異邦人のロンドン
園部哲(著)
/集英社インターナショナル
作品情報
飛行機にしのびこみ、ロンドンへの密航を試みた外国人は、過去26年間で13人。いまやロンドン住民の40パーセント以上が外国生まれだ。そのひとり、通算30年のロンドン暮らしになった著者の目から見たロンドンの実像とは? 学校で露骨に現れる人種差別と、それに抗する人たち。両親にだまされてロンドンへ移住したアメリカ人、中国人。日本人を憎み続けるイギリス人。移民、人種や階級差別、貧富の差・・・・・・。さまざまな問題を抱えながら、世界から人を集め続けるロンドンの実像を描く。
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商品情報
- シリーズ
- 異邦人のロンドン
- 著者
- 園部哲
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社インターナショナル
- 書籍発売日
- 2023.09.26
- Reader Store発売日
- 2023.11.30
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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【感想】
本書「異邦人のロンドン」は、朝日新聞GLOBE「世界の書店から」の筆者である園部哲氏による、イギリスでの日常生活を綴ったエッセイだ。園部氏は日本からイギリスに移住し、10年近くロンドンで生活…している。
本書の時間軸は、パンデミック初期の2020年ごろから、コロナが完全収束する直前の2023年初頭ごろまでだ。イギリスではこの間、感染者の爆発的な増加から厳格なロックダウンが数度敷かれており、人と人との交流が消滅した。変わってしまった街角と、ロックダウン下でも懸命に助け合う人々の様子が、心温まる筆致で描写されている。
本書ではコロナの話以外にも、人種差別、貧困、階級といった「イギリス社会の暗部」や、異文化交流、娘の学校のエピソード、お隣さんとの与太話といった「日常」も多く収録されている。
その中で私が一番面白かったのは、イギリスの階級社会にまつわる話だ。
イギリスには、日本国内の「中流層」「上流層」という指標が誤差になるぐらい、絶対的な「階級」が存在する。階級は子ども時代から既に始まっている。英国社会の指導的立場にある人々の過半数は、私立校の出身者(全体の7パーセント)によって占められており、生まれた家によって将来の地位が決まってくる。しかも国民が自分が属する階級をきちんと認識しており、そのカテゴライズを「自然なことだ」と考えているのが何とも異様だ。
それを象徴するエピソードが本書でも語られる。
保守党議員でキャメロン首相の側近のひとりだったアンドリュー・ミッチェル氏が、自転車で家に帰ろうとしたときの話だ。自転車に乗って車両用の門から出ようとしたところ、警官に「自転車はサイドゲートを通りなさい」と注意された。それに腹を立てたミッチェル氏が、「ファッキング・プレッブ!(Fucking pleb!)」と暴言を吐き、それが炎上し辞任に追い込まれた。
プレッブ(pleb)とは plebeian の短縮形で、語源は古代ローマのラテン語であり「平民」とか「下層民」という意味である。つまり警官に腹を立てたミッチェル氏は、「くそったれ、この平民めが!」と言い放ったことになる。これが差別用語と取られたわけだ。
私が驚いたのはここから。ミッチェル氏が「プレッブ」という言葉を発したかどうかの検討段階で、裁判官が次のように述べた。
「警察官はプレップというような言葉を普通使わない(知らない)ので、やはりミッチェル氏はその言葉を発したに違いない」
要は、裁判官(中流階級)は「警官(労働者階級)なんて学が無いんだから、pleb なんて語彙知らないだろ」と言っているのだ。擁護しているようでナチュラルに差別している。しかも実際、この事件がきっかけとなり、「平民」という言葉を初めて耳にしたという庶民も少なくなかったという。なんて皮肉に満ちたエピソードだろうか。
そのほか、公立校の生徒は「育ちが悪く物を盗む」という理由から、私立校の生徒に怖がられていたり、イギリス人は初対面の人にも「あなたのクラスは?」と臆面もなく尋ねたりと、この国では「平民」「富裕層」という概念が日常に根を下ろしているのだ。
しかし、イギリスにいるのは悪い人ばかりではない。イギリス人はコミュニティを大切にし、異文化を重んじる民族だ。ロンドン在住者のうち4割以上が外国で生まれた人々である。イギリス人は人との会話・コミュニケーションを重んじており、ロックダウン下では住民どうしの助け合いがさかんに行われた。ロンドンが近代以降から現在に至るまで、さまざまな理由で「外国人」を引きつける国でありつづけたのは、そうしたイギリス人たちの豊かで優しいコミュニティが存在してきたからである。
――――――――――――――――――――――――
【メモ】
先進国へ向かう飛行機にしのびこんで密航を試みる人々は世界中にいる。2010年にはニューヨークから成田へ密航しようとした人が凍死状態で発見された。だが、密航先としては圧倒的にロンドンが人気で、過去26年間で13件の記録がある。
現在のロンドンには世界のすべての国の出身者がもれなく住みなしている。ロンドン在住者のうち4割以上が外国で生まれた人々だ。仮に世界が破滅しても、少なくともロンドンが無事であれば、ノアの箱舟となって世界の諸国民が再生されるわけだ。
それにしてもなぜ、ロンドンは人を引き寄せるのか?
