【感想】誤解でございます

松永美穂 / 清流出版
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.0
0
1
4
1
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • ahddams

    ahddams

    ドイツ文学者・翻訳家である著者の初エッセイ集。
    略歴やプロフィール写真を見るといかにも才女といった風情だが、ちょっぴり妄想癖があったりと可愛らしい一面もお持ちのようで…(にやり)『へんてこ任侠伝』(本作に収められているエッセイの一つ)ではその妄想癖が炸裂、オチがきれいに収まらないところも松永氏らしくて推しエピソードとなった。ちなみに「続編」もある笑

    おっとりした印象の反面、たくましい一面も兼ね備えられている。
    周囲からのサポートがあったとは言え院時代は2児の子育てに追われ、その後は留学のため子供達(+お母様)とドイツに長期滞在された。留学前には国際免許を取得されていたという。(どひゃー)

    タフなマインドにも感服したが一番凄いと思ったのは、「もし〇〇していたら今の私はいない(別の私がいて、それはそれで良かったかもしれないけど)」という彼女独自の視点。
    「今の私はいない」でストップせず、別の世界線を生きていたであろう自分も尊重する。何てことない一文だろうけど、まさに雷に打たれたような衝撃だった。こういう視点、欲しい!


    『校閲者は偉大である』ほか、翻訳家さんの仕事にまつわるエッセイはやっぱり興味深い。ただ訳すのではなく、作品の世界観を崩さずに翻訳家ご自身の言葉でアウトプットまでしなきゃいけない。更に作品によってラテン語やフランス語が混じっていることがよくあるらしい。(ドイツの方言も然り…)

    ライプツィヒの書籍見本市見聞録も良かった。(「ライプツィヒ ブックフェア」で検索すればヒットする)市では書籍(コミック含)の販売だけでなく原作者による読み聞かせから質疑応答コーナーまで設けられている。
    見本市以外でも都市部では日常的に作家による朗読会をやっているみたいで、読書好きにとってまさにドイツはユートピア!一人活字を追うのも楽しいが、本の言葉があちこちから聞こえてきたらもっとワクワクすると思う。
    思えば作品に多言語が溢れているのも、読書文化が豊かな証拠だったりして。


    「目が見える限り、ずっと本を読んでいたい」
    "通訳翻訳WEB"というサイトのインタビューで松永氏はこう語っている。
    読書大国に引けを取らず、氏も幼い頃から大の読書家。今のお仕事はその読書好きから高じたようなもの。東独時代の作家C.ヴォルフのメタファーに満ちた原書を読み解いた時は、とにかく楽しかったという。

    妄想力がたくましいのも読書の賜物?…という戯れ言はさておき、本が氏の人生を切り開いてくれたのは確か。そんな彼女が手がけてきた翻訳本も俄然読みたくなってきた!
    続きを読む

    投稿日:2022.06.15

  • 花鳥風月

    花鳥風月

    『朗読者』が初めて読んだ新潮クレストという人はけっこう多いんではないか? かくいう私がそうなだけなのだけど、これはその『朗読者』の翻訳者の松永さんのエッセイ集である。この本、ブクログに来なかったらたぶん知らずに見過ごしていたと思う。出会いに感謝。

    学生から「みほちゃん」と呼ばれてしまう松永さんは、自分を「おまつ」と名付けて任侠の世界の妄想に走り出す、なかなかラブリーな方である(TVで藤井隆がマシューに扮していた頃、松たか子のことを「おまつ」と呼んでいたことを思い出した。全然関係ないけど)。 で、じゃあお嬢様かと思いきや冒険好き、好奇心たっぷりで、娘が旅先で現地の人が持って来たヤギの死体を一緒にさばいて食べたりした(娘なにげにすごい)、というエピソードを聞きつけるや、自分も負けじとアフリカに繰り出す、といった始末である(あんたも行くんかい!(笑))

    各エピソードは平易な言葉で綴られ、アカデミックで高尚な感じはほとんど無い(失礼)である。面白いけど笑いをとりにいっている感じはない(いや、とりにいく必要はない)。天然さんですね。でも経験上こういう人は事務処理能力が高いような気がするけど気のせいか。

    素直な筆致なのでエピソードによっては追体験するような感じになった。9・11のテロが起こった時に、ドイツにおられた時のことの文章などはその体験がありありと目に見えるような感じで不思議に印象に残った。「たぶん本当に印象に残ったんだろうなあ」と思わせるからだろうか。

    多和田さんの『尼僧とキューピッドの弓』を読むのが楽しみになってきた。100周年書き下ろしだからうかうかしてると文庫になってしまうかも… 単行本は買ってあるというのに…
    続きを読む

    投稿日:2012.07.01

  • 雨兎

    雨兎

    朗読者の翻訳者。
    現代ドイツ文学の大学教授。
    ドイツ留学したり書評書いたり。
    同時期にひとり百物語の立原透耶(中国語専攻の大学の先生)を
    平行して読んだためどっちが誰だか
    分からなくなった。

    著者近影を見れば可愛らしい人なのに
    結構運動されるのだそう。
    大学生のときバレーに打ち込み
    バレー部のコーチと学生結婚(!?無計画……)
    続きを読む

    投稿日:2011.04.19

  • orcaorca

    orcaorca

    タイトル買い。
    帯に、

    「あるときからエレベーターに乗るたびに、「5階」が「誤解」と聞こえるようになってしまった。同僚に打ち明けると、その人は心配そうにわたしの顔を見つめ、「それは病気です。翻訳者がかかる病気ですね」と言って降りていった……。」

    とあって、わたしは翻訳家でもなんでもないけど、
    会社のエレベーターが「5階です」というのが
    いつも「誤解です」にきこえて笑いそうになってしまうので
    あ、おんなじこと思ってる人がいる、と思って買ったのでした。


    ただ、うしろ帯に「留学」のことが書かれていたので、そのときの話を中心にしたエッセイかと思ったら、そうでもなく、そこはちょっと期待と違った点。

    でも、内容はおもしろかったです。ドイツ語翻訳で、『朗読者』の訳者といったら勝手にもっとシリアスな方を想像していたら、ぜんぜんそんなことはなく(もちろん良い意味で)、楽しく読み進めました。
    続きを読む

    投稿日:2011.02.13

  • よめ

    よめ

    装丁に惹かれまして。松永さんの事を全く知らずに読んだ1冊。エッセイの中で松永さんと言う人物像がボンヤリと浮かんできました。何歳になっても、興味を持ちチャレンジする事って良いな、と。

    ええと、ええと。ドイツの事に全く興味がなく、世に出版されている翻訳された本を殆ど読んだ事の無い私がこのエッセイを読んで良かったのか?と。続きを読む

    投稿日:2011.01.28

  • 柴犬ミミ

    柴犬ミミ

    エッセイ集なんですけど、なんだか「知的」な雰囲気が漂っています。気持ちよく読めます。そして、著者に対して勝手に親しみを感じてしまいました。この本を通して、新しい音楽や本など、さらに自分に広がりを与えてもらいました。たとえば、CD「エウミール デオダートのツァラトゥストラはかく語りき」をさっそく聞きたくなり手配しています。数冊の書評ものっているので、その本も今度読んでみようかと思っています。続きを読む

    投稿日:2010.10.07

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。