この作品のレビュー
平均 4.5 (2件のレビュー)
-
こわれた魂の著者、水林章氏による日本の政治の腐敗が日本語にあるとするエッセイ。社会が言葉を作り、言葉が社会を作るとすれば両者は相互補完的であるので、単に日本語が、悪いのではなく、日本社会というものに埋…没している封建精神あるいは天皇制的なものが、法の下に皆平等という健全な市民社会を成立させる障害になっていると著者はいう。丸山眞男や加藤周一、田中克彦などの先人の文書も引用しつつ、社会的属性を離れて同等の視点で議論できる風土がないと著者は言う。
ここで気になるのは著者は安倍晋三を頂点とする(した)自民党を批判しているが、その対抗馬である民主党や、共産党などについての言及が全くない点である。火事の消し方が悪いと言って懐手で見物している様である。著者はフランス語を50年以上にわたり勉強し、教鞭を取って来たのだから、フランスの言葉や習慣と比較して日本の政治土壌が貧困であると嘆くのはよくわかる。
しかし、私たちはとにかくフランス人ではないのだから一朝一夕にはフランス人の様にはなれないし、ならなくても良いと思う。そう考えると、社会的属性を超えて議論する風土を醸成することが重要なのではないだろうか?
100編以上の引用文献があり、読書案内の効用もあった。
ただし、いろいろ気になる点がある。ルソーの社会契約論はそもそももキリスト教という文化的土壌があることを無視していないかという点、また日本語の特性に天皇制が埋め込まれているというが、現在の日本で接客中の日本語に敬語が利用されるのはサービスをスムーズに行うためではないだろうか?話相手との上下関係を意識することが自由闊達な議論の障害になっているのは認めるが、議論しないでスムーズに事を進めることができるという利点も敬語にあるのではないのかという点である。
そういう意味でこの本は問題があると言って石を投げて終わっている様な印象を受けた。
しかしこの本は色々と今後の日本をよくするために重要な、本であることは間違いない。よく書いてくれたと快哉を叫びたい。続きを読む投稿日:2024.02.18
フランス語での著作が多く、アカデミー・フランセーズ仏語・仏文学大賞を受賞するなど、さまざまな賞をフランスで受賞している著者が、日本とフランスを比較しつつ、思考が言語に多くを負っているということを、天皇…制を維持しながら民主政を標榜する戦後の日本、市民としての意識が根付かない日本に苛立ちつつ分析している。
戦後も根底に天皇制がある日本社会の前近代性は変わっておらず、むしろ次第にその傾向が強まり、改憲派が大手を振るようになってきていることへの批判。そして、日本語という言語の中に、自由や平等、民主主義という輸入概念を実行しようにもなかなかうまくいかない足かせがあると分析する。人間関係を上下関係や地位による序列で作るムラ社会がそのまま言語化されているのだと。
ある傲慢な人間がいるのではなく、同じ人間が下に対しては傲慢になり、上に対すると卑屈になる、抑圧の移譲。上からの圧迫感を下への恣意の発揮によって順次に移譲していくという指摘は面白い。
社会と言語は相互規定的。日本語話者を「前近代」に閉じ込めている、言語は一種の牢獄だ。もちろんどんな言語でも同じように、その話者にとっては”牢獄”なわけだが、これを意識するには、他の言語を学ぶのが早道。与えられた文化的伝統をどれだけ対象化し、そこからどれだけ離陸できるか。これが本来は外国語教育の基礎に置かれるべきではないのか?と読みながらふと思った。
もう一つ、フランスで著者が経験しているサロンや文学の夕べ、読書会のような催しについて、社会的ヒエラルキーを無効にする、対等性の作法が生き続ける世界だと書く。これは私を含め、このブクログにいる本好きたちも実感できることだとちょっとうれしい気持ちで読んだ。社会的な肩書や人間関係を消去した上に成り立つ、ただ本を媒介とする場は自由で楽しい。続きを読む投稿日:2024.01.28
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。