ひとつ目は可能性の大きさ。アメリカも可能性の国だけれど、あの国では可能性が地理的に分散している。金融はニューヨーク、政治はワシントン、映画ならロサンゼルスというように。けれどもロンドンには全部ある。金融・政治に加えて演劇、音楽、出版、商業、プロ・スポーツ(サッカー)、学問その他があり、かつそれぞれが一流水準に達している。
ふたつ目はふところの深さ。面積が大きいだけでなく(パリ、ニューヨークをしのぐ)、贅沢をいわなければ一応住み処は確保でき、仕事口もある。そして最後の決定的要因は、英語の都市という点だろう。
ではなぜそういう状況が生みだされたのか?それは何世紀にもわたる歴史がもたらした結果というしかないだろう。つまりは世界帝国の首都としてのレガシー。英帝国は支配下に治めた人口と面積の両面で、かつてのあらゆる世界帝国にまさっていた。規模はやはり豊かさと多様性をもたらすのだ。前世紀の終わりにグローバリゼーションというはやり言葉が浮上したとき、グローバル・シティ(世界都市)として人々がまずイメージしたのはロンドンだったはずだ。パリやニューヨークもその名に値しそうだが何かが足りない。ロンドンには、過去の栄光にあぐらをかいた、という描写があてはまる部分も多い。しかし、人々がこの都市を目指すかぎり、この都市の栄光はもう1世紀くらいは楽に続きそうな気がする。
「救急車は命を救うが、パトカーはいじめだ」
ロンドンで警察が黒人男性を呼び止めて職務質問する頻度は、白人男性に対する件数の19倍になるという。黒人の犯罪件数が白人のそれに比べて多いのだから無理もないという意見もある。統計的確率からすれば黒人に対する職務質問が多くなるのは合理的というわけだ。確かに黒人による殺人件数は白人に比べると多い。といっても、それは2倍程度にとどまっている。黒人に特に多いとされる大型ナイフによる暴行も白人より1.5倍多いだけだ。
統計的確率をはるかに超えた、釣り合いを欠いた、黒人に対する厳しすぎる職務質問とは何なのか?それは人種差別に起因するいじめでしかない。エリックが腹を立てているのはそうした数字のほか、とりわけ職務質問時の白人警官が黒人に対して示す残忍性なのだ。
ロンドンへの投資残高の数字では今も昔も相変わらずアメリカ人が一番多いけれど、不動産投資にかぎると中華圏(香港、シンガポール、マレーシア、中国)だけで全外国人投資の6割以上を占めるという。特に香港人のロンドン買いは英国の香港返還決定のころからぐんぐん増えていた。
タックス・ヘイブンからの投資家の相当数がロシア人だといわれている。一大勢力である香港人が買う物件は実際に住む住宅中心だが、ロシア人たちは違う。投資目的かというとそうでもなく、あえていうならばロシア国内からタックス・ヘイブンに逃避させた金を「ロンドンの高級物件」に注ぎこんで保有している。彼らはロシア国内に富を保有するリスクを誰よりもよく知っている。洗浄済み資金を、モスクワよりもはるかに安全なロンドンで建物の形に変え、その眺めにうっとりする。
彼らがロンドンの不動産を好むのは、市場としての魅力以外に、それが彼らの国にない、あるいは失われてしまった歴史と文化の凝縮物だからだろう。初めてアスコットの競馬に出かけて感激したロシア女性のコメントが新聞に出ていた。
「まるで小説の世界です。『アンナ・カレーニナ』の。19世紀帝政時代のロシアにいるみたい。着飾った女性たちの前を競走馬が駆けてゆく。ソヴィエト時代になくしてしまった美しいものに対するノスタルジアを覚えました」
ブースが作った貧困地図に現れた赤と濃紺の混在、つまり富と貧の混在はアナーキーではなく、ある種の社会的一体性を表していた。裕福な家族を支えるためにその近くに住む下働きの労働者たち。その空間的近接は経済的依存関係を示している。今ロンドンではその混在はジェントリフィケーション(高級化)という消しゴムで消されつつある。
