【感想】ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

滝本竜彦 / 角川文庫
(108件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
14
33
35
9
2

ブクログレビュー

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  • ぱ

    非常に物語的だった。その辺から人間を拾ってきて、箱に〈限りなく死に近いもの〉と共に投げ入れてどうなるかという実験的な感じ。そんな無関係な人達があがくのがたまらなくエンタメ性があり、幸せだ。人間どうでもいい派のみんなは読むといいです。続きを読む

    投稿日:2024.03.25

  • rock12

    rock12

    さらっと読めておもしろい。
    普通の男子高校生の日常。テストが嫌だし勉強したくない。
    なぜか全力で戦っている女子高校生と出会う。カッコいいとこを見せたいが戦力は彼女の方が上。
    バンドをやりたい友達が作った歌が印象に残った。続きを読む

    投稿日:2023.02.09

  • 永杜

    永杜

    万引きをした帰りに遭遇したのは、膝を抱えて座って
    チェーンソーを持った男と戦う少女。

    軽犯罪しまくっている主人公。
    その友人も、軽犯罪者。
    犯罪に、軽も何もない、と言われればそれまで。
    人の群れから外れている俺ってかっこいい! な男?
    ものすごく現実逃避してるだけでは、とも
    言えなくもないです。

    読んでいくと、チェーンソー男と少女の関係が
    突如として語られて分かります。
    ファンタジーにありそうな設定だな、と。
    続きを読む

    投稿日:2016.05.16

  • sincosvsign

    sincosvsign

    このレビューはネタバレを含みます

     燃えるだけが戦いじゃない。
    『NHKにようこそ!』で有名な小説家、滝本竜彦のデビュー作。
     非常に面白かった。滝本竜彦はエッセイのみを読んだことはあるが、随分と破滅的な駄目人間という印象だった。この小説を読み終わった後もその印象は変わらなかったが、小説家としての手腕に関しては舌を巻いた。こういう小説は若い時にしか書けない。若い時にしか書けないものを、ありのままに書いている。その真っ直ぐな素直さと透明感のある世界観が非常に優れていた。荒唐無稽なことは問題なのではない。あまりにも素直な小説であることが、重要なのだ。

     あらすじ
     山本陽介は下宿で一人暮らしをしている高校生である。ある日、気紛れで万引きをするが、その帰り道で謎の美少女、雪崎絵理と出会う。降り積もった雪の中で絵理が待っていたのは、チェーンソーを持った不気味な不死身の男だった。
     陽介は絵理からチェーンソー男と戦っていること、相手が不死身であることなどを聞く。何もない日々に嫌気が差していた陽介は、単純に「女の子を助けたい」というヒーロー願望から絵理と共にチェーンソー男打倒に奮闘することとなる。だが実際には陽介は戦闘の役には立たず、チェーンソー男が出現する地点への自転車漕ぎとして働くこととなる。やがて陽介は日々続く深夜の死闘故、成績を落とし始める。絵理と二人きりの勉強会を画策するも失敗に終わる。陽介は追試に怯えながら、親友である渡辺の作曲の手伝いなど、日常を過ごしていく。日常の中、バイク事故で亡くなった親友能登弘一のことを偶に思い出したりもする。だがある日、陽介は東京にいる両親から、引っ越して来ることを命じられる。転校を絵理に告げたその日から、チェーンソー男は威勢を増す。絵理の敗北と死を危惧した陽介は、絵理に戦いをやめるよう幾度も説得を試みる。話し合いの最中、絵理が語ったのは家族の死とチェーンソー男の因果関係であった。チェーンソー男とは、この世の悪の具現なのだと。チェーンソー男を葬らない限り、不幸はなくならないと。しかし、不幸とは初めからこの世にあるものだという洋介の言い分に、絵理は結局納得し戦いをやめることを約束する。転校前々日、陽介は渡辺が初めて作った曲を聴き、生前の能登が書いたという詩を読む。その感傷と酒の勢いから、陽介は転校をやめることを親に告げる。
     転校を取りやめたことを絵理に伝えようとするが、陽介は絵里がたった一人でチェーンソー男に戦いを挑むと書いた置手紙を発見してしまう。バイクを盗み、絵理の元に駆けつける陽介。バイクでチェーンソー男を轢き殺し、能登に対し叫ぶ。「生きている俺が羨ましいだろう!」

