかの偏りが発生している可能性はある。たとえば金持ちは異状死するけど解剖されにくい、とか(そんなことなさそうだけど)。


    解剖された方のエピソードを語るその中には法医学的ウンチクも満載なのですが、個人的に印象に残ったのは
    •借金苦の自殺では借金額は500万前後
    •凍死する遺体(都市でも凍死はおこる)は服を脱いだ状態で発見されることがある。(奇異性脱衣)

    ということです。 

    これまでもこれからも語ることができない方、
    その方に思いを馳せた、貴重な一冊でした。
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    投稿日:2022.04.16

  • ルビー婆

    ルビー婆

    このレビューはネタバレを含みます

    著者は、兵庫医学大学 法医学講座主任教授。

    ちょうど、大口病院連続点滴中毒死事件についても書かれていたが、その容疑者である元看護士は、先日死刑を求刑された。この本が書かれた時点ではまだ捕まってなかった。
    この事件を起こした理由は、『患者が亡くなった時に遺族に説明するのが嫌だった』
    なんて身勝手な理由だろう。

    解剖にまわされる多くの遺体は、独居者、生活保護受給者、自殺者。その中の30%は精神疾患者、そのうち5%が認知症患者。

    1人で死んでしまって後で発見された時、誰も見てないからんからないので、こういう結果が多いようだ。

    結核は治せるけど、怖い病気。誤嚥などでお年寄りがなりやすい。
    予防接種のポスターも病院で見ることがあるけど、空気感染だから、解剖でも危険なのでとても注意が必要とのこと。
    いろんな意味で結核にはならないように気をつけた方がいいなと思った。

    アルコールの飲み過ぎも良くない。当たり前かもしれないけど、飲みすぎた結果は悲惨だ。

    全て解剖されることは不可能だけど、一見、転倒して死んだとか、一見、自殺だろうとか、見た感じで判断されても実は違っていたりするから、解剖は大切だろう。
    ただ、予算も人員も少ないから難しい。

    こうなると、殺人だったものがそのまま他の原因にされて、犯人が野放しになるパターンもある。
    そう思うと、恐ろしい。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.10.23

  • かたくり

    かたくり

    このレビューはネタバレを含みます

    遺体の解剖は県により差がある。
    死後の体の反応について、興味深いことが多くあった。
    飽食でない人の体(内臓)はきれいなものが多いという記述に、うらやましさを感じた。
    恵まれているとは窮屈なものだなと。

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    投稿日:2021.10.06

  • E

    E

    法医解剖医の著者が死体解剖の経験に基づく、自身の体験と「死」に対する想いを綴った書籍です。

    貧困・孤独・老い の三つの観点から死体を語る3つの章(1~3章)と、「死後格差」(第4章)、解剖医として働く傍ら日々感じていることを綴る「解剖台の前から」(第5章)、「事件の死体」(第6章)「幸せな死体」(第7章)という構成になっています。

    死体の解剖というと、TVドラマなどでよくある科捜研での死体解剖をイメージしますが、著者の所属は大学なので我々がドラマで目にするものとは少し違うようです(事件ありきの解剖ではなく、事件性が疑われている段階のものや、遺族の承諾を得て(事件性のない)遺体の解剖も行う)。

    「嬰児の遺体を解剖する際、生まれてから亡くなったのか、生まれる前から亡くなっていたのか知るための方法」「介護する側が先に逝き、される側である認知症の老人の命も危ぶまれるという現実」、「カフェイン中毒での死」や「死後も衰えない結核菌の恐怖」、「室内での凍死」など、実際に仕事をする中で目の当たりにしたからこそ見えてくる現実が記されています。

    特に印象的だったのは、貧困にあえいで生前風呂にも満足に入れずに亡くなったご遺体の内臓は赤々と美しいのに対し、裕福で贅沢な暮らしをしていた人のご遺体は内臓に脂肪がからみついている(場合によってはいつ心筋梗塞を起こしてもおかしくない状態である)という主旨の記述でした。
    様々な意味で、人間は外からだけでは何もわからないものなのだなぁ、と思いました。健康そうに見えるから健康というわけでもなければ、裕福そうに見えるから何一つ不自由ないというわけではないようです。
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    投稿日:2020.03.09

  • あすみ

    あすみ

    この本を手に取る人は多分死というものにある程度興味があるんだと思う。
    人が死ぬ原因から死体検案書を発行するまでの格差、人の格差、組織の格差など。
    あちらこちらで格差が出ていて、死でさえ平等ではないのかと愕然としてしまう続きを読む

    投稿日:2019.11.02

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