【感想】国際政治とは何か 地球社会における人間と秩序

中西寛 / 中公新書
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
5
7
4
2
0

ブクログレビュー

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  • moto

    moto

    このレビューはネタバレを含みます

    著者は、「国際政治」を3つの位相で捉える。すなわち、「現にある秩序としての主権国家体制と、可能な秩序としての国際共同体と、理念としての世界市民主義」である(p. 266)。

    そして、これらの理念系を軸として、安全保障、政治経済、として価値意識の分析を行う。極めて幅広いイシューを扱いながらも、そうした問題への対処には、あくまでも主権国家体制の確立が肝要と解く。著者のスタンスとしては、リアリズム、それも穏当な古典的リアリズムと言ってもよいだろう。

    内戦や地域紛争であったり、あるいはグローバル化の萌芽であったりと、出版当時(2003年)の時代状況が反映されている箇所も認められる。一方で、主権国家体制に重きを置こうとする姿勢は、十分現代にも通ずるものであろう。

    また、序章及び各章において、古代、そして近代の政治思想を参照している箇所が多い。西洋政治をより深く学ばなければと感じた。特に、精神的・内面的な「ギリシャ的なもの」と、普遍主義的・技術的な「ローマ的」なもの、という対比は、目から鱗であった。

    「古代の政治のあり方が今日の我々に示唆を与え続けるのも、現在を見るときに我々はさまざまな介在物に目を奪われがちなのに対して、古代の政治はより単純で、それゆえに政治の本質を直接に映し出しているからではないだろうか」(p. 214)と著者は指摘する。

    主権国家体制を軸としながらも、あくまでも人間の営みとして捉えるという国際政治観については、是非結章を参照されたい。

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    投稿日:2022.02.27

  • hikaru

    hikaru

    イギリスの文筆家フォースターの「直接知っている相手でなければ愛せないのです。そしてそれほど多くの相手を知ることが出来ません」っていう引用。
    だから「愛」で秩序を形成する代わりに「寛容」を持って文明を築くべきだと説いて、人間的な秩序と国際関係を照らし合わせてた。

    国際政治の内包する、安全保障、世界経済、文化的共存の根幹にあるのは「政治は人と人との営み。」

    平和や秩序の構築の美しさを言語化するのってすごいなぁ。
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    投稿日:2020.05.24

  • 波瀬龍

    波瀬龍

    【由来】
    ・「時代を見つめる『目』」

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

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    投稿日:2018.10.28

  • Masami

    Masami

    ちょっと読みにくかったが、なかなか面白い観点も多くて勉強になった。
    ・独善的な行動パターンが、強固な味方を持ちにくく、したがってそういう政策が国際政治においてもちうる影響力も限られ、最悪の場合、孤立に導きかねない。
    などなど
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    投稿日:2017.02.11

  • nekosky

    nekosky

    国際政治の、発生から現在までの変遷を含めて分かりやすく解説してある。
    若干観念的に感じる部分もあるが、実際の事象を交えてあるため、よく理解できた。
    とかくドラスティックな改革が支持されがちな現在の情勢下、主権国家が徐々に形態を変化していくのに伴って、国際政治も発展していく、という、保守的というよりは現実的な考えにも共感できた続きを読む

    投稿日:2016.05.11

  • haru-reo

    haru-reo

    国際政治の基本的考え方や体系的に理解するうえで参考になった。外交・安全保障は標準的な考え方が身についていないと、極端な感情論に振り回され民主主義がうまく機能しなくなる危険性がある。
    軍事力は自らの意志を他者に押し付け、また逆に他者からの意志を押し付けられないための役割を果たす。軍事的威嚇に屈せず、簡単に既成事実をつくらせないようにする抵抗力、抵抗の意志を担保する軍事力、それは相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる。
    国家が将来の不安から安全を追求し、そのことが他国の不安をいっそう駆り立てて相互恐怖の悪循環に陥る安全保障のジレンマがある。これを解き難い矛盾であることを認め、それを制度化していくことで国家間にある程度の秩序をもたらそうとした。その代表的な政策のひとつが集団的自衛権である。望まない対立に「巻き込まれる」リスクや助けてほしいときに助けてもらえない「見捨てられる」リスクがあるが、味方を増やし敵を減らす安全保障協力が発達し、今日ではもっとも一般的な安全保障政策となった。好き嫌いはともかくとして現実に目をつぶってはよりよい世界にはできない。
    国際政治の場は現実と理想、各国がさまざまな利害を反映し妥協点を見出すという多元的な過程をとる。いずれか一つの味方で割り切ることの危険性があり、倫理的な安易な選択は存在しない。妥協を図ることを阻害するのは独善である。独善は妥協を生み出さない。正義は我にありと信じ、他者をあげつらって自らの独善を正当化する。自らを客観視する眼に欠け精神的ゆとりがなく妥協を生み出さない。
    理想と現実、自国の利益と世界的な公共的な利益のために行動する要請の間で国際政治は妥協を図っていかなければならない。おもしろくないかもしれないが、この世界は妥協の産物である。
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    投稿日:2015.02.10

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