【感想】モテる構造 ──男と女の社会学

山田昌弘 / ちくま新書
(20件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • うえけん

    うえけん

    難しくなりがちなジェンダー論を、「モテ」という取っ付きやすい切り口から分析しているため理解しやすい。
    本書の大意として下記のような印象。
    男と女の大変さは別、という結論。

    ・男らしさ女らしさは文化的アイデンティティなので、「らしさ」のガイドラインに沿っていると居場所が確保できた感覚になる。
    ・男は「仕事」と「モテ」が比例するが、女は「仕事」と「モテ」が分離した個別の価値基準となっている。そのため、男は仕事に集中すればモテるが、女は「仕事」と「モテ」の両軸を追わなければならない。だからキャリア女性は大変に見える。
    ・男の評価軸は一つしかないため、仕事ができなければ終了となるが、女は仕事ができなくても「モテ」があるため、複数の価値基準を選択できるし逃げられる。

    <アンダーライン>
    ★★★
    社会学の役割は、見えなかった枠を明らかにすること

    ★★★
    性別は、アイデンティティの基準を構成する

    ★★★★★
    アイデンティティ・クライシスの典型的症状は、「自分は何者か分からない、どもにも居場所がない」と感じること

    ★★★★★
    「役に立つこと」「人に好かれること」はアイデンティティの大きな確認手段である

    ★★★★
    男らしさ女らしさの規範が存在することによって、社会的に逸脱という概念が作り出され、一部の男性や女性に不利益をもたらすことがある。しかし、多くの人はその性差に自らを合わせることで、自分が「男である」「女である」という確信を得る。

    ★★★★★
    近代社会は、自分で自分のアイデンティティを作り上げることが人生の課題となる社会である。

    ★★★★★
    男性は、自分より「できる」女性を性的対象から排除する傾向がある。それは、できる女性が、男性が男性であるというアイデンティティを不安にさせるからである。

    ★★★★★
    「当たり前のことをまるで不思議なことのように考える」ことが社会学の本質
    続きを読む

    投稿日:2024.05.27

  • kasaji

    kasaji

    内容には膝を打つものが多く、納得性が高い。私が思っていた漠然とした疑問かつ意見として露にしてはいけないと思っていた、男女での違いが分かった。
    惜しむらくは、タイトルが悪い。このタイトルでは、記述内容の良さが伝わらない。続きを読む

    投稿日:2024.05.27

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    NDC分類 367.2

    「女は女らしく、男は男らしく―。旧態依然とした価値観だが、どっこい今も生き残っている。どうしてなのだろうか?性別の「らしさ規範」(女らしさ・男らしさ)が社会から消えないのは、どういう相手を性愛の対象として好きになるかという、人間の「感情」に固く結びつけられているからだ。しかも面倒なことに、性別規範は男女非対称にできている。だから「できる女はモテる」ということにはならない。本書では、社会的な性別機能の身も蓋もない現実を、透徹した視線で分析。男女それぞれの生き難さのカラクリを解剖し、社会構造変化の中でそれがどう変わりうるのかを俯瞰する。」

    目次
    第1章 男と女の関係学
    第2章 男らしさ・女らしさとは何か?
    第3章 性別規範の機能―社会にどのように利用されているか
    第4章 性差別の背景―できる女はモテないか?
    第5章 近代社会の構造転換―男女の生き難さの変貌
    第6章 ジェンダーの発達理論
    第7章 ケアは女の役割か―男が触ると「いやらしい」?

    著者等紹介
    山田昌弘[ヤマダマサヒロ]
    1957年東京都生まれ。1981年東京大学文学部卒。1986年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学
    続きを読む

    投稿日:2024.02.03

  • ゆう

    ゆう

    男は女から認められないと生きていけないが女は同性からの関係性だけでも自尊心を損なわず生きていける事が本書での1番の気づきである。
    男は仕事ができる事でしか周囲から認められずそこを損なうと社会的な存在価値がなくなってしまう。女性はキャリアでも家庭でも居場所を見つけることができ、男よりも生きる術があるように感じた。これからは男性らしい女性らしいという概念は崩れていくだろう。だが根源的に残っている男女の性は自認して前向きに生きていきたい。
    女性は同性から養育を受ける為に性的な欲求は低い。男は母親以外からの異性の承認が必要であるから性的にも血気盛んである。これもなるほどなぁと思わされた。
    続きを読む

    投稿日:2021.05.22

  • ちゅん

    ちゅん

    「モテる」とは何を元に成り立っているのかを書いた本
    タイトルから考えたイメージよりも面白い、性別にアイデンティティを掘り下げていて良い
    人は何によって自分の価値を感じ取るか、それが男女によってどう違うかが書かれている。

    男男:力の上下関係、男女:美による序列、女男:気は優しくて力持ち、女女:謎
    性転換手術を受けた元男性はより女性らしくなる。
    男性は女性的に振る舞うと男性であるという確信がゆらぎやすい
    女性らしい男性は社会的に認められにくい

    市場労働:社会から評価され競争にさらされる=従事している人が男性的とみなされる。家事労働:家族に評価され競争がない=女性的
    男性であると確信するために、家事労働よりも市場労働を好む

    アイデンティティ、自分の居場所があり貢献が評価されている感覚:①職業:仕事世界②結婚相手:性的魅力(③居住)
    男性:①と②が直結、オール・オア・ナッシング
    女性:①と②が別々、ダブルバインド

    男性がほぼ全て定職につき格差が小さい場合に性別役割分業の社会が持続可能となる
    イギリスでは結婚相手に年収を聞くのは失礼という認識がある
    男性:からかいのシステム、力を試す、女性:陰口のシステム、親密性を確認
    男性:親密性と性的欲求の一致、女性:性的関係無しで親密性の充足が得られる

    男性からのケアは忌避され、女性からのケアが望まれる
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    投稿日:2020.12.04

  • kiki yuyu

    kiki yuyu

    題名はかなり狙ってる感じだけど、内容はしっかりとジェンダー学、それに関する言説について説明されている。

    男女の非対称性を理論的に正すことが困難だと納得させた上で、その不平等ともいえる非対称性が、現実味を持って解説されていて興味深かった。
    性別の非対称性を語っているものの、不思議と前向きな気持ちで読み進められる。

    男性は〜、女性は〜、という語り口に、今まで嫌悪感を持っていたけど、これを読んで社会構造的に仕方がないことと腑に落ちた所も多く、勉強になった。
    フェミニズム、ジェンダーに関心がある人は、新しい視座を得られると思います。
    続きを読む

    投稿日:2020.04.12

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