半導体有事
湯之上隆(著)
/文春新書
作品情報
経済安全保障の最前線!
アメリカが中国に突きつけた異次元の半導体規制。このままだと中国の半導体工場はやがて稼働できなくなる。追い詰められた中国が狙うのは、世界のトップ企業、台湾のTSMC――。世界中が半導体製造能力をめぐる競争に駆り立てられているなか、日本は再び失敗を繰り返すのか? 新会社ラピダスのいう、「2027年までに2ナノの最先端半導体をつくる」なんてできっこない!
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 半導体有事
- 著者
- 湯之上隆
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2023.04.20
- Reader Store発売日
- 2023.04.20
- ファイルサイズ
- 19.8MB
- ページ数
- 256ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.4 (11件のレビュー)
-
半導体のサプライチェーンのチャート、関連企業のランキングやその推移などのデータが豊富で全体を把握しながら読み進められてよかった。
筆者のスタンスは明確なので、ーー日本の政策は経産省が前面に出てきてい…る時点で失敗する、ラピダスの戦略は前提に疑義あり、半導体産業のグローバル化は必然であるーー
それを前提に読む必要はある。続きを読む投稿日:2024.03.02
熊本へのTSMCの工場進出と北海道千歳のラピダスの立ち上げによって、日本の半導体はかつて世界を席巻した輝きを取り戻せると思っていた。しかしこの本を読む限りそんなことはとてもあり得ず、とんでもない楽観的…妄想に過ぎないことを思い知らされる。そして強いと思っている半導体の製造装置や材料分野もシェアや伸び率が下がり、欧米に追いつかれつつあることも書かれている。筆者は地政学上の課題はあるにせよ、今の国ごとのバラバラな投資競争に対しては相当の危機感を持っている。政府の補助金は熊本や千歳にではなく、まだ辛うじて強さを保っている製造装置と材料分野の一段の強化にこそ注ぐべきであること、そして日本は教育体系を変えて、小中高から半導体技術者の人材育成を図る政策が必要であるとも言っている。
湯之上隆の基本情報とデータに基づく冷静な分析は自分の未知の楽観を打ち砕き、日本の半導体産業政策のあるべき方向性を示している。
半導体には演算をするロジック半導体、データを保存するメモリ半導体、電気・音・光・音・圧力などを処理するアナログ・パワー半導体がある。2020年のコロナ禍でロジック半導体の不足が深刻になり、PC・スマホ・自動車そして家電製品やコロナ用の医療機器も作れず大変なことになった。半導体の受託生産(ファウンドリー)世界一(60%)のTSMCに注文が殺到し、同社の存在が世界規模でクローズアップすることになる。
そもそも今回の半導体をめぐる世界の動きは、中国が2015年に「中国製造2025」を制定し、軍事技術と宇宙産業で米国を凌駕する目標を掲げ実行してきたことから始まる。米国は国家安全保障上中国の半導体産業を押さえ込まなければならなくなる。
2020.5.4 TSMCがアリゾナに進出することを決め、中国のファーウエイに対する半導体の輸出停止を決めた。米国は5nmの半導体製造技術を手に入れ、5G通信基地局で世界制覇を目指すファーウエイの野望を叩き潰すことに成功した。これが一つ目のターニングポイントである。
二年後にCHIPS法が成立し、補助金受給後十年は中国の先端半導体製造施設には投資できないという「ガードレール」を作動させ、台湾はもとより韓国のサムスンやSKハイニクスにも決断を迫る。
2022.10.7更なる規制を発表し、中国の軍事技術に使われる恐れのあるスパコンやAI半導体の開発を完全に押さえ込むことを決定。設計ツール・ソフトウェア・製造装置など技術提供に網を張り、日本やオランダにも足並みを揃えることを求めた。これは二つ目の決定的なターニングポイントで、中国の半導体産業の息の根を止めるようとするものであり、中国に「目に見えない弾道ミサイル」を撃ち込んだようなもので、中国の台湾への軍事進行を誘発する可能性もある。
12/9 TSMCの創業者モリス・チャンはアリゾナ工場開設式でバイデンやトム・クックを前に「グローバリズムはほぼ死んだ、自由貿易もほぼ死んだ・・・多くの人は復活を望んでいるが、私はそうなるとは思わない・・・」と挨拶した。台湾では全土に十万五千ヵ所のシェルターを整備し定住人口の3倍超の8600万人が収容できる体制を整えている。
現在TSMCは世界の7nm以降の最先端半導体の90%以上を製造。工場進出の話では、アリゾナでは5〜4nmに加え第二工場も予定、熊本では28/22〜16/14nm第二工場では7nm。シンガポールやドイツの28/22nm製造の工場建設も検討。中国が軍事侵攻してきたら、TSMCは自ら半導体工場を破壊する可能性も考え、保険の意味から他国・他地域に分散することを始めた。事態は想像以上に深刻である。
一方、日本では通産省が国策で巨額の補助金を拠出し熊本と千歳で半導体工場の立ち上げを始めた。
熊本工場はTSMC70%・ソニー20%・デンソー10%の出資比率で28nmのロジック半導体を生産、ソニーのCMOSセンサーは後工程は台湾で、最終製品への組み込みは中国で行い、売り上げや利益貢献はシェア並みである。補助金は誰の何のためか?
