将棋カメラマン ~大山康晴から藤井聡太まで「名棋士の素顔」~(小学館新書)
弦巻勝(著・撮)
/小学館新書
作品情報
将棋界50年の秘蔵写真・秘話が満載。
いまでこそ藤井聡太ブームによってオープンな印象を与えるが、50年前の将棋界は伝統と格式を重んじる“閉鎖的な世界”だった。
そんな将棋界の魅力に惹かれた筆者は、棋士たちの懐に飛び込むスタイルで信頼を得て、棋士のプライベートにも密着。鋭い眼光で勝負に臨む姿だけでなく、名棋士たちの「生き様」を写真に収めてきた。
大山康晴、中原誠、米長邦雄ら伝説の棋士、天才と呼ばれた谷川浩司や羽生善治、そして今秋には史上初の「八冠」に手が届くと目される藤井聡太──。彼らの貴重な写真と弦巻氏だけが知る秘話は「将棋界の貴重な記録」でもある。
2023年夏に将棋連盟の新会長に就任した羽生善治氏との特別対談も収録。
※この作品はカラーが含まれます。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
将棋カメラマンの目から見た棋士たちのエッセイ。棋譜そのものには触れずに、棋士に注目する話なので、いわゆる見る将の人にはたまらないと思う。
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森安秀光に多くのページを割いているのが他の棋界史と違うところ。実際の棋士では無理な、この人でなくては書けない話がある。投稿日:2024.04.08
将棋カメラマンとして長年にわたり、棋士を撮りつつ交流を続けてきた中での様々な出来事や思い出を綴ったもの。著者は、棋士と一緒に麻雀をしたり酒を酌み交わし、深い付き合いをしてきたことから、将棋界からの信頼…がとても厚い。昔と今の棋士、将棋界、ファンやサポーターの違いについての話が面白い。内容は濃く、著者の将棋界に対する思いの深さがひしひしと伝わってくる。良い本だと思った。
「(大山康晴 将棋連盟会長)車を降り、早足で歩き回ってアポイントもない企業に自ら飛び込んでいく。「将棋の大山ですが、社長さんはいらっしゃいますか」社長がいない場合は印刷の扇子を、社長が出てきた場合には直筆の扇子を渡し、関西将棋会館の建設費の拠出協力を呼びかける。交渉が終わって車に乗り込むと、会社の従業員が見送りに立っている。後部座席の大山先生は前を向いたままこう言った。「この会社がいい会社かどうか。車が見えなくなるまで、外に出て手を振っていればいい会社」」p65
「(米長邦雄)自分自身にとっては消化試合であったとしても、相手にとって重要な対局ほど、本気で負かしにいかなければならない」p82
「(林葉(中原)事件)人間のたったひとつのことを取り上げて、全人格を潰すような風潮は良くないということである」p90
「棋士でない僕に対しても、毎年、羽生家からお中元とお歳暮が送られてくる」p158
「藤井聡太さんの活躍を見ていつも思うのは、将棋の強さもさることながら、取材に対する受け答えや立ち振る舞いの完成度だ。使う言葉にも教養が感じられ、将棋同様にまったく隙のないコメントが繰り出される」p171
「「飲む、打つ、買う」を地で行くような棋士が勝てない時代に移り変わったということだろう」p173
「(渡辺淳一)「成功するために大切なのは努力ですか、それとも才能ですか」すると、渡辺先生が言う。「ひとついえることは、努力ができない人というのは何をやってもだめなんだ。ひとつのことを続けるというのは成功の必要条件だ」」p184
「(立石鉄男について)鶴巻さん、テッチャンは仕事がないわけじゃないんだ。あれでも芸能人としては全盛期は凄かった人だから。何でも仕事を受けるわけには行かないんだよ」p188
「立石鉄男さんは2007年、急性動脈瘤破裂のため急逝した。64歳だった。晩年の立石さんを支えていたものは、若き日に活躍した人気俳優としてのプライド、そして将棋であったと思う」p190
「ネット中継に映る対局室の変化もまた、僕のような古い人間にとっては驚きだ。いちばん大きく変わった点は、対局場にスポンサーの「主張」が入るようになったことだろう。棋戦名が書かれたパネル、主催紙の題字や社旗。一般企業がスポンサーに入っている場合には棋戦名に社名が入り、その会社が発売している飲料や菓子が画面に映り込む場所に配置される。かなりの広告効果が期待できるのだろう。それらは対局者の思考を直接阻害するものではない。とはいえ、対局場の旅館の歴史や格式はそれらによって消されており、いまや対局室内に「情緒」を求めるのは不可能になっている」p202続きを読む投稿日:2024.01.27
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