書物について その形而下学と形而上学
清水徹(著)
/岩波書店
作品情報
本とはなんだろうか.そう考えてみると,本というものは本当にただものではない.「究極の書物」などと本気で考える人も1人ならずいるのだ.この物体をはるかに人類史の彼方へと遡り,近代の書物の現場へと下り,そして現代のメディアを俯瞰.興味深い逸話を満載,書物を媒介とした西欧文学史をなす,書物をめぐる究極の1冊.
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商品情報
- シリーズ
- 書物について その形而下学と形而上学
- 著者
- 清水徹
- 出版社
- 岩波書店
- 書籍発売日
- 2001.07.25
- Reader Store発売日
- 2023.12.27
- ファイルサイズ
- 164.3MB
- ページ数
- 392ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
大学3年生のとき。
まずたたずまいに一目惚れして、
ちょっと読んでみたら文章がかっこよくて。
ひとつひとつの単語(日本語だけど)が難しくて、
何が書いてあるのかかなり張り切って読まないとだったけど、…
私の漠然とした本への感覚を、学問風に完璧に武装して代弁してくれてる。
って生協の隅で感動した21歳あたり。
この本で形而下と形而上っていう言葉を得た。
使いこなしたいけど、今だ使いこなせない。
使う場面もないけど。
そんなよそいき感のある言葉っていい。続きを読む投稿日:2009.07.13
このレビューはネタバレを含みます
どんなものにも起源がある。それを知ることもなく、今あるものから恣意的な想像を巡らし、それに立脚して何かを考えることは、ありもしないものを捏造するという点において、ニーチェのいう「遠近法的倒錯」の病を冒…すことに他ならない。たとえば、書物というとき、我々は平べったい直方体をしたものを想像してしまうのだが、それが「遠近法的倒錯」の一例である。
レビューの続きを読む
『ベンハー』などのローマ史劇を思い出せば分かるとおり、かつて、書物といえば、パピルスを糊でつないで巻物状にしたものを指していた。その蔵書数で有名なアレキサンドリア図書館に収蔵されていた図書は、この巻物だった。外形だけではない。貴重なパピルスに余白を作ることを恐れたこともあり、記述法も今とはちがって、語の切れ目というもののないべた書きで綴られていたと言われている。我々が現在書物と聞いて思い浮かべる、章ごとにまとめられノンブルの打たれた形式は、所謂「小冊子(コデックス)革命」を待って初めて生じたのである。
アレキサンドリア図書館がベルガモンの図書館の隆盛に危機感を覚え、パピルスの輸出を止めたことにより、それに代わる羊皮紙という媒体が一般化したことが、現在の書物の形式を呼び寄せたのは皮肉である。重ねて綴じることのできる紙という物の登場によって、ページ検索の道が開かれ、人は、書物を何かを調べる道具として用いることが可能になった。
副題に「その形而下学と形而上学」とあるとおり、『書物について』は書物の形ばかりを問題にしているわけではない。音声言語中心であったギリシア時代を経て、西欧が文字言語中心社会に変化していく契機として「聖書」が登場する。「聖書」には、この世界を書物として解する叙述が頻出する。ユダヤ人こそは「書物から出てきた種族」と言えるだろう。書物が神を象徴する宗教であったればこそ、グーテンベルグ革命を評してユゴーが言った「これがあれを滅ぼすだろう。書物が建築を滅ぼすだろう。」という『ノートル・ダム・ド・パリ』の言葉が予言めいた響きを持つのである。
建築とはノートルダム大聖堂、そのファサードのアーチに彫られた彫刻は、文字の読めない民衆に神の秘蹟を物語る「石の書物」であった。やがて、大量に印刷されたルター訳聖書の普及はカトリックの世界の牙城を揺るがす宗教革命の嵐を呼び起こした。神の言葉が教会から民衆の手へと移るのと、近代の誕生は機を一にしていた。しかし、大量印刷は書物の質の低下という一面も持っていた。愛書家達は、それに危機感を抱き、その反動が世界を一冊の書物の中に閉じこめたいと願うマラルメのような作家を誕生させることになる。
シャルル・ノディエやノヴァーリス、シュレーゲル兄弟、それにマラルメ達の書物に寄せる絶対的希求の悪戦苦闘についての記述は、世界を一冊の書物の中に閉じこめたいというロマン的発想の強さを物語っている。しかし、頻繁に言及される「バベルの塔」の比喩で明らかなように、それらは如何に彫心鏤骨の作業であったにせよ不可能性を追求する試みとして語られるしかない。
「電子革命」の時代、コンピュータのモニタ上で読まれる本は、ページごとに区切られる書物の形態から逸脱し、パピルスの巻物と同じくスクロールする活字の列を上から下に読んでいく形式に戻ったかのようである。形而下的には紙に印刷された書物という形態は、今しばらく残るだろうが、書物という物の形而上の様態は、大きく変化することになるかも知れない。そういう時代を迎えて、書物という物をあらためて考えてみるには、きわめて時宜を得た書物であると言えるだろう。続きを読む投稿日:2013.03.11
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