    『ノルウェイの森』といい、『世界の中心で愛を叫ぶ』といい、青春恋愛小説には主人公とヒロイン以外の何者かの死が序盤で語られることが多い気がする。そこに象徴的な意味や技術的な意味があるのかは分からないが、この小説はその何者かの死を最大限に尊重していた。少なくとも男女が出会うためだけの道具にはしていなかった。主人公、山本陽介とヒロイン、雪崎絵理は共にそこまで個性的ではない。絵理にはナイフを投げて戦う戦闘美少女という設定があるが、設定に過ぎず、本人に個性がある訳ではない。他の友人や教師などのキャラクターも含め、どこかにいそうな普通の人間ばかり出てくるが、中でも最も尖っているのはバイクで亡くなった陽介の親友能登弘一である。何かに怒っていて、何かと戦っていた弘一はその結果バイク事故で命を落としてしまう。飽き飽きとする日常や保身に対する怒りと不信感、世界の悪しき面への憎悪などを募らせ、暴走させた結果であった。能登は主人公の憧れの存在であり、同じくして対比される影の存在でもあった。全く同じ感情を根っ子で抱きながらも、憤る能登とへらへらと笑う陽介は親友でありながらも全く対照的な存在であった。能登の戦いをバイク事故としてバックストーリーとして描き、陽介の戦いをチェンソー男との死闘として本編で描いているが、二つの根底にあるのは誰もが一度は抱き得る、「非日常への衝動」である。どこにでもいそうな等身大の登場人物を描きながら、能登と陽介のスタンスを対比させることによって、「非日常への衝動」への決着の着け方を描いている。
     ストーリーはセカイ系に属するジャンルだが、非常に小規模な形に収まっている。戦闘美少女が主役で、チェーンソー男が実在しながら、警察組織などの社会的要素は一切省かれている。だが小規模故に、セカイ系特有の荒唐無稽さは控え目である。町の中で起こる神出鬼没のチェーンソーを持つ不死身の怪人との戦い。荒唐無稽なのは怪人が出てくるからに過ぎず、二人の関係の進捗は現実的だ。二人しかいない、何らかの小規模な部活で、二人で目標を立てて地道に頑張る物語があったとしよう。その部活と目的を荒唐無稽な暴力的な何かに摩り替えたものが、セカイ系なのである。部活やバイトではなく、暴力的な何かで青春を描くのがセカイ系の肝だ。また暴力的な何かである必然性とは、少年少女が戦う相手が実体の存在しない恐ろしい何か、端的に言えば「日常・現実」といった類のものだからである。「日常・現実」という実体のない相手と戦うためには、仮想敵が必要になる。その仮想敵がこの小説の場合、チェーンソー男なのである。戦争などで国民の士気を高めるために仮想敵を作り、レッテルを張り差別的な物言いで罵るのは常套手段である。日本で有名なのは「鬼畜米兵」、「アカ」などだろう。だが戦争が他国の打倒を目的にしているのに対し、セカイ系は実体のある何かの打倒を目的としていない。故に実体さえも作り上げねばならず、暴力的かつ荒唐無稽な怪人などが生まれるのである。だが逆に、仮想敵を生み出せなかった能登の戦いは、ガードレールに無闇に突っ込むという非生産的かつ衝動的な、「犬死に」と言われても仕方のない不透明な戦いとなったのだ。「敵」という緩衝材のない戦いに挑み死亡した能登に対し、「チェーンソー男」という緩衝材のある戦いに挑んだ洋介は綱渡りはするものの一命は取り留める。逆説的ではあるが、敵がいたからこそ戦いに勝利し生存することができたのである。敵のいない戦いに勝利も敗北も存在し得ないからだ。そこに死が伴うならば、無意味な死となるしかない。だが仮想敵を作り上げたのは、主人公ではなくヒロインの方である。主人公は乗っかったに過ぎない。二人はそういう意味では共犯者であり、チェンソー男に対し絵理は「現実への憎しみ」を、陽介は「日常への憤り」をそれぞれぶつけている。だがこの戦いの勝敗は歪で、現実を認め、日常を受け入れることこそが真の勝利条件であり、チェーンソー男はいないという敗北を認めることこそが勝利であり、チェーンソー男はいると敵対し続けることが敗北なのである。結局、二人の戦いは勝ち得ない「セカイ」に対する蟷螂の斧に過ぎない。だが戦わねば勝ち得たものの価値に気づけないのも事実なのだ。「現実・日常」の価値を知ること。それが此度の戦いの目的だったのである。
     世界観はセカイ系の想像力に由来するが、何より優れているのは青春時代への真摯な視線である。理想化し過ぎず、現実的にし過ぎない。非常に程好い塩梅で等身大の青春を描くことに成功している。ヒロインの挙動や主人公の思想は作者の好みに大きく由来しているが、二人やその他の人物を取り巻く空気は、果てしなく現実の日常に近い。誰もがずば抜けて善人でもなく、悪人でもない。どいつもこいつもどこにでもいる。そのありのままを描けていることに非常に感心した。美化も卑下もされていない青春が素直に心に入ってくるのは、青春の普遍的な部分を上手に切り取ることに成功しているからに他ならない。この小説では、この青春の描写が最も優れている。
     テーマは「現実・日常」への反抗期を題材にしているが、世界観との親和性が非常に高い。自転車に乗って美少女運び、深夜にチェーンソー男との戦いを応援し、帰宅し目覚めて学校へ。そしてまた自転車に、というサイクルがあまりに自然で、違和感がなくなってくる。こういう不思議な日々があっても良いんじゃないか、という気に自然になる。
     文章は大槻ケンヂの影響が多々見られる。特に理想の少女像はほとんど大槻ケンヂの理想に依拠しているようだ。現代的ではないが、滑稽で面白味がある。また文章に凝ったところは少なく、無理なく読むことができる。解説の西尾維新の文章と比べると、読み易さが段違いで驚く。逆にここまでくどい文章を書いておきながら成功した西尾維新の意外性に気づく。
     台詞はヒロインの飾らない感じや、主人公の無理している感じが非常に良い。周りを取り巻く人物も渡辺は変に気取らないし、教師や下宿のお姉さんも変に大人ぶってカッコつけたりはしない。ただ能登だけが浮世離れした物言いをする。
     総合的に見て非常に面白い小説だった。若い頃に読めなかったのが悔やまれる。だが若い頃にはこの小説の巧みさや素晴らしさに気づけなかったかも知れない。先の読めないストーリーや意外などんでん返しなどは存在しないが、等身大の登場人物や世界観、物語を取り巻く空気の素晴らしさだけで一読の価値がある小説である。