又、千歳のラピダスに至っては27年に2nm量産を謳っているが、小池社長の「世界一の超短TATのファウンドリー構築」という日立時代のトレセンテイ失敗の再挑戦という過去に拘った戦略としか思えない。技術面で微細化の土台が全くなく専門の技術者もいない、IBMとIMECでは全く無理。TSMC・サムスン・インテルでも苦戦している先端半導体を9世代もジャンプして生産するのは不可能である。誰の(ファブレス)どのようなロジック半導体を作るのかもわからない。
5〜7兆の資金が必要。エルピーダの二の前になりかねない。
(どちらも日本のファブレスメーカーと共進関係を構築できるし、工場建設で地域の雇用や資材調達など多くの需要や波及効果も期待できると思う)
・AIのシンギュラリティが2045年頃の到来を予想
すると2050年頃の半導体出荷額は2020年の8倍
の4兆8000億ドル(約624兆円)となり、今の
日本のGDP(546億円)を超える規模になる。(自動
車産業は22年で約70兆円)
・TSMCを操っているのはアイフォーンを開発・
販売している米アップルである。(強力な製品をも
つファブレスとファウンドリーの強い共進関係)
・「2027年までに2nmを量産する」と言っている
千歳のラピダスに税金を注ぎ込んでいる場合ではな
い。「ミッション・インポッシブル」、微細化の土台
が全くない、2022.12でTSMCが3nmに到達し
サムスンは5/4nmでインテルが10/7nmのレベル
、日本は40nmレベル止まりの現状。
・TSMCは25年に2nmの量産を目指して必死、最
先端の量産・試作・R&Dで精一杯、28nmの熊本
誘致申し出は渡りに船であった。(TSMCの工場を
世界分散しても最先端は台湾か米国のみ)
・熊本工場はソニーとデンソーの28/22nmと
16/12nmの生産であり、28nmはプレーナ型の
最終世代、16nmでは自動運転のレベル4及び5の
最先端半導体は生産できない。
・7nm以降にはEUV(極端紫外線露光装置)必須、
ASML(蘭)が20年かけて量産、年数十台の生産
が限界、1台200億、TSMCは100台保有(年100
万回練習)、サムスン35台・インテル15台、この
獲得競争(TSMCとASMLの共進化)
・日本の半導体産業は挽回不能、特にロジック半導体
については今からやるのは無理。
・各種の半導体材料、前工程の5〜7種類の製造装
置、また装置が欧米製であっても各装置を構成
する数千点の部品のうちの6〜8割は日本製であ
り、ここに日本は高い競争力を持っている。
(唯一残された日本の希望の光、最後の砦)
・しかし「装置と材料産業は強い」という思い込み
が最も危険で、既に売り上げの伸び・シェア・成長
率が下がり「危機的」な状況にある。
・経産省や政府は半導体の装置や材料産業をこそ強化
すべきである。
・技術者を10年で3.5万人増やすため、教育改革を
し小中高大学のすべてに半導体教育を取り入れ、
義務教育化し人材育成をする。
・・・
熊本や千歳の当該責任者や担当者は以上のようなことは既に十分わかったうえで今回のプロジェクトをはじめているはずである。確かに政策的・戦略的・技術的にも極めて難しい針の穴を通すような難作業であることは事実だと思う。しかし、そもそも事業を起こす・立ち上げるということはそんな無理なことへの人間の挑戦であり、現実のダイナミズムは評論家の静態的な分析とは違う。これだけの否定的な状況を叩きつけられても、理屈ではわかるが、やはりまだ関わる人達の人智を超えた狂気に期待して成功することを祈りたい。
ただ、政治家や官僚のサポートは当てにならないことはよくわかる。これは民間でやり切る覚悟が必要だ。
続きを読む投稿日:2024.04.04
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。