草の根のファシズム 日本民衆の戦争体験
吉見義明(著)
/岩波現代文庫
作品情報
日中戦争,アジア太平洋戦争を引き起こし,日本を崩壊させた天皇制ファシズム.その被害者とされてきた民衆がファシズムを支えていたこと,そして戦争末期の悲惨な体験から戦後デモクラシーが生まれたことを民衆が残した記録から明らかにしてゆく.従来の戦争観に根本的転換をもたらした名著,待望の文庫化.【解説=加藤陽子】
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商品情報
- シリーズ
- 草の根のファシズム 日本民衆の戦争体験
- 著者
- 吉見義明
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波現代文庫
- 書籍発売日
- 2022.08.10
- Reader Store発売日
- 2023.06.22
- ファイルサイズ
- 29.9MB
- ページ数
- 340ページ
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この作品のレビュー
平均 5.0 (3件のレビュー)
-
1987年の著作の文庫化。国内外を問わず戦時下の民間人の手記や当時のアンケート結果をつぶさに紹介することで、日本民衆の視点から「アジア太平洋戦争」を描き出すことを目的としている。本文約300ページ。全…四章で、第一章が日米開戦前までの世相を確認し、第二、三章では太平洋戦争突入以降、第四章は終戦直前から戦後までを扱う。
とにかく「膨大な量の戦争体験記類」から戦争体験者たちの声を丹念に拾い上げていることが本書最大の特徴だろう。日本国内だけではなく、当時の植民地や戦地に兵士として招集された民間人による記録も多数にのぼる。参照されるソースとしては、当事者による手記として刊行されていた著作がかなりを占めるほか、日記や新聞への投書、政府や米軍による調査報告書に掲載された記録なども含まれる。また、各種のアンケート結果からも、戦争の状況の変化とあわせて遷り変わる国民の意識を確認することができる。
書名となっている、「草の根のファシズム」の成立については、本書の第一章から第二章の途中までがその主たる期間にあたる。日中戦争開戦前後の時点で、政府や軍部に対しては批判的な声も多く、イタリアやドイツのような独裁を良しとする声は少なかった。しかし日本の場合、このような声は平和や民主主義、自由主義的体制には向かわず、天皇を戴くファシズム体制を生み出す力として作用することになった。本書内ではこの体制は、著者によって「天皇制ファシズム」と呼称される。この「天皇制ファシズム」が民衆の意識に及ぼした影響力・強制力については、戦後までをも含めて、著者によって再三その甚大さが指摘される。
本書を通してのまず第一の驚きとしては、戦前には民衆としても戦争そのものに反対する人々の割合は極端に少なく、論点はあくまで「戦争がどのようになされるか」にあった点が挙げられる。当時、植民地をもつ帝国としての日本の臣民であるという意識は民衆にも浸透しており、もっと明確な領土のための侵略戦争を求める声も主要な意見のひとつだったようだ。そしておそらくこの意識と連動する形で、他のアジア諸地域の住民への優越感と蔑視もきわめて一般的だったことがわかる。
このような戦前の意識との対比も含めて、全体のなかでは終章である第四章の一部でしかなく、紙数の割合としては少ないのだが、敗戦後の日本人の意識調査の結果は非常に興味深い。戦前は自明だった帝国主義から一転し、敗戦直後の日本人の多くは戦争に対して非常に強い忌避感を隠さず、平和とデモクラシー、そして経済発展による国家の繁栄を希求する。このような急激な意識の変化の反面、アジア諸国に対する蔑視や、戦争の最高責任者であった当の天皇への責任追及の声の小ささなど、戦前からあまり変わらずに持ち越されている側面も注目したい点である。
なお、もちろん戦争を経て他のアジア諸地域の人々への深い罪の意識を自覚する日本人も少なくはなく、本書でもその声が紹介されており、著者はそのような人々の特徴として、「激しい戦闘や苦戦・飢餓を体験したり、アジアの民衆と密接な交流を持った」という個人的な体験の有無を挙げている。逆に言えば、このような個人的な体験を欠いた人々においては、戦前の意識が持ち越されやすかったともいえる。
本書においてもっとも印象に残った点は、戦争前後の民衆が国家に求めるところが対極といえるほどに違うことである。民衆といえば、戦時中においては政府や軍部、天皇によって振り回され、戦後もアメリカ主導で成立した国家のレールに乗ることを強制させられる弱者というイメージをもちやすい。しかし、戦前と戦後の日本という国のあり方の変化と、民衆が求めた国家像に強い関係性がみられることは、本書を通して見れば明白に思える。当たり前のようではあるが、人々が何を求めるかが国家に多大な影響を与えるという点は、現在にも当然あてはまるところだろう。続きを読む投稿日:2022.08.17
解説=加藤陽子
https://www.iwanami.co.jp/book/b611144.html投稿日:2023.04.15
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