【感想】第三の魔弾

レオ・ペルッツ, 前川道介 / 白水Uブックス
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • ユカ

    ユカ

    読み始めるとあっという間に惹き込まれ、読むのが止まらなかった。
    じつは買ってから1年近く積んでいた。以前読んだ『アンチクリストの誕生』は短編集で気楽だったのに対して『第三の魔弾』の厚さに手を出しかねていたのが阿呆らしい。ペルッツの他の本も買わねば。

    クロースターカッツ(修道院の猫という意味。美食家で厚かましい人物のこと)という語が出てきて、ロセーロの『無慈悲な昼食』の教会に住んでいる猫のことを連想した。意味もぴったりだし、同じ言い回しがスペイン語にもあるのか、単にそれほどよくある事実なのか。
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    投稿日:2021.08.24

  • 深川夏眠

    深川夏眠

    時は16世紀。
    ラインの「暴れ伯爵」と渾名されるグルムバッハは、
    聖職者の俗権への介入を厭い、
    抵抗して、神聖ローマ帝国皇帝から追放処分を受け、
    スペイン人未入植地で農業に従事しようというドイツ人たちのリーダーとなって、
    フェルディナンディナ島(キューバ)へ。
    後にコンキスタドール(Conquistador)と呼ばれる新大陸征服者の一人、
    アステカの財宝を狙うコルテスの無敵軍と対立する。
    部下が博奕に勝ったことで、
    百発百中の腕を持つ狙撃兵ノバロの小銃を巻き上げたグルムバッハだったが、
    コルテスの命令で絞首刑に処せられたノバロが
    死の間際に吐いた呪詛の言葉に縛られる。
    曰く、グルムバッハが三発の弾丸が入ったその銃を使えば、
    一発目はアステカの王モンテスマに、
    二発目はインディオの少女でグルムバッハの情婦となったダリラに、
    最後はグルムバッハ自身に命中すべし――と。

    幻想的かつ血沸き肉躍る歴史小説。
    義侠心溢れる乱暴者、身長2メートル弱の偉丈夫、
    フランツ・グルムバッハ伯爵の冒険。
    暴れ伯爵は一見かっこよさそうだが、なかなか間が抜けているというか、
    決して超人的なヒーローではなく、
    実は結構おバカなところが人間臭くて好感が持てるし、
    目的のために一直線と見えながら、あちこちで迷い、酒に逃げる辺りがリアル。
    先に短編集『アンチクリストの誕生』を読んだときにも思ったが、
    作者レオ・ペルッツは歴史的事実と虚構を綯い交ぜにしながら、
    キャラクターにきちんと肉付けをして厚みを持たせて描くのが上手い。
    エンディングは、書かれたとおり素直に受け止めてもいいが、
    呪われた「第三の魔弾」によって、
    長いストーリーの話者と語られる対象が一体化することで、
    超自然的な実を結ぶ幻想小説と化す……と捉えるのも一興。
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    投稿日:2017.10.24

  • ukaiya

    ukaiya

    読み終わってしばし、呆然。
    突如、時系列が断ち切られて
    別の時系列に繋がる、映画的な手法が
    とられているから。

    キリスト教や世界史の知識があれば
    さらによく分かるんだろうなと
    思いつつ、血なまぐさいストーリーの
    中から浮かび上がる登場人物たちの
    個性的なキャラ力のおかげで、
    一息に読めた。

    「巨匠とマルガリータ」にも通じる世界観。
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    投稿日:2016.03.24

  • toca

    toca

    国書刊行会の『世界幻想文学大系』の1冊として刊行されたタイトルが、白水Uブックスから復刊。
    既に邦訳が幾つか出ていて、そちらを読んでいる人間にはペルッツらしい幻想的な歴史小説。波瀾万丈なストーリーのラストがああいう終わり方をするとドキッとするね。続きを読む

    投稿日:2015.07.17

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