そして、ブースの貧困地図の改訂版を今作ろうとするならば、色分けは七色では足りない。富裕層を示す黄色の上に、国際的スーパーリッチを示す金色を加える必要があるだろう。しかしブースのように家業(海運業)で得た富を社会改良のために役立てようという人物は、ロンドンに住みなす富裕外国人のなかにはいるはずもない。
コロナ禍は、社会の襞に隠れていた格差、矛盾、不満、不合理を可視化する現像液の役割を果たした。この国の場合には、2016年のEU離脱投票前後から英国例外主義がふつふつと湧いてきていて、2020年当初のコロナ禍対応には英国だけは大丈夫という姿勢が透けて見えた。優越性の幻想である。
実はこの小学校の教師のなかにも外国人生徒の増加を好まない人たちがいた。自国の優越性をむきだしにしたりはしないけれど、英語のわからない子の比率が増えると、教育レベルが全体に低下するという言い方をして憂い顔をしてみせる。
その時期に英国政府が「英国の価値(British Values)」なるものを喧伝しはじめた。教育現場への浸透を目指したもので、教育基準局が校内に啓蒙ポスターを貼るように指導した。ユニオンジャックの英国国旗の下にこれこそ英国の価値、と4つの価値が大きく書かれたポスターである。
4つの価値とは、(1)民主主義、(2)法の支配、(3)個人の自由、(4)信仰・信条の異なる者に対する尊厳と寛容。
わが妻は腹を立てた。列挙された諸価値に文句があったのではない。あたかもそれらが英国独自のものであるかのような得意顔にカチンと来たのである。
私立校と公立校というテーマは英国社会の理解に不可欠だろう。正確に言うと公立に対する私立の偏頗的重要性という事実。というのも、それが英国社会の一大特徴である階級システムの結果であり反映であるからだ。それが教育機関としての機能を超えて、社会制度の一部になっている。英国社会の指導的立場にある人々の過半数が私立校の出身者によって占められているという事実――私立校の出身者は人口の7パーセント(ちなみに日本は高校段階で30パーセントらしい)でしかないにもかかわらず――ひとつ取っても。
自宅内で住みこみや通いの専任教師を子弟教育の任にあたらせるのではなく、町や郊外(パブリックな空間)に学校を設けて教育を与える。そのような学校が14世紀ころから貴族階級のチャリティとして貧民子弟のために作られた。次第にその教育水準が高まり便利さが認められると、上流子弟も通学するようになる。それが現在では支配階級養成所みたいになってしまっているパブリック・スクールであり、もはや貧民子弟の学び場ではなくなった。かつ運営資金もチャリティではなく、子弟の家族が支払う高額な授業料による。
娘の交友関係や、近隣の子どもたちの行動を見ていると、私立校の生徒が公立校の生徒と交わるようすはあまりない。生活圏が見えない膜で区切られているような印象だ。小学校から私立と公立という棲み分けができていて、ほぼその延長で歩んでいくからだろうか。どうも私立校の生徒たちには公立校生徒を恐れる傾向もある。公立校の生徒は貧しくラフで私立校の生徒たちは金を持っているので狙われる、という固定的な偏見によるところが大きいのだが、娘のクラスメートが公立校の生徒から袋叩きにあってiPhoneを奪われた実例もあるので、まったく根拠のない偏見というわけでもないようだ。そりゃあ、カモになりやすくはあるだろう。
日本の物品を売る小売りはともかく、ソフトの販売ともいうべき日本食ブームの高まりは2000年代以降顕著になり、ここ4、5年はそれが安定定着しつつある。しかし残念なことに、ロンドンで人気の日本食レストランや寿司バーの実際の創業者や資本家が日本人かというとそうではない。ロンドンで一番有名な日本食レストランといえば「ワガママ」(たぶん在倫日本人全員が避ける店)だが、その創業者は香港出身の漢民族系だし、寿司のテイクアウトで首位争いをしている「イツ」と「ワサビ」の創業者は前者が英国人、後者が韓国人だった。回転寿司でロンドンをびっくりさせた「ヨー!スシ」も英国人が作った。