    キャラクター:☆☆☆☆☆
    ストーリー :☆☆☆☆☆
    世界観   :☆☆☆☆☆
    テーマ   :☆☆☆☆☆
    文章    :☆☆☆☆☆
    台詞    :☆☆☆☆☆

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    投稿日:2015.12.07

  • bax

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    【本の内容】
    「ごめんなさい。やっぱり私はあいつと戦います」

    平凡な高校生・山本陽介の前に現れたセーラー服の美少女・雪崎絵理。

    彼女が夜な夜な戦うのは、チェーンソーを振り回す不死身の男。

    何のために戦っているのかわからない。

    が、とにかく奴を倒さなければ世界に希望はない。

    目的のない青春の日々を“チェーンソー男”との戦いに消費していく陽介と絵理。

    日常と非日常の狭間の中、次第に距離が近づきつつあった二人に迫る、別れ、そして最終決戦。

    次世代文学の旗手・滝本竜彦のデビュー作、待望の文庫化。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    普通の生活を送る高校生・山本陽介。

    友達が死んだり、期末テストが近かったりして、なんだか落ち込み、高級霜降り和牛二キログラムを万引きしてしまった。

    その格好悪さにさらに落ち込みながらの帰り道、雪崎絵里に出会う。

    有名進学校の制服を着たその女子高生は、チェーンソー男と戦う美少女戦士だった。

    軽い文体、いまどきの若者特有のなんだか冷めた語り口。

    謎のチェーンソー男と戦う美少女。

    こんな紹介だとなんだかなあと引いてしまうとは思うのだが、騙されたと思ってぜひ読まれたい。

    全てを持っているようでも、喪失感がまとわりつき、自分が何を求めているのかもわからない、しかし、夢中になれる何かを持っていなければならないとだめなような世の中に生きる現代の人々。

    陽介も絵里もそんな人々と同じ悩みを持つ一人だ。

    チェーンソー男との戦いに決着するとき真の幸せはあるのか、ないのか。

    本書の結末はある意味自己の許しだなあと思う。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    投稿日:2014.08.27

  • bike-r1z

    bike-r1z

    何気に気になる題名なんで読んでみた。 最初ぐいっと引き込んで中頃の戦いのおざなり感で読み手も失速。 若い頃の先の見えない不安感かな、後半はそれなりに面白かった。

    投稿日:2014.05.15

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