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與那覇潤 / 文春文庫 (26件のレビュー)
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いゔどっと
近世(初期近代、early modern)の中国に注目する 近世は日本史だけではない 世界ではじめに近世に入ったのは「宋朝の中国」 ヨーロッパの近代啓蒙主義は、宋朝の近世儒学のリメイクとして考えられ…る ルネサンスの三大発明はどれも宋代中国の発明 →どうして近代には西洋が中国を追い越し、産業革命は起きたのか? →どうして近代化・西洋化が捗っていなかったはずの中国が大国に返り咲いたのか? どうして先進国だった中国は、人権意識や議会政治だけはいつまでも育たないのか? 【1】 冷戦後 ・一極支配 ・自由(機会の平等)の名の下に平等(結果の平等)が蔑ろにされる=自由競争 内藤湖南「宋代以降近世説」 唐(中世)と宋(近世)=中華文明の分け方 ①貴族制度を全廃し皇帝独裁政治 ②経済社会を自由化する代わりに政治の秩序を一極支配によって維持する仕組み ・農民に貨幣使用を行き渡らせるように王安石の青苗法→商売をするように ・自由競争で負けた時の保険として、「宗族」という父系血縁のネットワーク ・朱熹の朱子学=褒める道具 ・日本は理念に賭けることができない、現実との落差を騒ぐ ・古代日本で科挙ができなかったのは、メディア・教育インフラが整っていなかったから(中国にはすでに印刷技術があった) ・令外官は実質に貴族の世襲になった→藤原氏の台頭 ・武士に注目しても古代と中世を区別できない。日本中世は「中国銭の時代」 ・日宋貿易→院政? ・新しいことを始めようとした平家が旧体制的な源氏に負けた(だから武士の時代ではないし、日本はグローバル化が下手) 【2】 ・モンゴルは野蛮な侵略者ではなく、グローバリゼーションの原点 ・間接統治形式の採用→広い支配 ・日本の元寇と韓国の高麗の違い。「国難ここに見る」ではなかった。軍閥政府の鎌倉幕府こそグローバル化の道を閉ざした ・後醍醐天皇は異形というよりスタンダード、他の奴らが変 ・最後の挑戦者・足利義満も上手くいかなかった(暗殺?突然の病死) =日本において中国化を目指すとおおむね短命に終わる ・明朝の朱元璋は反グローバリズムで、その隙間をヨーロッパが埋めた ・銀の大行進→全世界が戦国乱世 ・清朝は自由放任政策→好景気→格差 【3】 ・応仁の乱という転換点 ・安土桃山期に象徴天皇制ができた? ・信長のライバルは「本願寺」 ・☆なぜ近世日本は身分制社会を選んだのか? →イネとイエ。稲作の普及は徳川初期の新田開発によるもの。中世までは畑作の比率が高かったが稲作より収入が得られないため、中国化に賛成していた。が、インフラ的に食えるくらいにはなったので自由市場の魅力がなくなった。→大家族から直系家族へ。核家族化によって子供が増えた。≒農地改革から高度成長とも似てる 封建的 ・家職制によるジョブトレーニング 【4】 ・「マルサスの罠」の抜け穴=家事の市場化@西洋 ・☆「姥捨山は偽の江戸、孫捨て都市が真の江戸」(都市の蟻地獄効果、速水融)=若者のために老婆が犠牲になるのではなく、イエを長男に継がしたジジババが次男・三男を都市に捨てる=出稼ぎ者の高死亡率 =日本型の福祉社会 ・江戸時代≒北朝鮮? 【5】 ・明治維新は大したことなく、日本独自の近世が耐用年数を超え、中国化せざるを得なくなった ・福沢諭吉は「機会の平等」は説いたが「結果の平等」は説いていない =新自由主義的、市場原理主義的 ・西洋化と中国化のタイミングが重なった、中国や朝鮮はそもそも中国化していたので西洋化には魅力がなかった ・識字率はバラツキがあり、仕事柄文字を使う人が近世から読み書きができた →近代以降の市場経済に適応できるか否かをつくっていた ・底辺労働者でも実力主義で、女工にも手先が器用なエリートと雑で罰金を取られた負け組がいた 【6】 ・『ラピュタ』は『わが谷の緑なりき』への返歌 ・再江戸化のさいに、社会主義の一部を適用した=日本がいちばん社会主義国家で成立した ・明治維新は失敗したが、昭和維新は成功した 【7】 ・『ナウシカ』は、満州事変から原爆投下まで ・創氏改名は同化というより江戸化 ・東アジアに基地を持たないドイツ・イタリアと同盟することで、中国とアメリカに対立することになり、自滅した ・愛国心はムラ社会の結果であり原因ではない。