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吉川幸次郎 / ちくま学芸文庫 (1件のレビュー)
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野村 幸平
著者である吉川幸次郎さんのお名前を知ったのは初めてです。本書は、吉川氏が1966年にNHKラジオで1ヶ月にわたって「論語」について語られた中身を書き起こし、そのまままとめたものです。ですので当然文体も…口語体です。この段階ですでに読みやすいことは確かなのですが、それ以上にこの本を読みやすくしているのは吉川氏の論語に対する姿勢にあるように思います。 言葉遣いが優しいことはもちろんですが、講師である吉川氏自身が論語で語られる孔子の言葉をあえて自分の視点だけで断定しようとしていないのです。学者ならば自分の解釈を述べるべきと思われる方もいるかもしれませんが、孔子にまつわる研究は数多く、諸説数多ある中にあって自分の解釈は表明するけれどもそれには必ず他の方や中国でのとらわれ方を紹介している。世界観を一つに収斂させない努力が、「論語」そのものに備わる多義・多様に対する寛容さとつながっている感じさえ受けます。 本書は「論語」「全部で27回にわたって放送されたためか、この本も全体で27章にわたって構成されており、1章が10ページに満たず電車の中で読み切るにはちょうど良い長さで構成されていることも、ビジネスマンの自分にはほど良い長さだったのでしょう。どこかで目にしたことのある名句から、その論語の奥深さを少し覗き込んだだけの入門書体験でしたが、行動や言葉にあらわれる私の考える人間としてわきまえるべき他者への思いや愛情を再確認できる良い機会になりました。続きを読む
投稿日:2009.04.19
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