この作品のレビュー
平均 4.0 (333件のレビュー)
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【読もうと思った理由】
以前、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(下巻)」の感想で書いたが、元々村上春樹氏の苦手意識を克服した際に、今後読みいたい長編小説にラインナップしていた。ただ実は、…苦手意識を克服する前からこの小説だけは読まないといけないと思っていた。なぜなら、村上氏の現在の年齢(74歳)と今までの長編小説の執筆ペースを鑑みると、今作品が生涯で最後の長編小説になる可能性はそれなりに高いと思ったからだ。
また村上氏も当然頭の良い方なので、そういう可能性は多分にあると分かった上で、執筆したはずだ。そう、作者も読者も最後の長編小説となる可能性が高いとわかった上なので、当然思い入れも強ければ、熱量(エネルギー)が圧倒的に過去作品とは比較できないほどに、溢れかえっている。何か村上氏から強烈なメッセージがあるだろうと、いや、あるはずだと。なので、誰に頼まれることなく、期待値MAXで読み始めた。
【今更ながら村上春樹氏とは?】
(1949年1月12日 - )日本の小説家、米文学翻訳家、エッセイスト。京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市に育つ。早稲田大学第一文学部演劇科卒、ジャズ喫茶の経営を経て、1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。当時のアメリカ文学から影響を受けた乾いた文体で都会生活を描いて注目を浴び、時代を代表する作家と目される。1987年発表の『ノルウェイの森』は上下430万部を売るベストセラーとなり、これをきっかけに村上春樹ブームが起き、以後は国民的支持を集めている。
その他の主な作品に『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』など。日本国外でも人気が高く、現代アメリカでも大きな影響力をもつ作家の一人だと言われている。2006年、民族文化へ貢献した作家に贈られるフランツ・カフカ賞を受賞し、以後ノーベル文学賞の有力候補と見なされている。デビュー以来、翻訳も精力的に行い、スコット・フィッツジェラルド、レイモンド・カーヴァー、トルーマン・カポーティー、レイモンド・チャンドラーほか多数の作家の作品を訳している。また、随筆・紀行文・ノンフィクション等も出版している。ビートルズや ウィルコ といった音楽を愛聴し自身の作品にモチーフとして取り入れるなどしている。
【あらすじ】
十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が長く封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。
【感想】
まさか、村上氏の作品でここまで分かりやすい作品と出会えるとは、想定外だった。小説家にしては珍しく、作者本人が“あとがき“を書いているのも、僕はあまり記憶にない。あとがきを書くほどにどうしても村上氏は読者に分かって欲しく、自分の思い入れがそれだけ強い作品になったのだろう。
他の読者の方が数多くレビューをあげていらっしゃるので、未読の方でもご存じの方も多いと思うが、今作品は過去に村上氏が執筆した「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と対をなしている、ある種続編のような作品だ。なので最初、第一部を読み始めた際は、小説の概要があまりに似ているので、少し戸惑ったほどだ。そう、言ってしまえば、外的要因(環境)が遜色なくまったく一緒なのだ。「壁で閉ざされた街」も「一角獣」も、本人としゃべれる「影」も、仕事としての「夢読み」も、すべて一緒だ。何も変わらない。違うところは、いわゆるソフト部分だ、そう、登場人物がまったく違う。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と構成が、ほぼ一緒の第一部だけであれば、正直言って感動もあまり感じなかっただろう。
ただそこは世界的に著名な小説家である村上氏。第一部はただの序章にすぎなかった。物語の肝となるのは主人公が成長し、人生経験も積んだ40代になった二部からが、俄然面白さが増してくる。個人的なことで恐縮なのだが、本作の主人公、二部の年齢が現在の自分の年齢とニアリイコールなので、当然作品に対する没入感も違ってくる。生き方や物事の捉え方に共感できるところが多いし、ある意味自分を投影できる。