戦中に徴兵制がうまくいってなかった中国に勝つことはできても掌握することはできなかった ・「日中戦争とそのオマケ」、アメリカに負ける前に中国に負けた ・Japanimationは戦時下に生まれたが故に生死や戦争が描かれる 【8】 ・戦前の軍国国家=軍部による社会主義→議会政治家による戦後社会主義 ・自民党が作られなかった戦後史の方が西側の「普通の国」 ・社会主義が経済ではなく平和問題になった ・戦後民主主義は新しいブロン 【9】 288 新しい歴史観☆ 【10】 300 西洋型の近代社会のインフラ=法・人権・議会制民主主義は中世貴族の既得権益 そもそも中国にはそのようなものはない 306 公務員を薄給にしてしっぱいした近世中国 316 北朝鮮化か、中国化 宮台・仲正『日常・共同体・アイロニー』 溝口健二『新・平家物語』 『樽山節考』 『郡上一揆』 『スパイ・ゾルゲ』 続きを読む
投稿日:2023.02.19
tichinyo
普段日本史は読まないが面白く読めた。 グローバル化を中国化、封建遺制への回帰を江戸時代化とややしつこくリフレーズし、やや強引なまでに押し通すことで、我が国がたどってきた物語に新鮮な整理を示すとともに…、これから向かう道筋の方向性に歴史的な視座を示している。 10年前の、割と時代に応じた記述も含まれる著作ではあるが、今も色褪せることなく読む価値は十二分。続きを読む
投稿日:2022.02.10
太郎次郎三郎
またしてやられた、というのが正直な感想である。 著者の本は「知性は死なない」から読み出したが、同書のインパクトが強く、それ以前の本を手に取ることがなかったので、鬱前後で区切ったときに、鬱以前を知らな…かった。 しかし、「知性は死なない」でしてやられた感覚はそれ以前のこの本でもまた思い知らさせた。 筋で見方をひっくり返す、という意図は見事に果たされ、「輿那覇史観」をこれでもかと投げつけられた。恐らく、細かな論点はいくつも挙げられるのだろうが、主な論旨を覆すほど反論できる根拠が恥ずかしながら今の私には見当たらない。 そして、最終章の最後で記されている憲法前文の扱い方は、この筋を一通り読むとまた格別の味わいである。 この本の論旨を今の政治状況と並べて見た時に10年経った今でも全く損なわれていないと感じる。 この10年間、色々な人がオリンピックというものに気が向いていただけで、ここに書かれた克服すべき課題は変わっていないのだと思う。 冒頭の鬱前後の記述で気になるのは、鬱後の方が記述に皮肉めいた部分が少なくなった、もしくは弱まったと感じるところだ。 その点については、著者の別の本を読みながらまた考えてみたい。 続きを読む
投稿日:2021.10.03
kalitan
このレビューはネタバレを含みます
タイトルに惹かれて買った人は、あれっ てなる内容。 著者は狙ってつけたタイトルだと認めている。 しかし、副題も全然違うぞ。 本書は日中文明衝突を書いたものではない。 本書の言う「中国化」とはグローバル社会・自由競争・実力主義・格差社会化のことで、これは中国ではすでに宋代に実現されていた。(ヨーロッパは20世紀になっても王制の残る遅れた地域であった) 対する日本は江戸時代の封建的な社会を維持し、1990年頃までその伝で来た。その後ようやくグローバル化すなわち中国化の時代がやってきたのだが、日本人はやっぱり江戸時代回帰志向が強い。終身雇用や家族制度の崩壊した状態でもはや江戸時代方式は無理なのだが……。 日本は議会制民主主義や人権があるからいいと思っている人がほとんどだが、実はみんなその本質を理解しているとは言い難く、ポピュリズムに踊らされてそれらを簡単に手放し、北朝鮮化する危険が大である。 