【感想】守備の極意(上)

チャド・ハーバック, 土屋政雄 / 単行本
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • エスカイア本八幡

    エスカイア本八幡

    ウィスコンシン州にあるウェスティッシュ大学の硬式野球部が舞台となっています。小説の題名はアパリシオ・ロドリゲスという守備の名手が書いた本『守備の極意』から来ています。アパリシオは18シーズンセントルイス・カージナルスでプレーしたとあるので、実在した選手と思い込んで読んでいました。他の小説でもよくMLBの選手の名前がでてくるのでそう思ったのです。ここですこし考えました、作者が作り出した架空の選手ではないかと。フィクションなのでまったく問題ないのですが、そう考えると『守備の極意』の中身もちょっとおもしろいです。

    例えば、
    59「ゴロをさばくことは寛大な行動であり、理解の体現である。ボールに向かって動くのではなく、ボールとともに動く。下手な守備者は敵に立ち向かうようにボールに突っ込む。これは敵意である。真の内野手はボールの通り道を自己の通り道とし、それによってボールを理解し、自己を無にする。自意識こそすべての苦悩と下手な守備の根源である」
    とやたら文学的で実用書としては役に立たない表現となっています。

    アパリシオ・ロドリゲスという野球選手、ウェスティッシュ大学、応援歌まであるハープーナズという野球部そして野球教則本『野球の極意』の中身。
    いろんな小説がありますが、小説家が細部にこだわって、読者の目に届かないところまで作り上げると物語がものすごく豊かになるという例だと思います。読者はそのへんのところは気にしないで楽しめば良いので気が楽です。

    野球とならんで小説の核となってくるのがハーマン・メルビルの『白鯨』です。ウェスティッシュ大学周辺はそのなりたちから『白鯨』だらけなのが楽しい、『バートルビー』という酒場もあります。メルビルの長編小説『白鯨』と短編小説『バートルビー』はよくアメリカ文学の中に登場します。野球とメルビルの小説は多くの(主に白人だけかも)アメリカ人の生活の中心にあるのでしょう。
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    投稿日:2023.04.07

  • Mira

    Mira

    2年前に原書で読んで、今回は訳書で再読。
    再読すると、アパリシオの『守備の極意』が小説全体のテーマになっていることに(ようやく)気づいて、「ああ!」となる。この「守備の極意」の文章、冒頭の練習場面の文章など、まさにきらきらしていてかっこいい、達意の訳文。原文ではあまりに時間をかけすぎて、かえって味わいきれなかったところを、たっぷり愉しみながら上巻を読み終えた。続きを読む

    投稿日:2014.05.30

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