英国にはVJデイなるものがあることを知った。「Victory over Japan Day(対日戦勝記念日)」の略字である。日本の終戦記念日がその日に当たる。
アメリカでももちろん対日戦の勝利を祝いはする。だが、終戦直後こそ「日本との戦いの」勝利と意識されていたが、1990年代に至って「太平洋戦争での」勝利というマイルドな言い方に変わってきていた。
だが、英国では現在でもなおVJデイを特別の日として祝っている。最初にイギリス南西部でVJデイの祝い方に接したときの体験もふくめ、単純な言い方をすれば、彼らはだいぶ「根に持っている」ようだという嫌な感じがあった。
第二次世界大戦というのは英国にとっては植民地帝国崩壊の始まりで、局地戦では負けてばかりいた。シンガポールでの日本軍に対する敗退にしても、ダンケルクの撤退にしても、大英帝国が立てつづけに赤っ恥をかかされた瞬間だし、アメリカが参戦してくれなかったらロンドンにハーケンクロイツがたなびいていたかもしれない。
それだけに、人種差別の感情とあいまって対日勝利はにぎにぎしく祝う価値のある勝利だったのだ。それがアメリカの驥尾に付して得た「配当」であったにせよ。であるからこそ、日本軍の捕虜になって虐待されたことは悶絶の恥辱だった。
英国には日本軍の捕虜になっていた人々が書いた手記が山ほどある。日本の出版界は昔から翻訳に貪欲だけれども、このジャンルばかりは翻訳が少ない。無理もない。僕自身も何冊か買ってはいたが、積極的には手が伸びず、読みはじめても途中でページを閉じてしまう。あまり読みたくない話が次から次に出てくる。
ある学者によると、英国で書かれた日本関連本としては、経済や文化などよりも、日本捕虜収容所での体験を書いたものが一番多いらしい。僕がVJデイに無知だったのと同時に英国人たちが「根に持っている」ように感じたという非対称的認識を裏から照射するような情報だ。
イギリス人はコミュニティということを絶えず意識しているような印象がある。なければならないもの、なければ作るべきものというふうな。18世紀後半以降、急に都市人口がふくれあがったせいだろうか。イギリス人がそもそも混合民族であることに加え、近代以降現在に至るまでロンドンを中心にさまざまな理由で「外国人」を引きつける国でありつづけるせいだろうか。
日本にも、イギリスでいう労働者階級や中流に相当する人たちはいるだろう。けれどもそれぞれが「層」とか「クラス」を形成している印象はない。束ねられるのは、社会学者などが便宜的に分類するときだけではないだろうか。階級対立意識なども先鋭にはならない。
ところがイギリス社会では、自分が属する階級をきちんと認識している。尋ねられれば隠さず臆せず答えるだろう。ミドルクラスです、とか、ワーキングクラスです、と。そういう社会では、まよいこんできた外国人を同定しないと落ち着かない人もいる。
独身時代にイギリス人の友だちから尋ねられたことがあった。
「あなたはミドルクラスなの?」
面と向かっては2回。ずいぶん露骨に質問するものだと感心した。イギリス人の誰もがこんな質問をするわけではないが、彼らはまちがいなく心の中で値踏みをしている。隣国のフランスだとかベルギー、スペインから来た外国人が相手ならば、しばしの立ち話で有形無形の符丁を読み取ることができるけれど、素地の違う極東から飛んできた男はどうもわからない。
イギリスでミドルクラス(中流階級)というのはだいたい日本の上流階級に相当する。
「イギリスの食事はおいしいか?」
ここ2、30年ではるかにおいしくなったのはまちがいない。40年くらい前は、なぜこんなまずいものを作り得るのか(作るのか、ではなく)、そしてまた不満を言わずにそれを食べるイギリス人はなんと我慢強いのかと感心したものだ。われわれ食通の国から来た者たちには、食後にさまようロンドンの街路が悲しく見えた。心を励ますための口直しをと思っても、口に入れた瞬間に甘味が歯にしみ、炭水化物でむせそうになるケーキしかなかった。