右でも左でもこの本を買いそうな、政治談義好きな人々の怒りを喚起することがいっぱい書いてある。 著者の書きようは、もちろんそういった人々を冷やかし、無知ベースで政治的主張をやめ、もう少し勉強して考えようねという事である。 個人的には 冷やかし口調が大変不快であった。右を揶揄し返す刀で左も斬る というまあ公平な話ではあるけれど、あれは無知これは浅はかという扇情的なところが気になった。 著者は研究者であって、書いてある内容はなるほど嘘はなさそうで、日本の来し方のおさらいと為になる新知識もいくらかあったのだけど、全体に浅い……人の著書を基に構成してあって、深い研究ではありません。歴史や政治が専門ではなく、評論家的な言説である。ジャーナリズム的というのかな。私でも、それは言いすぎだろう……という箇所が多々見受けられました。 しかし、一面的な理解で盛んにせこい政治談義をしてる人にはやっぱり読んでもらいたい本だし、何も知らない若い人が日本の現状(とその歴史の流れ)を手早くつかむためには良い本だと思う。 日本人の自由主義の法治国家の構成員として民度が低すぎる、江戸時代回顧というあたり、人の損が自分の得になるという百姓根性、その他諸々うなずけるところも、情けないながら大変多かった。
投稿日:2021.04.15
海外おやじ
通読一回ではまだよくわからないところも多いが、まず一番にお伝えしたいのは、その視点の新しさ。 内容は歴史の話です。日本が中国化してゆくというとても議論を呼びそうなタイトルですが、読み進めると筆者の述べることが分かります。加えてこの本の良いところは、この日本を何とかしたいという筆者の思いが感じられるところです。その熱意のようなものと筆者の論の新しさに感動すら覚えました(ただ本文中では非常にシニカルな文体です)。 まず、日本史の新たな見方について大いに驚嘆。戦国時代とは決してかっこいい時代ではなく飢餓をしのぐために殺し合って食べ物を奪い合っていたという見方。また江戸時代の安定はお上とイエとの相互共存の関係である封建制によって支えられ、さらにこれは相当度に社会主義的であった点。加えてこの江戸時代的な安定は、農家の次男三男などを犠牲にして成り立っており、こうした不満分子が明治維新を起こしたという推測。 このような方は高校ではおよそ教わらない話であり、かといっていわゆるトンデモ話ではなく、論拠もあり納得して読める。 次に面白かったのは中国化の話。 中国の特徴を宋の時代の政策を引き合いに出し、頂点の支配者の下での厳しい競争社会としており、これが現在進んでいるグローバリズムや新自由主義が出てくる遥かに古くから中国で実行されていると主張する点。ここから中国化と述べているのはいわば市場万能主義、厳しい競争社会を意味しており、政治体制が共産主義になるというわけではありません。 更にこうした江戸時代的なるもの(封建制・社会主義的)と中国化(苛烈な競争社会)とが明治維新以降の日本近現代史で揺り動いていた点を現代の西暦2000年代の政治状況まで辿って説明していいます。 右翼とか左翼とか知識人とか、どうにも面倒くさくて胡散臭くて、一般の人のほとんどがシニカルに斜に構え距離を置くものが政治だと私は思います。でも筆者はそうした現状も踏まえて我々が今住む日本をどうにかしたいという思いを持っており、歴史という武器を使って本当にこのままでいいの?或いは、大声をあげている両ウイング(右翼左翼)に、君たちほんとは矛盾してね?と問いかけているように思えます。 巻末に文庫本用のあとがきと宇野常寛氏との特別対談が掲載されており、より彼の考えていることがわかると思います。また参考文献も詳細に記されており、今後の読書の参考になります。政治好き・歴史好き・小難しいのが好き・日本の将来が心配な人等々には是非お勧めしたい本です。
投稿日:2021.03.29
cangben
高校レベルの日本史の知識を土台に全く異なる歴史を描く一冊。歴史が単なる事実の積み重ねではないということを語らずして教えてくれる。
投稿日:2020.03.12
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