小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
藤原実資(著)
,倉本一宏(編)
/角川ソフィア文庫
作品情報
平安時代の公家で、故実に通じ「賢人右府」と称賛された藤原実資。彼の日記『小右記』は、藤原道長が詠んだとされる「此の世をば我世とぞ思ふ望月の欠けたる事も無しと思へば」が載ることでも著名である。63年にわたり書き続けられた現存5463条の膨大な記事のなかから、男性貴族によって宮廷で執り行なわれた政務や儀式など、初心者にも面白い内容を精選。原文・訓読文・現代語訳を収録した、研究の第一人者による決定版。
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商品情報
- シリーズ
- ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川ソフィア文庫
- 書籍発売日
- 2023.07.21
- Reader Store発売日
- 2023.07.21
- ファイルサイズ
- 6.7MB
- シリーズ情報
- 既刊8巻
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この作品のレビュー
平均 3.8 (6件のレビュー)
-
「御堂関白記」「権記」に続いて「小右記」もみてみた。藤原実資が記録した日記。ビギナーズ・クラシックスシリーズなので、日にち順に、現代語訳、読み下し文、原文、解説がのっている。現存5463条の記事の中か…ら初心者にも面白いものを選んだとあるが、前2冊に比べると約2倍の厚さ。
どうしても大河「光る君へ」でロバート秋山が「う~む、けしからん!」と廊下を歩きながら言葉を吐く様を思い浮かべてしまうが、朝廷儀式や政務に精通し、道長にも一目おかれたとある。
道長に内覧宣旨があったこと、定子の二度目のお産の時、道長が宇治の別邸に人々を引き連れたため定子の里帰り儀式の責任者がいない状態だったこと、彰子のお産、「望月の歌」の宴、など有名な箇所はもちろん載っていた。
また取次の女房が紫式部らしいところもあった。
・長和2年(1013)2月25日
「・・縁后御気色不許歟者、取案内女房・・」
(彰子が一種物という饗宴をやめさせたのは、)后の御意向が許さないものだろうか、(と資平が言うので)(実資は)案内を女房に取った・・ この女房は紫式部か、と解説にある。
しかし一番印象に残ったのは、実資の子供と妻の所だった。死産だったり妻も早く亡くなっているようだ。
・西暦4年(993)2月9日
「女人自今暁重煩悩、辰時産、但児夭了解、・・・仍申一点使石作忠節令棄置乾方、其処蓮台寺南辺云々、」
(妻が今朝から重く患い辰の刻にお産があった。ただし子供は死亡した。・・そこで申の時刻に、石作忠節(家人?)を使わして、乾の方角に捨て置かせた。そこは蓮台寺の南あたり、ということだ。)
実資37才。嬰児を「棄置」というのがとてもぎょっとしてしまう。ところが解説に前回の東山に懲りたのだろうかとあるので、元に戻ってページをめくってみると、
・正暦元年(990)7月11日にも女児を亡くしていた。
「申剋小女児入滅、悲嘆泣血・・不耐悲慟、通夜令加持」
(申の刻・午後3時から5時の頃、小女児・薬延は入滅した。悲嘆泣血した。・・悲慟に耐えず、夜通し加持を行わせた)解説には、寛和元年(985)4月28日に嫡妻の藤原惟正の女から生まれた女児(薬延)はこの日死んでしまった、とあった。5才までは生きたことになる。それでこの女児をめぐるその後の動きが取り上げられていた。
・7/12 女児の葬り方を陰陽道に造詣の深かった藤原陳泰に聞いた。7歳以下の葬送は厳重にしてはならず、遺体は穀織という薄織物を衣とし、手作布の袋に収めて桶に入れる。
・7/13 雑人2,3人に命じて遺体を東山の今八坂の東方の平山に置かせた。
・7/14 女児の事を思うと心神が不覚で悲恋に耐えられず、人を遣わして見させた。既にその形はなかったということで、いよいよ悲嘆を増した。・・解説では犬か鳥に喰われたのか、何かの薬(児干)の原料として持ち去られたのか、とある。
・8/12 長谷寺に僧を遣わし、新たな女児を乞う祈願をした。解説では、その甲斐あって正暦4年(993)2月に再び子供が誕生した。が上に書いたとおりすぐ死んだ。そしてこの子の母は一貫して「女人」と表記しているので良円を産んだ女性であろう、とある。
<実資の妻>
・源惟正の女が最初。だが寛和2年(986)に死去。
・正暦4年(993)に花山天皇の女御であった婉子女王と結婚したが、長徳4年(998)に27歳で死去。それ以後結婚することはなかった、とある。正式な妻ということ?
・長保元年(999)7月3日 禅林寺で故女御(婉子)の周忌法事をした。
・万寿3年(1026)9月13日 醍醐寺に参り、故女御(婉子)の母堂に対面し、一日中清談した。・・婉子が亡くなって28年になるが、その母(為平親王室、源高明の女)はいまだ存命だった。
小右記も「国際日本文化研究センター 摂関期古記録DB」に読み下し文が日にち順に載っている。
https://www.nichibun.ac.jp/ja/db/category/heian-diaries/
藤原実資:天徳元年(957)~永承元年(1046.2.26) 90歳没
政務に精通し道長にも一目置かれた。治安元年(1021)、ついに右大臣に上がり、以後大臣在任26年に及んだ。関白頼道の信任を受け、「賢人右府」と称された。
日記は、「野府記」とも称され、逸文を含めると、21歳の貞元2年(977・20才)から84歳の長久元年(1040)までの63年に及ぶ。「小右記」は実資の在任中にいったん日毎にばらばらに切られたと見られる。儀式毎にまとめた部類記を作るため。実資の死去でその計画は頓挫し、それをまた貼り継ぎしたものを書写したものが、古写本の基になっていると推測される。「小記目録」と呼ばれる目録も作成された。
解説:倉本一宏
2023.7.25初版 図書館続きを読む投稿日:2024.05.23
大河ドラマ「光る君へ」で秋山竜次さん演じる藤原実資の記した「小右記」。平安の事務取扱要項(?)日記は家の財産とされ、膨大な日記を残した実資の有能ぶりが分かる。編者の倉本氏の解説が素晴らしい。大河が一層…楽しくなりそうです。続きを読む
投稿日:2024.04.24
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