【感想】たのしいプロパガンダ

辻田真佐憲 / イースト新書Q
(40件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
7
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ブクログレビュー

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  • kouhei1985

    kouhei1985

    「楽しさ」を通じて民衆をコントロールしようとするタイプのプロパガンダを「楽しいプロパガンダ」と定義し、戦前日本、欧米、東アジア、宗教組織(オウムとイスラム国)、現代日本における「楽しいプロパガンダ」を概観した本。

    プロパガンダは楽しく、人を引きつけるものでなければならない。これはどの国でも共通の認識だったようで、旧帝国陸軍の清水盛明、ナチス・ドイツのゲッベルス、中国共産党の毛沢東も同様の見解を述べている。そして利益を上げるために民間のエンタメ産業も協力、便乗してさまざまなプロパガンダ作品を作り上げていった。プロパガンダの本質を知るためには、このような官民協働にこそ注目しなければならない。強制的で退屈なプロパガンダではなく、「楽しいプロパガンダ」によってどのように民衆が扇動されたのかを構造的に見ることによって、未来の「楽しいプロパガンダ」を防ぐことができる、と著者は主張する。

    「優れたプロパガンダは、政府や軍部の一方的な押しつけではなかった。むしろ、民衆の嗜好を知り尽くしたエンタメ産業が、政府や軍部の意向を忖度しながら、営利のために作り上げていった。こうすれば、政府や軍部は仕事を効率化できるし、企業は儲かるし、民衆も楽しむことができる。戦時下に山のようにプロパガンダが生まれた背景には、このような構造があった。」(p.58)

    国策標語の募集について、「完成した標語よりも、標語について人々に考えさせることのほうが、社会的な影響力がある」(p.41)と、大正時代にすでに指摘されていたのが興味深く、恐ろしさも感じた。
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    投稿日:2023.06.13

  • yurisyo

    yurisyo

    コテンラジオのゲッべルス回でムロさんが紹介していたので気になって購入。

    プロパガンダとは、
    「政治的な意図に基づき、相手の思考や行動に(しばしば相手の意向を尊重せずして)影響を与えようとする組織的な宣伝活動」のことである。(2p)

    前述のコテンラジオ、ナチスの宣伝大臣であるゲッベルスの回をおかわりもして聞いていたのでこの程度にはどういうものか知っていた。

    本書では大日本帝国のプロパガンダ、
    欧米のプロパガンダ100年の歴史、
    東アジアのプロパガンダ、
    カルト宗教や中東宗教組織のプロパガンダ、
    そして現代日本においてはどうなのか?という流れで、
    プロパガンダについて述べている。


    …てか、プロパガンダがゲシュタルト崩壊しそうだな笑

    どの章も本当に興味深くて、プロパガンダと聞いてイメージする…説教くさくて退屈でちょっと滑稽で…と、いうものではなく、娯楽の顔にスルリと滑り込んだそれが、楽しく消費している間に気がつけば取り込まれているその怖さもよく理解ができた。

    特に3章以降は自分の生きている時代、通り過ぎてきた記憶に諮れるため、より身近なものとして、その怖さ、面白さが想像できる。
    振り返ってこの本を面白い、楽しいと感じている時点で、たとえばここに著者の思想を過剰に盛り込んだ文章があったとしても、特に考えずに消費するだろう。そう思うと、どんな娯楽も疑心暗鬼で手放しで楽しめなくなりそうだ。

    まあプロパガンダにそんな区分けが可能かはわからないけど、前記した本書2p目の文章の()内の有無が、良し悪しの分岐点になるのだろうと思う。
    そしてまた、娯楽を消費する側のリテラシーも大事で、楽しむだけではなく、そのコンテンツをメタ認知で捉える癖も必要になりそうだ。

    2015年の刊行だったが、今後の娯楽への嗜み方をそれとなく教えてくれる、読み応えあって本当に面白い本だった。
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    投稿日:2023.04.16

  • echigonojizake

    echigonojizake

    西洋、東洋の政治家や軍部。オウム真理教やイスラム国などの「宗教」など事例は豊富。いずれも「楽しい」ものだという。人間は感性が先走ると理性で考えられなくなる。それこそリーダーの思う壺。我々は身近なところでプロパガンダの対象になりうるのだ。

    テクノロジーが日々進化して、プロパガンダの手段はすぐ変わる。我々ができることは、こうした歴史に虚心坦懐に学び、人間の弱さを自覚することと感じた。教養なき人生は流されて終わりになるのだろう。時流に竿刺すことごできるか。本を読む理由もここにある。
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    投稿日:2023.04.16

  • syuulou

    syuulou

    プロパガンダの悪用は、恐ろしい。自分が楽しんでいると思っていたら、実は、洗脳されていた、という自体になってしまう。プロパガンダの戦略を知っておくことは重要かと思う

    投稿日:2023.03.25

  • T.Hori

    T.Hori

    戦前日本、ソ連・ナチスドイツ、北朝鮮(+少し中台)、オウム真理教とイスラム国という章立てで、各地、各時代のプロパガンダの事例を解説し、そこから現代日本における政治的、軍事的表現と対比させるという構成。

    形式張った広報ではなく、庶民が触れやすく馴染みのある題材に意図を混ぜ込む「たのしいプロパガンダ」こそ効果が高く、警戒するべきものであるという主張。

    中盤までは楽しく読めたが、終盤の著者の主張に関する部分が強すぎて読了感はいまいち。
    ただ、受け取る情報がどういう意図を持った情報なのか、というのを考える癖をつけるのはたしかに必要だよなと思った。
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    投稿日:2023.03.15

  • saga-ref

    saga-ref

    プロパガンダを楽しむといった本ではなかった(汗)。第2次大戦まで、軍国主義国家だった日本は情報将校を中心にそれなりのプロパガンダ・スキルがあったようだ。現在の自衛隊は、かつてのスキルはないと著者は言う。国民に対する「遠慮」があるのかな? 人心を思い通りに誘導したい国(西側も東側も)、テロ組織などの、娯楽、エンタメの中に紛れ込んだプロパガンダに気をつけろ、ということなのだ。カバーのデザインは、ソ連の芸術家が製作したポスター続きを読む

    投稿日:2022.12.12

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