【感想】大阪―大都市は国家を超えるか

砂原庸介 / 中公新書
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • Tomoki

    Tomoki

    このレビューはネタバレを含みます

    大都市に存在する対立軸の1つに、市長と地方議会の対立がある。戦後、市長は有権者から直接選ばれるようになったため、その正当性より議会の影響力を抑えられるようになった。確かに自民党長期政権は、地方議員から市長への影響力を強めた。だが、長期政権の動揺の中、都市全体の利益を主張して議会の多数派から支持を得るような改革派首長が登場している。
    大都市では人口流入の減少・流出の増加が続く中、経済成長し続けるために開発事業が行われてきた。民間企業が参入できない地域を開発し、新たな市場を生み出すという「都市官僚制の論理」である。それが成功するうちは良いが、失敗が重なると事業ごとに民営化による効率化を図る「納税者の論理」が浮上してくる。大阪都構想はこれら2つの論理を含んでいるものであり、その両立は容易くない。

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    投稿日:2023.08.28

  • ZG

    ZG

    2020年、2度目となる大阪都構想住民投票が否決で終わった。

    日本で二番目の経済圏の中心である大阪市、そして大阪府が今後どのようになっていくのか、本書をヒントに追っていきたい。

    投稿日:2020.11.24

  • 足柄

    足柄

    首都東京以外の大都市が直面する問題が、明確に整理されている。東京の後背地となるのか、それとも地方中核都市の自律的発展を後押しするのか、という選択肢を提示しているが、そこにあるのは現行システム上弱体化せざるを得ない都市の不満である。

    ところで都市と農村との関係は、金とリーダーシップの流れだけで整理できるものではない。食糧その他の供給地として、人の供給地として、地方の大都市以外の場所との関係性をこれからどのように考えていくのかが一つの課題となるだろう。
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    投稿日:2018.11.23

  • reinou

    reinou

    このレビューはネタバレを含みます

    2012年刊行。
    著者は大阪大学法学研究科准教授。

     過日、大阪市の住民投票で否決された大阪都構想。
     本書は投票前の段階ではあるが、大阪を定点とし、都道府県と市と国、地方自治の過去と現在、そして未来を語った書だ。

     私自身、大阪をはじめとする地方自治体の在り方・将来像について、大阪都構想はもとより、さほど関心を持ってこなかったツケが本書読破で来てしまった。
     そんな読後感である。

     すなわち、
    ① 都道府県、市、さらには政令指定都市の権限・財源・政治運営の仕組み、異同につき十分な理解をしていない。
    ② 現実の大阪市、大阪府、府内の他市の財政状況につき情報を入手していない。
    ③ 二重行政の問題の理解不足の露呈。
     かかる個人的な問題点を把握できただけでも良しとすべきか。

     ただし、
    ① 大阪都構想(あるいはこれに類する制度改革・政令指定都市の解体)で、無駄の削減が可能か。本書で言われる無駄は、結局、バブル期・バブル崩壊期の事業計画の甘さに起因しているだけではないか。
    ② 人口減少が前提となる中で、これまでの同様の府市の対立構図が維持できるのか。共倒れにならないか。
    ③ 結局、国との税源分配の問題に帰着しないか。
     という想念も湧いたところである。

     さて、かなり多様な視点で書かれている本書。対立軸としては以下の如し。
     ① 大阪府と大阪市(都道府県と市町村)
     ② 東京と大阪
     ③ 大阪と他の中核都市
     ④ 京阪神
     ➄ 地方自治体と国
     ⑥ 都市と農村
     ⑦ 市街地と郊外
     ⑧ 大阪等日本の都市と他国の都市

     あるいは、別の切り口として、
     ⑴ 戦前と戦後、そして平成時代の史的変遷
     ⑵ 官僚的側面と納税者という地位的・人的側面、
       あるいはそれらの対抗関係
     ⑶ 選挙制度を含む政治面と、
       税務・予算分配という財務面、
       都市問題(かつては公害・上下水道などのインフラ整備。現在は高齢者・医療介護など)

    という3つの側面という多様な視座が、本書ではキーとなっている。
     これらは、かなり混乱させがちな多様性レベルであり、確かに良くまとめ上げたなぁ、という印象の一方、流石に判り難いよ、という印象とが混在する。

     要再読か。

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    投稿日:2016.12.03

  • nyankoteacher

    nyankoteacher

    160213 中央図書館
    別に橋下徹のビジョンを批判したりする内容ではない。地方都市の政治論である。「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」の相剋が、首長の意思を引き裂き、国家と大都市の軋轢につながる。

    投稿日:2016.02.13

  • horinagaumezo

    horinagaumezo

    「大阪都構想」が注目される「大阪」を題材に、近代以降の大都市行政の歴史を丁寧にたどりながら、日本における大都市の問題を論じている。
    大都市をめぐっては、戦前から現代に通じる3つの対立軸―市長VS地方議会、東京VSその他の大都市、大都市VS全国(あるいは農村)―があるとし、それにそって分析を進めている。また、大都市行政に普遍的なものとして「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」というトレードオフの関係をもつ2つの論理の存在を指摘し、「大阪都構想」にもその2つの論理が内在していると指摘する。そして、それらをいかにバランスさせるかが重要であると主張している。
    本書は、大阪の都市行政(市政・府政)の歴史、そして、それを通じての日本の都市行政の歴史が非常によくまとまっていると感じた。また、大阪都構想を橋下徹氏の個人的なパーソナリティと結びつけるのではなく、政策として客観的に分析しようとしているのにも好感が持てた。
    個人的には、大都市は、日本経済、また地域経済を牽引する重要な役割をもった存在だと考えており、一元的なリーダーシップによって企業体としての都市全体の利益を見据えた経営を目指す「都市官僚制の論理」がより強化されるべきだと思う。その点で、大阪都構想というのは都市としての力を強化するための一つの解答になりうるのではないかと感じた。著者は、「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」のトレードオフ性を強調するが、私は、2つの論理は都と特別区等との役割分担により両立可能なのではないかと思う。
    「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」をどのような手続きでバランスさせるか、という点についての、著者の提案である「都市における政党政治の創出」については、興味深くはあるが、地方自治に一律に国政のような政党政治を持ち込むことにはいささか懸念がある。ただし、大都市に限定して、地方議員選挙に比例代表制を導入したり、議院内閣制的な仕組みを導入することは検討に値すると思う。現行の地方自治法は、大都市であっても、小規模な町村であっても、一律に同様の二元代表制を規定しているが、本書を読んで、それぞれの自治体の性格に応じて、統治システムを選択可能にする多元的な自治制度が望ましいという思いを新たにした。
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    投稿日:2014.08.21

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