この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
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源氏物語の最後の方、「宇治十帖」と呼ばれる若い世代の話を、荻原規子が編み直して現代語訳したもの。
陰鬱というか、うじうじというか、ややこしいというか、そういう話で有名なあたり。
ああでもない、こうで…もないと右往左往する恋愛心理は、当時の時代相を映してもいるのでしょう。
ある意味では、意外と近代的でもありますね。
光源氏は、波乱の人生を表向きは栄華のうちに終えました。
薫の君(憧れをこめた通称)はその末っ子です。
じつは最後にめとった女三の宮(天皇の三女という意味の通称)が、柏木と不義の関係になってしまい、生まれたのが薫。
薫は薄々そのことに気づいて、誰にも言えない暗い秘密を抱え、まだ若く恵まれてもいるのに出家を思いつめたりする青年になっています。
匂宮(におうのみや)は、光源氏の娘・明石の姫君が天皇に嫁いで産んだ子、つまり光源氏の孫に当たります。
匂宮は登場したときは東宮(皇太子)でもない気楽な身分ですが、明るい性格と華やかな美貌で両親のお気に入り。
歳の近い薫の君に、無邪気ともいえるライバル意識を抱いています。
薫の君のほうがずっと落ち着いているのですが、やはり甘やかされた貴族のぼんぼんというところも(笑)
当時、天皇は生涯その地位にあるものではなく、皇族の間のいわば持ち回り。
弟や甥に十数年ぐらいで譲位する場合もあり、宮様(天皇の子)が何家族も存命したりするのがちょっとややこしい。
都から少し離れた宇治に隠れるように住んでいるのは、そういう皇族の後継争いから漏れた八の宮(前の天皇の八男)と、その娘二人、大君(おおいぎみ)と中君(なかのきみ)。
皇族でありながら忘れられた存在でしたが、薫の君はこの教養ある年上の男性・八の宮に惹かれ、交流するようになります。
八の宮も出家を望んでいるから気が合うのですが、娘二人のことが気になってそれも出来ないと嘆く。
へ~え‥
いえ、当時は、出家することで真に救われるという考えは奇異なことではなかったはず。
ただ、出家しないと決めたのなら、もう少し娘のことをなんとかしてやれば?と言いたくなりますが、まあ薫の君に頼もうとはするわけです。
ところが、そういう父に教育されて育った二人は結婚を望まず、とくに長女の大君は、頑なに薫の君を拒む。
さて?
当時の人は、どんな気持ちでこれを読んだのでしょうねえ。
貴族社会では、結婚は政治と直結、恋愛もそれに準ずるもので数もこなして当たり前。現代とは意味が違うと思います。
そこのところは~現代と同じに考えては気の毒かも。
とはいえ、恋愛感情そのものは意外なほど変わらないよう。社会通念としては最初の妻じゃなくても妻には違いなく、恥ではないんだけど~女心は違うのね。
皇族はやはり上つ方のごく一部ですから、読者が私ならどっちを選ぶ‥などと考えるのも、憧れのうち?
芸能スキャンダルみたいなものでセレブな人も悩むのねって思うのか‥
などと考えつつ読みました。続きを読む投稿日:2018.01.10
このシリーズ、装丁も含めてお気に入りなのですが、
今回は源氏亡き後のお話で、今ひとつ乗り切れず、
返却期限が来てしまったのでした…投稿日:2019.02.05
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