楊花の歌
青波杏(著)
/集英社文芸単行本
作品情報
【第35回小説すばる新人賞受賞作】
一九四一年、日本占領下の福建省廈門。
大阪松島遊廓から逃走して、上海、広州、香港と渡り歩き、廈門に辿り着いたリリーは、抗日活動家の楊に従い、カフェーで女給として働きながら諜報活動をしていた。あるとき、楊から日本軍諜報員の暗殺を指示され、その実行者として、琥珀色の瞳と蛇の刺青が印象的なヤンファという女性を紹介される。
中秋節の晩をきっかけに強くヤンファに惹かれていくリリーにとって、彼女と過ごす時間だけが生への実感を持てるひとときになっていた。
しかし、楊から秘密裏に課されていた指令は、暗殺に失敗した場合はヤンファを殺せというものだった・・・・・・。
戦時下の中国・廈門を舞台に流転する女性たちの愛と葛藤を描く、圧巻の熱量を放つ第35回小説すばる新人賞受賞作。
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商品情報
- シリーズ
- 楊花の歌
- 著者
- 青波杏
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文芸単行本
- 書籍発売日
- 2023.02.24
- Reader Store発売日
- 2023.02.24
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (12件のレビュー)
-
1941年日本占領下の福建省廈門。
この地でリリーはカフェの女給として働きながら諜報活動をしていた。
そこでヤンファと知り合い、惹かれていくのだが秘密裏に出された指令があった…。
この時代に生きた彼…女たちは、自分の思うままの人生はなく常に不安定なはりつめた生き方しかできなかったようである。
何が正しいのかわからないまま、生きることだけというのも酷である。
ましてや諜報活動すらも自分の意思など関係なしにそうすることが必然であったように…。
毎日、ひりつくほどの張り詰めた気分から早く解放されたいと思っていたのが伝わってくる。
後半、ヤンファの過去が明らかになりその人生にことばを失くしたが、「どれだけ待たせるつもりやったん?もう春やで」のことばにすべてがすっきりと繋がった。
続きを読む投稿日:2023.09.01
このレビューはネタバレを含みます
小説すばる11月号の新人賞フェスに載ってた日月潭の朱い花、がとても良かったが、どうも作者の名前に見覚えがあったので調べてみたら、以前単行本発売の際に冒頭だけ載せるというずるいことをしていた楊花の歌の作…者じゃないか、ということでこれも読んでみたくなった。お金を節約したいのもあって図書館で借りて読み終わった。
レビューの続きを読む
新作同様、会話やシーンのリアルさがすごい。
中国に住む日本人スパイと中国人スパイの、暗殺ミッションを通した心のやり取り… かと思いきや、二転三転というわけではないがだいぶ展開が変わってくる。
元々の話の流れだとどちらかが死ぬんだろうなと思ってたがそんなこともなく、それぞれのバックグラウンド、主に楊花の方のバックグラウンドが語られ、舞台である1941年と行ったり来たりする。
出てくる登場人物が全て善意/悪意の第三者ではなく、誰かのスパイということが分かってきて、でもみんな少しだけ優しくて、なのに死んでいって、悲しくなる。
主人公はミッションとしてはターゲットのすぐ近くにいるというかなり重要なポジションではありながら、詳細については何も知らず、ただ流されて生き、そして生き延びる。
中国の話かと思いきや、舞台にはほぼならないが、登場人物の多くが台湾人。しかも楊花は台湾原住民の出身で、ジピンという新しい部族に追いやられ、滅ぼされ… って、ジピンってジャパンじゃないか!結局は日本の侵攻により被害を受けた人たちばかりで、日本人である主人公に悪意をぶつけるけど、彼らもそんなことしたって意味ないのを分かっており… ただただ悲しい。
でも最後は殺し合いもなく、主人公と楊花が再会して幸せに… 暮らせるのかなぁ。続きを読む投稿日:2023.11.21
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