事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方
澤康臣(著)
/幻冬舎新書
作品情報
デジタル情報の総量はこの20年で1万6000倍になったが、権力者に都合の悪い事実は隠され、SNS上にはデマや誤情報が氾濫する。私たちが民主主義の「お客様」でなく「運営者」として、社会問題を議論し、解決するのに必要な情報を得るのは、難しくなる一方だ。記者はどうやって権力の不正に迫るのか。SNSと報道メディアは何が違うのか。事件・事故報道に、実名は必要なのか。ジャーナリズムのあり方を、現場の声を踏まえてリアルに解説。ニュースの見方が深まり、重要な情報を見極められるようになる一冊。
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澤康臣(1966年~)氏は、東大文学部卒、共同通信社の社会部、外信部、ニューヨーク支局、特別報道室等の勤務を経て、専修大学文学部ジャーナリズム学科教授。共同通信社勤務時には、「パナマ文書」の調査・報道…の担当、「国連記者会」(ニューヨーク)理事、英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員等も務めた。
本書は、この20年間のデジタル技術の飛躍的進歩とインターネット情報の指数関数的拡大を背景に、ニュースや報道(所謂「ジャーナリズム」)とその他の情報の区別が曖昧になる中、著者が30年間記者として働いた経験を踏まえて、ジャーナリズムの意味について綴ったものである。
ジャーナリズムとは如何にあるべきかについては、米国の本『The Elements of Journalism(ジャーナリズムの原則)』から、報道のおきて10ヵ条として以下が引用されている。
①ジャーナリズムの第一の責務は真実である。②第一の忠誠は市民たちに対するものである。③その真髄は事実認識の厳格さにある。④その仕事をする者は報道対象から独立を保たねばならない。➄独立した権力の監視役を努めなければならない。⑥皆が批判と歩み寄りの議論をする場を提供しなければならない。⑦重大なことを面白く、自分事に感じられるよう努めなければならない。⑧ニュースがものごとの全体像をバランス良く示すように保たねばならない。➈その仕事をする者は個人としての良心に従うことが許されなければならない。➉市民もまたニュースに関して権利と責任がある。
本書の内容は、過去の報道の事例等を引いて、この10ヵ条の重要性を説明している部分が大きいが、更に、SNS全盛の時勢を踏まえて、SNSとジャーナリズムの違いやSNSの問題点(偽情報・誤情報を含む玉石混交であること、自分好みの情報が集まるシステム的な問題、匿名性の問題等)、また、ニュースにお金を払うことの意味等についても、詳しく述べられている。
私は以前からジャーナリズムに関心を持ち、本書に出て来るノンフィクション作品の多くも読んでおり、著者の主張の大半はこれまで感じてきたことなのだが、一点新たに考えさせられたのは、「実名報道」の意味である。日本ではしばしば、被害者や被災者(場合によっては、加害者も)を、本人や家族に配慮して、匿名で報道することがあるが、著者は、基本的には実名で報道するべきというのだ(欧米では実名報道が原則である)。それは、「本人や家族が公表を望むかどうか」と「社会やその歴史にとって重要な情報かどうか」は全くの別問題であり、社会をより良くしていくために必要なことだという。そして、実名報道によって、取材や報道で嫌な思いをしたり、SNSで誹謗中傷を受けたりする現実も理解しつつ、それでも、「平穏や秩序のため情報を統制する社会」よりも「市民が情報を生かし、差別や偏見をしない社会」という理想を追求するべきと強調する。
そして、上記を含めて、ジャーナリズムの最も中心的な役割とは、「市民が民主主義の『運営側』として、必要な情報を得る」ようにすること、という著者の軸には全く振れはない。
ハウツー的な内容を期待すると少々肩透かしを食うが、ジャーナリズムに関心のある向きには興味深い一冊だろう。
(2023年6月了)続きを読む投稿日:2023.06.30
毎日新聞202345掲載
朝日新聞2023527掲載 評者:三牧聖子(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科准教授、国際関係思想、日米関係史他、作家)投稿日:2024.02.23
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