【感想】人間回復の経済学

神野直彦 / 岩波新書
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
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ブクログレビュー

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  • kamitako

    kamitako

    日本社会事業大学現学長である著者がバブル崩壊前後の日本経済施策をバッサリと切り捨てる。20年近く前の論旨が今の状況にも当て嵌まってしまっていることを実感せずにはいられない。
    「財政民主主義といわれるように、財政は民主主義にもとづいて運営されなければならない。「主」とは支配する者を意味する。民主主義とは民つまり統治される者が、主つまり支配する者になることを意味する。」
    「知識社会における生産性の向上には、二つの要素が重要になることがわかる。ひとつは、個人的な知的能力である。もうひとつは、知識を自由に与えあう人間のきずなである。前者の個人的能力と、後者の人間のきずなをあわせて「知識資本」と呼ぶと、知識社会では知識資本の蓄積が生産を決定することになる。」
    「自由時間とは本来、人間が人間としての幸福を味わう時間である。人間とふれあい、愛しあい、学びあい、ともに遊ぶ、それによって人間の文化的豊かさを体験しつつ、人間としての力を発揮して人間の文化を創造する時間である。」
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    投稿日:2020.04.28

  • nova

    nova

    読み終わりました。
    読みやすい方だと思います。

    10年位前に書かれた本だから、今はどう考えていらっしゃるのかしら~?なんて思いがわきました。

    スウェーデンの政策について、今は?というのも気になりました。


    知識社会ということを改めて考えさせられる内容でした。
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    投稿日:2012.07.03

  • hjkhjk001

    hjkhjk001

    ・新自由主義的な発想に基づく日本の構造改革は人間的な能力を必要としない職務を増加させることによって、コストを低下させる改革である。

    ・ケインズ的福祉国家は、現金給付による所得再分配で社会的セーフティネットを張り、公共事業を実施して需要サイドから経済システムに介入するものだが、もう時代にそぐわなくなっている。知識資本を蓄積して、イノベーションを巻き起こす、供給サイドからの経済システムへの介入が必要となる。

    などと偉そうに述べているが、考察が希薄で説得力がまったくない。
    人間回復、人間同士に絆などの美辞麗句を随所に挟んで議論をごまかしているだけのように思われる。
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    投稿日:2011.12.24

  • bax

    bax

    このレビューはネタバレを含みます

    [ 内容 ]
    好況時は過重労働、不況時はリストラ。
    私たちはまるで経済に従属して生きているかのようだ。
    これは本来の姿なのか?
    現在の閉塞状況は「構造改革」で打開できるのか?
    いまこそ人間に従属する経済システムをつくる絶好の機会であり、それが閉塞打破のカギにもなる。
    社会、政治、経済の三者のあるべき形を提案する、斬新な経済社会論。

    [ 目次 ]
    1 経済のための人間か、人間のための経済か
    2 「失われた一〇年」の悲劇
    3 行きづまったケインズ的福祉国家
    4 エポックから脱出できるのか
    5 ワークフェア国家へ
    6 経済の論理から人間の論理へ
    7 人間のための未来をつくる

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    投稿日:2011.04.24

  • あかべこ

    あかべこ

    小泉政権時代のきわめて強権的な構造改革が行われていた時期に、その改革に異を唱え、衰退していくばかりの日本が進むべき方向を示した本。

    著者によれば、サッチャリズムに始まる新自由主義は、19世紀に起こった構造改革の根底に流れていた自由主義思想とは、似て非なるものであったという。
    古典派経済学に基づく自由主義思想は、それまでの中央集権・私的国家からの脱却であり、言うなれば国家の民主化を進め、市場を開放することにその本質があった。ところが新自由主義思想は、第2次大戦後、そろって福祉国家を目指した大国が経済的に行き詰ったところで打ち出した、市場の創成を目的とした思想であった。結果、所得の低い者ほど租税負担率が高くなる構造を生み、人頭税を導入したところでサッチャーは指導者の立場を追われる。こうした不幸な過ちを、米国、日本は先例に忠実に再現しようとしているのである。

    著者の主張に目を向けると、人間を「経済人」としてとらえる古典派経済学、旧来の「遠い政府」による所得再分配を行うケインズ的福祉国家を見直すべきであるとする。人間は「知恵のある人」であり、人間的な生活のために経済活動を行うべきであって、所得の再配分は自治体の責任において行う(なお足りない分については中央政府がその責を負う)という社会の構造を目指すべきとしている。

    モデルとしてスウェーデンでの教育制度、福祉制度等に触れられており、かの国の社会を、国民の知識の向上を国を挙げて行う社会という意味で「知識社会」と名付け、これこそ目指すべき社会であると説く。

    ただし、国土面積こそ広くはあるが人口も経済規模もまったくことなり、また国の成り立ちや意識(特に国防に対する)が大きくことなっている日本において、類似の改革ができるかと考えるとやはり疑問符が付く。とにかく現在の日本は、地方が疲弊している。福祉を「参加型」のものにすると言って地方自治体の責任の下で大規模な福祉政策を進めることはかなり難しくなってしまったのが現実だろう。市場原理の闇は根が深く、すでに日本経済の深部まで侵されてしまった。私自身、地方の出身だが、地元に帰るたびにさびしくなる街並みには毎度驚きと悲しみを覚える。しかし、その地域に住む人は、すでに新しい経済構造に順応しているのだ。この現実はどう打開できるのであろうか。老人や障害を持つ人は郊外の大型ショッピングモールに一人で買い物に行くことが困難なのである。

    どうしても大学者の崇高な理論を語られている感がぬぐえないまま、読み終わってしまった。本書の締めくくりは非常に甘美な結論となっているのだが、途中の説明も概念的な部分が多く、門外漢である私にはやや難しく感じられたことが、さらに著者との距離を感じることにつながったようにも思える。
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    投稿日:2011.02.23

  • rssr

    rssr

    日本の歴史を省みない政策により日本の危うさが語られている。
    印象が強かったのは対照的に取り上げられた知識社会を実現するスウェーデンについて。
    例えばカルマー工場は流れ作業ではなくチームで一つのものを作り上げる。これにより「何を」作っているのかを意識でき担うことができる。これは本著の中で語られたマズローの欲求の目的を持つことをうまく充足させた考え方であるといえる。
    また、学習サークルも魅力的だ。参加者の意思によって幅広い学習プログラムを受けることができる。参加は有料だが5人以上など一定の条件をクリアすれば補助金も受けられる。
    日本に対して厳しい目を向けていると思いきや結びには励ましの言葉を綴っている。確かに悲観的な見方ばかりでは社会の成長は滞おる。しかし2002年にかかれたこの本の日本への指摘は現在でも当てはまりむしろ悪化の一途を辿っている気がしてならない。不安を覚えつつも自分たちが何ができるかについて考えさせられた。
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    投稿日:2011.01.19

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