この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
これを「読み終わった」に登録できる喜びといったら。(期間的な意味で)十二国記の次に続きを待ってた本でした。
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ポロポロと、次巻ではもう会えないキャラクターが出始めたけれど希望もあった。最後まで結末を見届けたいな。投稿日:2023.05.01
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上巻で大気制御衛星を奪取した魔法士(生体コンピュータi-ブレインを先天的あるいは後天的に脳に埋め込んだ人間)の国家 賢人会議は、続いて人類の殲滅にフェーズを移行する。その先頭に立つのは2本の騎士剣と2…つのi-ブレインをもつ特異な能力を持つ騎士ディー。彼は恋人であるセラの居場所を作るために賢人会議に加わったのだ。
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しかし、実際に人類の殲滅へと動き出した賢人会議の内部も一枚岩ではなく、衛星を奪取する際には、攻撃してくる軍人を殺すことができていた賢人会議の魔法士たちも、一般市民の攻撃に対しては躊躇するものも出てくる。さらには、科学技術的なサポートをしていた天城真昼の死によって、次第に魔法士たちは万全の状態で出撃するのが難しくなっていく。そして、賢人会議の代表であるサクラは、大気制御衛星から出てくることができず、通信状況も不安定な状態にあった。これらによって、徐々に不安定さが増していく賢人会議。
一方、人間の側は、大気制御衛星を奪取されたことで、人間が一定数以下になると、賢人会議によって、遮光性の雲の除去システムが起動されて、雲と一緒にi-ブレインを持たない人間は分解されてしまう危機にさらされていた。この状況を打破するべく、大気制御衛星への大規模なハッキングを仕掛けることを決断する。そのためには、現在の人間の拠点(シティ)の要となる生体コンピュータがすべて破損する可能性があり、さらには滅ぼすべき相手である魔法士の力が不可欠という非常にリスクと困難を極める作戦であった。
その作戦の遂行のために、天城錬の恋人で、特異な力をもつフィアが狙われる。賢人会議にも所属せず、人間側として戦うこともしてこなかった天城錬とフィア。フィアの選択は、大気制御衛星へのハッキングに協力するというものだった。天城錬にはその真意が分からなかった。
ハッキングを食い止めようとする賢人会議とハッキングを邪魔させまいとする人間側。魔法士たちは一騎当千の力を奮って、ハッキングをしている中枢の生体コンピュータの前までやってくる。その先頭に立つのは騎士ディー。そこで待ち構えている天城錬と量子力学的制御を操る格闘戦最強の魔法士イル。
この戦いにおいても、上巻と同じ過ちが繰り返される。確固たる意志を持つディーと「何をしたらいいのか、どうしたいのか分からない」天城錬。両者は拮抗した戦いを見せるが、土壇場でその差が表れる。確固たる意志を持つ者たちに引きずられて各方面で戦局はどんどん進んでいき、その局地として、戦いの天秤はふいにディーに大きく振れる。生体コンピュータは破壊されてしまう。
大気制御衛星にハッキングを仕掛けていたフィアは、その内部で賢人会議の代表サクラと対峙する。そして、サクラの誰にも打ち明けていない真意を知ることになる。しかし、あと一歩のところでハッキングの補助機関である生体コンピュータ破壊され、フィアの意識は身体に戻ることができずにどこかへ行ってしまうのだった。
人類は後戻りができないところまで来てしまっていた。世界再生機構は為す術もなく、介入も虚しく、事態は悪化し、それぞれの実力者たちもそれぞれの責務との天秤に動かされ、人間側でも魔法士側でもないという立場をとり続けることができなくなっていった。いずれかが勝ち、他方を滅ぼせば、人類を絶滅の危機に追いやっている大気制御衛星の暴走による難分解性で遮光性のある雲は除去されて、人類は太陽光エネルギーを再び活用することができるようになる。しかし、そもそもこの大気制御衛星の暴走自体が、実は暴走ではなく人類を救うために命を賭して魔法士によってなされたものだというのだから、どちらに義があるとも分からない。ただ、戦争を止めれば、雲は除去されず、人類は近いうちに滅びることは想像に難くなかった。それでも曖昧な立場をとり続けることの困難さを感じていた。
しかし、事態は待ってはくれない。
生体コンピュータを破壊したディーは返す刀で、別のシティを襲撃し、その市民を殲滅する作戦を立案する。それを食い止めるべく、最強の騎士 黒沢祐一が出撃する。黒沢祐一の脳は過去の大戦からの蓄積疲労により、すでに壊死しようとしていた。i-ブレインを起動したら死ぬ、と言われているそんな状況で、新世代の最強の騎士であるディーの前に立ちふさがる。ディーにとっても多くを教えてくれた師である黒沢祐一であったが、対峙する以外の道はすでに残されていなかった。黒沢祐一は死の淵において、ついに騎士の極致に至り、ディーを圧倒し、賢人会議の侵攻を食い止めることに成功するのだった。彼自身の命と引き換えにして・・・。
という中巻でした。
状況はどんどんと取り返しのつかない方向に進んでいき、極端な思想に突き進んでいきます。それについていけないものが出てきたり、逆に立場をあいまいにしておけないものが出てきたりして、実力者たちがあちらこちらに陣営を移っていきます。黒沢祐一が死ぬ展開は、天城真昼のときも思いましたが、まさかこの人物が退場するとは・・・という驚きがありました。黒沢祐一は1巻から度々登場しては、まだ精神的に発達途上である各主人公たちに示唆を与え、成長させてきた人物でした。次第に大局的に世界を見定めている指導者を失っていくこの物語がどこへ進んでいくのか未だ不安の中にあります。続きを読む投稿日:2023.07.02
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