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細谷正充 / 双葉新書 (1件のレビュー)
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必殺技。いい響きだ。僕は持っていないが。 日本特有、らしいこの必殺技を、時代背景と含めて読み解いてみよう、というもの。 まず力道山が登場する。空手チョップというやつだ。外人レスラーと戦うそれには、…敗戦、ということへのカタルシスが多く感じられたのだろう。空手というのがどのぐらいの知名度やシンパシーがあるのかも探る。沖縄をルーツにする空手と、アメリカ人への鬱屈した感情。著者は妄想、と前置きして現代の沖縄問題にも通じると語る。 力道山の空手チョップは確かに必殺技だろう。だが「ライダーキック」とか「スペシウム光線」とかが出てくるとばかり思っていたので面食らった。そういう特撮作品はすでに語り尽くされているから避けたそうだ(仮面ライダーは、別作の項で少し触れられるが)。仮面ライダーはともかく、ウルトラマンやウルトラセブンは、かなりストレートに世相にものいう作品だったとは思うのだけど。 おっと、話がそれた。 これは本書に頻発するフレーズである。おっと、という言葉で話題を切り替えるのだが、どうにもこれのリズムが悪い。取り上げられているテーマや試み、そして訴えていることは共感と少しの発見があってとてもよいのに、そこが残念だ。妄想を妄想としてあらかじめ言い訳するケースも頻発する。僕もよくやる方法ではある。だが、それがなんとリズムを崩すことか。いや、「崩す」ということは、柔道などでは必殺技をしかける前段階でもある。つまりはそこから先に著者の必殺技が待っているのであろう。いや、これは僕の妄想だった。 さて、力道山以外は創作の中からの必殺技が続く。だが空手チョップもギャラクティカマグナムもゴルディオンハンマーも、フィクションかノンフィクションかを分ける必要がない、ということは理解できた。「熱狂する側」たる僕らが何かを投影したい、というだけなのだ。 ジョジョの一部・二部も取り上げられている。バオー来訪者からスタートするその追跡には大いに共感するのだが、しかし波紋は必殺技かなあ。あんまり社会的にも影響は与えなかったし、与えられてもいなかったようにも思うけど。 そんなわけで、この手のものは「あの作品をいれるべきだ」という話にどうしてもなりがちだろう。そこでまた妄想してみる。たとえば「ドラゴンボール」は取り上げられていない。まあ、あれにあえて時代性を読み取るとすれば、バブル期特有の、なんとかなる、ご都合主義ぐらいだろうか。 本書の最後に取り上げられているのは「居眠り剣法」である。鞘走らせて一閃で命を断つ、というようなかつての剣豪小説とはちがい、この必殺技は、なんだか相手のやる気をなくさせて、つい手を出すのを忘れさせてしまう、というものだ。少しも「必殺」ではない。これが現代、ということなのだろうか。 必殺技というのもエンターテイメントだとすると、その多様化によって誰もが知る必殺技は死滅したといえるかもしれない。「力道山」と「まどか☆マギカ」を比べれば明らかだろう。 必殺技が日本人のカタルシスだったとすれば、日本人はこの時代のなかで寄るべき大樹を失い、居眠りの世界に放り出されたのだろうか。それとも僕が型にはまりすぎているのだろうか。もう「オタク」向け以外に古典的な必殺技などあらわれまい。 そこで、妄想で我慢することにする。続きを読む
投稿日:2016.04.08
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