狙撃手の祈り
城山真一(著)
/文春e-book
作品情報
離婚届を置いて失踪した妻、発見された銃弾、28年前の未解決事件。
平穏な生活が一変する秘密と嘘。
東京都北区十条で楽器店を営む青井圭一。
雑誌記者の妻・沙月とは取材がきっかけで知り合った。
ある夜、妻の沙月が圭一に差し出したのは離婚届だった。
明日から一週間取材に行くから、帰るまでに答えを出してほしい――。
確かに、圭一の友人のミュージシャンの不倫スキャンダルを
沙月がスクープしたことで、最近夫婦関係はぎくしゃくしていた。
しかしそれが離婚の原因になるとは思えない。
そして一週間後、電話口で「このまま家に帰ったら、許してくれる?」という言葉を残して沙月は消息を断つ。
ほぼ時を同じくして、亡くなった圭一の叔父の遺品の中から
銃弾が発見される。叔父の友康はこの楽器店の先代で、
幼い頃に両親を亡くした圭一の育ての親でもある。
平穏な人生を送っていた叔父と銃弾が結びつかず混乱する圭一。
追い打ちをかけるように、その銃弾が28年前に起こった
警察庁長官狙撃事件に使われたものと同じ型という可能性も浮上する。
警察庁長官狙撃事件は未解決のまま公訴時効を迎えていた。
そして、沙月がこの未解決事件を追っていたことも明らかになる。
叔父と長官狙撃事件の間に何らかの関係があるのか。
もしあるとしたら叔父はどう関わっていたのか。
今回の沙月の失踪はその未解決事件の取材と関係しているのか。
この世界が今日も明日もこのまま続くだろう、そう思っていた人間が、
期せずして社会の深淵を覗くサスペンスミステリー。
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商品情報
- シリーズ
- 狙撃手の祈り
- 著者
- 城山真一
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2023.10.20
- Reader Store発売日
- 2023.10.20
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 336ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.5 (14件のレビュー)
-
人生を賭けて護りたいものがある。それが例え自分の属する世界の正義と相容れぬことであっても。
狙撃手は何のために祈るのか。
国家転覆のためなのか。教義を貫くためなのか。それとも同志を守るためなのか…。あるいは……。
オウム真理教による一連の事件を題材にしながら、真相に隠された悲痛な家族愛を描くヒューマンサスペンス。
◇
木佐貫は雨の中、車を走らせていた。まもなく警察庁長官の住むマンションに到着する。
1年前から長官秘書を務める木佐貫にとっての任務は、長官の公務時間内の警護である。そこには自宅への送迎も含まれるため、朝8時半きっかりに長官の自宅マンションのエントランスまで迎えに行くことになっていた。
10日前にカルト教団光宗会による地下鉄サリン事件があり、教団と警察との間には緊張が漂っている。
マンションに到着し警備担当の刑事と言葉を交わした木佐貫は、周囲に異常がないのを確認すると呼び出しパネルで海江田長官の部屋番号を押した。
やがてエントランスに姿を見せた海江田が木佐貫の待つところに歩み寄った。大きな銃声がしたのはその時だった。(「プロローグ」) 全5章とプロローグからなる。
* * * * *
地下鉄サリン事件や警察庁長官狙撃事件で始まるプロローグで、警察とカルト教団との闘いを描いたサスペンスなのかと思ったら、少し違っていました。
本編は一連の事件から28年後の令和5年のできごとで、光宗会はすでに解散していて、教祖の徳丸宗邦の死刑は5年前に執行されています。
つまり 教団 対 警察 の闘いは終焉していたのでした。
本編を引っ張る主人公は2人います。
1人は楽器店とレンタルスタジオを営む青井圭一という 32歳の男性で、もう1人は警視庁公安部の斉賀速人という 31歳の巡査部長です。
2人は期せずして28年前に起きた警察庁長官狙撃事件の真相究明に関わることになるのですが、主人公としては圭一の方にウエイトが置かれていました。
圭一はミュージシャン志望でしたがまったく芽が出ず、現在は叔父の楽器店を引き継いで生活しています。
幼い頃に両親を失くした圭一を引き取って育ててくれたのが、この叔父の友康でした。1年前に急死した叔父は生涯独身だったため、圭一が楽器店を相続したのです。
圭一には沙月という雑誌記者の妻がいます。圭一は叔父の存命中に楽器店を取材に来た沙月と知り合い、交際がスタート。2人が結婚を意識するまでに時間はかかりませんでした。
ミュージシャンの道を諦めきれずアルバイト暮らしの圭一は、沙月を幸せにする自信がないと結婚を躊躇します。けれど、自分が圭一を幸せにすると沙月がきっぱり宣言したことで、2人は結婚に踏み切ったのです。
自分の立場や境遇を考えて身の振り方を判断する圭一に対し、愛する人のことを考えてものごとを進めていく沙月。
この2人のスタンスの違いが1つの伏線になっています。(あとで気づきました。)
ある日、行き先も告げずに泊りがけで取材に出た沙月が、不審な電話1本を寄越したまま行方不明になったことで、物語は回り始めます。
妻の足取りを掴もうと彼女の仕事部屋に入った圭一は、沙月が 28 年前の海江田警察庁長官狙撃事件について調べていたことを知ります。さらに、彼女が箱詰めの銃弾を隠し持っていたことにも気づいたのでした。
その銃弾は叔父の友康が昔にアメリカから密輸入したものらしく、どうやら沙月が叔父の遺品を整理する際に見つけたものであることもわかりました。
単独では手に負えないと悟った圭一は警視庁を訪ね斉賀に面会を求めます。沙月が残したメモの中に、公安総務課の斉賀速人の名があったからでした。
こうして圭一と速人という奇妙なコンビによる聞き込みが始まったのです。
本作のおもしろさは、2重3重に張り巡らされた事件の謎にあります。さまざまな真実が明かされる終盤は圧巻です。その重厚な作りは、読んでいてため息が出るほどでした。
そして、作品の中心に据えられていたのは社会正義ではなく、家族愛だったところに個人的に感銘を受けました。
他に強く感じたことは2つあります。
1つめは、カルト教団が引き起こした一連の事件の爪痕を 28年経った今も心に残している方はいらっしゃるに違いないということに思い至り、痛ましい気持ちになったこと。
2つめは、刑事部と公安部の対立が捜査を滞らせてしまったことが実際の事件でもあったという報道を思い出し、暗澹たる気持ちになったことです。
ともあれ、いろいろなことを考えさせてくれる作品で、さすが社会派サスペンスの名手でいらっしゃる城山さんだと感じ入りました。続きを読む投稿日:2024.01.30
プロローグでの警察庁長官狙撃事件は実際にあった國松警察庁長官狙撃事件を思い出しました。場所も日にちも同じ設定でおまけに未解決であることも。そしてオウム真理教の地下鉄サリン事件を思わせる宗教団体の存在。…
最初は十条銀座商店街の楽器店の店主青井圭一とこの事件がどう繋がるのだろう?と思って読み始めたけれど、妻であり、記者でもある沙月の亡くなる前の行動を辿って行くうちに思ってもいない真相に辿り着きました。
全ては家族の為に…。この小説の中の隠されたテーマのような気がしました。
タイトルにもなっていますが、狙撃手の祈りが通じたのは良かった。しかし、実際の事件の裏にはどんな真実が隠れているのでしょう?改めて当時の事件の事を思わず調べてしまいました。続きを読む投稿日:2024.04.14
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