法と立法と自由I ルールと秩序
フリードリヒ・A・ハイエク(著)
,矢島鈞次(著)
,水吉俊彦(著)
,西山千明(著)
/春秋社
作品情報
ハイエク思想の根幹をなす〈自生的秩序〉を展開。“サイバネティックス”、“オートポイエーシス”とも連関する概念として、社会科学の分野を超えて再注目されるべき一冊。
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商品情報
- シリーズ
- 貨幣理論と景気循環・価格と生産
- 著者
- フリードリヒ・A・ハイエク, 矢島鈞次, 水吉俊彦, 西山千明
- 出版社
- 春秋社
- 書籍発売日
- 2007.12.20
- Reader Store発売日
- 2023.07.10
- ファイルサイズ
- 104.2MB
- シリーズ情報
- 既刊11巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
本書はハイエクのもっとも重要な著書であり、最近やっと日本でも注目されるようになった「法と経済学」の元祖ともいうべき本だ。邦訳はながく絶版だったが、新版が出たことは喜ばしい。
投稿日:2010.10.05
新自由主義を考えるにあたって、そのイデオローグの一人ということで、ハイエクをボチボチと読んでいるのだが、かなり面白クテ、ミイラ取りがミイラになる状態。
「法と立法と自由」は、ハイエク晩年の主著で、「…自由の条件」での議論をベースに「法」という概念について、より深く考察したもの。ハイエクの文体として、ものすごく難解なことを言っているわけではなく、丁寧に読めばそれなりに理解できるように書いてあるものの、やはり議論が細部に入っていくと、だんだんわからなくなっていく。
そんな感じなので、本自体は何年か前に買ったのだが、何度か途中で挫折した。気を取り直して、ざっくりと読んでみることにして、なんとかその第1巻は読了。
帯には、「「オートポイエーシス」「サイバネティックス」とも連関するハイエクの「社会システム論」」という書いてあって、確かにそういう観点で読むことができて、今日的な議論として、いろいろ面白い。
ハイエクはいわゆる新自由主義的な論者なのだが、人間の合理性の限界をよくわかっている人で、その辺りが、いわゆる限定合理性の議論から行動経済学的な議論、さらにはシステム論につながっていくわけで、面白い。
この本における主張も、法というものは、主権者、人間が立法する前に、「自生的秩序」が進化的に形成されていて、これなしには社会は存在し得ないし、法律も存在し得ないとする。
この議論でいくと、いわゆる明文化された「法」も元々自生的に成り立っていたものを言語化したものに他ならないということになる。
一方、人間が組織や国家などを運営するために、作る法もあり、そこには元々の法を言語化するものと、主権者?がある目的のために手段として立法するような法が出てくる。
ハイエクは、この2つの法の概念を区分することがまずは大事であるというところが第1巻の議論なのかな?
元々、人間が法を作るまえに、法があったというのは、いわゆる自然法という概念を想起させる。また、文章化されていないのだが、これまでの判例の積み重ねなどによって実質的に法となっている慣例法という概念も近接している。
実際、ハイエクの議論は、自然法や慣例法に近い議論なのである。自然法というと自然あるいは神が人間に最初から付与したというふうなイメージがあるので、ハイエクは自然法とは言わない。人間のこれまでの行動のなかから進化的に発展してきた暗黙のルールというニュアンスでハイエクは議論している。そういう意味では慣例法に近い概念かも知れず、本の中でも慣例法については、しばしば言及される。
いずれにせよ、ハイエクが仮想敵として見ているのは、法実証主義的な概念で、自然法みたいな抽象論は実証科学の対象になり得ない。法学として取り扱うのは、あくまでも文章として成文化し、主権者によって有効とされた法のみが法なのだという立場である。
法実証主義の主権者が決めたものだけが法律であるという概念が、それ自体として、全体主義につながるというわけでもないのだろうが、この議論はナチス時代に活用された理論としても使われたものである。
主権者が、自分の理想を実現するために、設計的な合理主義に基づいて、法律を作ることができるという傲慢さ、人間の能力の限界を知らない謙虚さの欠如が批判の対象になっているということだ。
ここを崩していくために、ハイエクは、一見、面倒臭い議論を少しづつ進めているわけだ。
第2巻での展開が楽しみである。続きを読む投稿日:2023.10.25
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