なぜおいしくなってきたのだろう?外国由来の食事処が増え、ヨーロッパからの調理人が増え、イギリス人自身の外食が増えたこと、などが理由ではないかと思う。若者の舌が肥えてきたことも理由のひとつかもしれない。
昔からインド、中国、イタリアという三大外国料理はしっかり根をおろしていた。そこヘタイ、ベトナム、韓国、日本、レバノン、スペイン、メキシコ、トルコ、と諸外国料理のレストランも前面に出てきた。急にやってきたわけではなく、ロンドンの各地に潜んでいたものが、今世紀に入ってからの経済成長と共に表舞台に出てきたのだ。外食に出たがるロンドン市民と、ひと味違うメニューを出そうとこたえる飲食業界の切磋琢磨である。
ロンドンの飲食産業が抱える不安のひとつが、EU離脱の影響である。外食改善の理由のひとつにヨーロッパの調理人の活躍を挙げたが、EU離脱後の英国にレストラン従業員は自由に渡航できない。政府は、いずれの産業においても熟練労働者ならば入国させるという方針を出したけれど、調理人の場合、熟練度をどう見分けるのか?国境でカツオのたたきを作らせてみるのか?ばかばかしいが給与のレベルで判断する、ということになった。ある労働者に一定水準以上(約400万円)の年収を出すならば、その労働者は熟練労働者に違いない、と見なすのである。しかしレストランの経営者は、トップシェフが必要なのではなく腕利きの手堅い料理人、皿洗い、サービス精神にあふれた給仕人を求めている。
ロンドン滞在通算10年を超えたあたりで、ふと気がついた。
僕たちはひょっとすると違うものについて語っているのではないだろうか?あるいは、同じものについて語っていながら、大脳の違う部分を使っているのではないだろうか?
日本人にとって食事とは官能を刺激し、心の交流をうながし、幸福の主要部分を形成するものだ。ところが、イギリス人にとって食事とは何よりもまずエネルギーの補給源だったのだ。働くために、何よりも戦うために。だから食事の細部にはあまりこだわらない。産業革命で工場・事務所へ「出勤する労働者」が増えたイギリス社会では、手早くカロリーを取りこむ食事が優先された。日本人のように、あの店とこの店の比較だとか、煮すぎだの焼きすぎだのという批判、味があるとかないとかの問答、はるか昔、はるか遠いところで食べた食事の記憶などを楽しげに語る姿は瑣事拘泥と映るのではないだろうか。歯触りの良さとか隠し味に至っては、秘教の奥義に類するどうでもいいことだと。
彼らにとって、それよりも大事なことはほかにある。国が違えば何に重きを置くかも違ってくる。日本人にとって食事の優先度はきわめて高い。だが、イギリス人は食事をそれほどまでには重要視せず、それよりも会話に優先度を置く。パブは酒場であることにまちがいはないけれど、あそこの本質は延々と続く会話であり、主食の会話を楽しく味付けするためのスパイスとしてのユーモアが不可欠になる。目の前の皿に乗ったパイがまずかろうと、ポテトチップスが湿っていようがそれは二の次。文明人の口は食べるためにあるのではない、話すためにある。続きを読む投稿日:2024.01.22
ロンドン。新婚旅行でドイツからの帰路でトランジットで立ち寄っただけで、足を踏み入れたことのない街。そんなロンドンが舞台な「異邦人のロンドン」。ロンドン在住歴30年余りの日本人作家が暮らしの中で見聞き…したよそから来た人たちのルポ。この街には、様々な土地から多様な物語を背負った人が流入してくる。モザンビークからの密入国者、香港から逃げてきた一家、ロシアの資産家など。ロンドン目指して飛行機の車輪格納部に潜んだ密入国者が着陸態勢に入り空から落ちてくることが多々あるというのは痛ましい。続きを読む
投稿日:2024.01.31
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