【感想】ロボットとは何か 人の心を映す鏡

石黒浩 / 講談社現代新書
(45件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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ブクログレビュー

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  • twshayafune

    twshayafune

    「ロボットも心を持つことができる」と考えている石黒先生。
    心とは、自分でもどこにあるのかわからない、実体のないものである。だから、「人に心はなく、人は互いに心を持っていると信じているだけである」という言葉からこの本は始まる。
    でも私は、人間には心があると信じている。
    ロボットがどんなに人間に似ても、どれだけ精巧にプログラミングされても、心を持つことはないのだからそれが人間とロボットとの違いだと思ってきた。
    でもこの本を読むと、ロボットに心を持たせることができるのではないかと思わされる。
    心とは何か、それを突き詰めて考え、それが解明されれば、ロボットに心を持たせることはできるのかもしれない。
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    投稿日:2019.11.14

  • kawaakami

    kawaakami

    外連味溢れる愛すべき教授。なにが素晴らしいといえば、専門外の部分での不用意な発言である。しかも、それが、最もらしくて、とても刺激になる。新書というフォーマットを熟知した著作と言える。新書は論文ではないから、自分の思い、思い込みを発表することは適しているし、みんな論文なんて別に楽しくないから読みはしないのだ。続きを読む

    投稿日:2019.07.15

  • minoreal

    minoreal

    借りて読んだ。
    平田オリザさん演出のロボット演劇の章を興味深く読んだ。もう10年近く前に第1刷が発行されているが、ロボット演劇のシリーズは去年(2018年)にも再演されたようなので、次の再演情報を得たら観に行こうと思う。
    エピローグはいろいろとつっこみどころ満載なのだけれど、10年も経てば世の中もいろいろと変わるので、細かくは触れない。その後、石黒先生の考え方が何か変わったのか、研究内容はどう移り変わったのか、気にはなっている(けれど、たぶん追わないだろうな)。
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    投稿日:2019.06.06

  • reinou

    reinou

    このレビューはネタバレを含みます

    2009年刊行。著者は大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻教授で、人間酷似型ロボット研究の第一人者。認識とは、知覚とは何か、心とは何か。そして人間とは何か。コンピュータービジョンの研究の途上、「体」の持たないコンピューターに真の認識は可能か、との疑問から、ロボット研究に没入。本書は、その思索遍歴、研究の試行錯誤歴を、割合つらつら書き述べたエッセイ。ロボットが人間に似せられれば似せられる程、それは人間を映す鏡、つまり人間の認識や感情を投影し変化させる存在と化す。人が受ける影響は無からでも生じる。
    愛情や信頼感、友情といった複数人の間で成立するに違いないと考えられている人間の感情や精神活動すら、それが「無」と言わざるを得ないロボットとの間でも成立する可能性すら想起できる内容。面白さと居心地の悪さを併有させた読後感である。PS.①多数の筋繊維のある人間の動きはゆらぎの存在が不可欠。「ゆらぎ」。②人間社会にロボットが参加するには、社会性の基礎となる要素の実装が必要。その一つが生殖機能。だが要らぬ誤解を招きかねず、悩みの種。

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    投稿日:2017.01.23

  • knkt09222

    knkt09222

    その風貌から一種のマッドサイエンティストを想像していたのだが、著者は「ど」がつくほどに真面目で誠実。
    だからこそ、世界観を根底から覆すような大きな真理を発見するわけではない。
    ものすごい労力をつぎ込んで、想像しうる範囲の知見を得、考えを得る。
    しかしそれはさらに大きな疑問や研究テーマに結び付く。
    そもそも人間という存在が謎で、鏡が迷宮であるならば、落着など永遠に得られないのだ。
    もっともっと根源的な謎が引きずり出される。これが本書の熱いところ。
    視覚、表面、皮膚から、社会や心へのシフト。
    技術論ではない。誠実に積み重ねられた研究からはじき出される謎の深化。哲学論だ。
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    投稿日:2016.07.15

  • 湖南文庫

    湖南文庫

    人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者が、自らの研究開発の過程と、そこから生まれた「人間とロボット」についての考察をまとめたもの。2009年発刊。
    著者が2006年に作成した、自身をモデルにした遠隔操作型アンドロイド「ジェミノイドHI-1」は世界中の注目を集め、2007年に著者は英コンサル会社による「生きている世界の天才100人」の26位(同順位には、ダライ・ラマ14世とスティーブン・スピルバーグ)に選出された。
    著者はもともとコンピュータビジョン(カメラから得られた画像をコンピュータで解析し、その画像に何が写っているかをコンピュータに認識させる研究)を研究していたが、コンピュータが人間と同等の認識能力を持つためには、人間と同じように、環境の中で動き回り、物に触れる体が必要になるとの考えから、ロボットの世界に研究の範囲を広げたのだという。
    そして、人間型ロボット「ロボビー」(1999年)、自分の娘(4歳)のアンドロイド「リプリーR1」(2001年)、NHK女性アナウンサーのアンドロイド「リプリーQ2」(2005年、愛知万博に出展)、「ジェミノイドHI-1」(2006年)等を次々と作成する過程で、著者の問題意識が、「人間らしさとは何か?どのようにロボットで再現するか?」から「ロボットは心を持てるか?」、「心とは何か?」という、認知科学や脳科学の研究領域である、より深いものに変わっていったことが綴られている。
    具体的な研究実験の結果で興味深かったのは、周りの環境・反応に合わせて操作者が指令を送る、遠隔操作型の「ジェミノイドHI-1」を使った実験で、第三者にジェミノイドの頬を突かれると、操作者が顔を避けようとしたり、「やめてくれ」と叫んだり、ジェミノイドを自分の体と錯覚するような反応を示したということである。著者はそれを「人間の体と感覚は密につながっていない」からと分析している。
    「心(意識)とは何か」、「心(意識)はどのようにして生じるのか」というテーマは、現代科学の究極のテーマのひとつである。そうした中、アンドロイドの人間らしさを向上させるためには、人間についての理解を深めなければならず、また、開発したアンドロイドの性能を人間社会で試した結果をフィードバックすることにより、認知科学や心理学が進化していくことも事実であり、今後、相互の研究領域オーバーラップは進んでいくのだろう。
    (2015年7月了)
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    投稿日:2016.01.16

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