何かのコンテンツで読んだのだが、村上春樹氏が海外でここまで評価されているのは、「この物語は自分一人のために書かれた作品なのではないか」と、錯覚してしまうところにあるんだという。今作を読んで僕も、その錯覚に恥ずかしながら陥ってしまった。それほどに読者を自分の世界観に引き込む力が、他の作家と比較して強いのだろう。村上春樹氏をもともと好きな方は、とうぜん既に読んでいる方が多いと思うので、出来れば村上氏をあまり好きでない方に、ぜひとも読んで欲しい作品です。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を先に読んでいただければ、こんなにも理解しやすく、物語に没入できる作品も珍しいと思います。村上春樹氏に対する見方が、おそらくガラッと変わるはずです。
【本作を読んで得た気づき】
読了済の一定の割合の方に、共感いただけると思うのだが、今作は作者のメッセージ性が強い作品だ。あくまで個人的に感じた村上氏の思いとして、今作で読者に伝えたかった思いを下記のように感じた。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」も今作も、意識と無意識の間(はざま)にある、なかなか普通に生活していてはたどり着けない境地にフォーカスした作品だと思う。色々な条件が重なったときに初めて辿り着ける境地、いわゆる仏教でいうところの「悟り」であったり、中国古典思想家の老子が説いた「道(タオ)」であったり、西洋哲学でいうところのプラトンの「イデア」であったりするのだろうと。その境地に辿り着けば、多分今までとまったく違った感覚で日々の生活を送れるのであろうと。
出来れば死ぬまでにその境地に至ってみたい気持ちが最近強くなってきた。というのも仏教でいう悟りの概念は、個人的に学んできたお陰でそんなにズレることなく分かってきた認識はある。ただ概念としてわかっているだけの人と、実際に悟れた人とは雲泥の差がある。COTENの深井龍之介氏も言っていたが、概念だけを理解するのと、体感として「悟る」のは、まったく別物だ。どうすれば体感できるのか、普通に考えれば僧侶のように厳しい修行を行なっても、悟りの境地に到達できる人なんて、ほんの一握りだ。
ただようやく分かってきたことがある。本を読んでいるだけでは、おそらく一生その境地には至れないことだけは、なんとなく分かってきた。最近、海外の著名な経営者がマインドフルネス(坐禅)にハマってしまうのも、ようやく腑に落ちてきた。スティーブ・ジョブス(故人)もエヴァン・ウィリアムズ(Twitter創業者)も、彼らのようなエグゼクティブは、「実践主義には限界がある」という危機感を抱いている。論理的な思考だけでは突破できない壁があることを、知覚しているんだろう。だからこそ、自分の枠を超えるために哲学や思想を身につけなければと感じているんだろうなと。世間で役に立たないと思われている哲学や禅に興味を抱くのは、そのあたりが背景にあるのだろう。
多分いま自分で目指している方向性は、そこまでズレている感覚はないので、このまま自分のできる範囲で、読書と並行して体感する思考(瞑想のようなもの)も実施していこうと思っている。どうせ一回しかない人生、自分が本当になりたい自分を目指さないと、後で後悔するだろうから。
【雑感】
次は「ヒエログリフを解け」を読みます。この本はフォローさせていただいているKOROPPYさんの感想から知った作品です。KOROPPYさん、その節はありがとうございました!これだけ世の中に本が溢れていても、自分の興味のど真ん中の本にはそうそう巡り会えない。ただこの本は、「ロゼッタストーンに挑んだ2人の天才の究極の解読レース」という副題がついているが、当然の如く、ノンフィクションだ。歴史好きとして、こんなに興味をそそられるタイトルは滅多にない。この上なく期待して読みます!続きを読む投稿日:2023.06.03
初めて村上春樹をKindleにて読む。
前情報一切無しで読み始めたため「あれ…この設定、前と同じ…?なんで…!?」と混乱しながらも読み進め、最後のあとがきで納得。
ハードボイルドワンダーランドは1番と…言って良いほど好きな話ではあったものの、すでに詳細を忘れてしまったので再度読む必要があるなと。
そして何より本編…
村上春樹らしさを感じつつ、割と読みやすく、次をワクワクしながらめくったら、え?あとがき?え?話の続きは!?!?!?と混乱した終わり方。私の想像力がんばれ。
まだ把握できていない内容も多いので、多くの方が書いているように、あと何度か読み深めていきたい。(特に主人公が就職先の図書館を探すあたりから)なにより子易さん…あなたにまた会いたい…!
そしてコーヒーとブルーベリーマフィンが食べたくなるお話でしたね。マフィン焼こうっと。続きを読む投稿日:2023.09.11
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