偽りだらけ歴史の闇
佐藤洋二郎(著)
/ワック
作品情報
さまざまな文学賞(野間文芸新人賞・木山捷平文学賞)を受賞している作家・佐藤洋二郎が、日本史の「嘘」を一つ一つ読み解くことによって、書き下ろした画期的な歴史論。歴史とは「接(つ)ぎ木(き)」のようなもの!だから、敗戦後「民主主義」という言葉によって日本の「歴史」は変わった。でも、「正史」より「稗史」「偽史」のほうに真実の歴史が隠れているのかもしれない‥‥。・「秀吉は中国人」という史書ありき?・「帰化人」を「渡来人」と言い換える愚・どうして「金」は「清」になったのか・信長の比叡山焼き討ちは経済戦争・消された龍馬と西郷の顔・日本文化を破壊した「廃仏毀釈」・日本は上代から軍事大国だった・中韓だけがなぜ日本を嫌うのか・韓国はなぜ「日王」と呼ぶのか・高千穂は天皇の故郷か・・・・・・(著者からのメッセージ)わたしが神社や離島を歩いて愉しんでいるのは、そこに文字を持たない神話や民話、伝承や伝説があるからだが、案外とこちらのほうが「歴史」ではないかと思うことがある。本書は、それらのことを踏まえて、物語ふうに、私流の歴史観を書き綴ったもので、疑念も疑問を持つ人もおられるかもしれないが、興味を持っていただいた方々の、歴史観の指針にしてもらえればと思っている。(著者略歴) 1949年福岡県生まれ。中央大学卒。作家・元日本大学芸術学部教授。主な作品集に『未完成の友情』『神名火』『東京』『グッバイマイラブ』、単行本未収録作品の『佐藤洋二郎選集1 「待ち針」』『佐藤洋二郎選集2「カプセル男」』などがある。『夏至祭』で野間文芸新人賞、『岬の蛍』で芸術選奨新人賞、『イギリス山』で木山捷平文学賞。小社からは小説『未練』を刊行している。
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この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
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タイトルだけ見ると衝撃的に思われるかもしれませんが、本書で書かれていることは、今に伝えられている歴史は勝者が書いたもので、本当のところは闇の部分に隠されているということだと思います。
中学生の頃から…歴史を勉強してきましたが、受験やテストの点数を取る必要がなくなった社会人になったことから、何か違和感を持ちながら歴史の解説書を読んできました。書かれてきた歴史と、本当はどうだったのか、という観点で書かれた本に出会ったのが、井沢氏のシリーズものである「逆説の日本シリーズ」でした。
あれからかなり時間が経過しましたが、歴史界の大御所がお亡くなりになったのでしょうか、もしくはそれまで隠されていた書物が公開されたからでしょうか、本当の姿が少しずつ歴史研究の場を経て、一般人にも見える形で伝わってきた様相です。歴史研究をしているわけでもない一般人である私にとっては好機到来だと感じています。これからも本書のような本を読むことで、自分なりの「歴史の真実」を描けてみれば面白いな、と思いました。
以下は気になったポイントです。
・神社には格式がある、式内社は、官幣社・国幣社とに分かれ、毎年の新嘗祭・相嘗祭などの祈年祭のおりに、神祇官から幣帛を受ける儀式がある。幣帛(へいはく)とは、神々への捧げ物の総称で、幣は麻、帛は絹を意味する。朝廷や国から幣帛は幣帛料をいただく官幣社にも社格があり、大社・中社・古社・別格官幣社とあり、いずれも皇室と関わりの深い神社のことである、別格大寛平社は、明治政府によって新たに作られた神社であり、名神大社は、最も霊験あらたかな神社に与えられる称号で、全て官幣大社である。国幣社とは、各国の一宮(地域で最も社格の高い神社)や地方の有力神社が中心で、国士から幣帛や幣帛料をもらう。一宮、二宮、三宮と続き、律令国一国一社とされている(p14)
・出雲には砂鉄があり、水銀は紀伊半島にあり、丹生(にう)神社がある、希少物質の水銀を求めて人々は熊野の山奥に入っていった、それを支配していたのが猿田彦であった。当時の水銀は、金や銀よりも貴重なもので、それを手に入れた者が富を築いた。大仏建造の際には水銀と金を一定比率で混合した金アマルガムを、銅で造った大仏の表面に塗り、火で炙ると水銀が蒸発して綺麗な金メッキとなると言われていた。空海は唐で水銀の発見方法や精錬技術を学んだ、高野山に住み着いたのも、そこが水銀の産地だったことと関係がある(p30)
・女真族が「金」から「清」という国名に変えたのは、かつて大国だった明から再びの攻撃があると不安だったから、女真族は水への信仰が強い民族でしたが、国名の「金」は火に溶けやすい、いっぽう「明」は「日」と「月」に分けられどちらも「火」を表す、日(火)に負けないのは「水」であるが、それだけでは火は消えない、月も「火」を表す。月の明かりに勝つものは「青空」である、空が晴れていると月の力は弱まる、そうして「さんずい」と「青」を合わせて「清」という名の国ができた(p39)
・日本は古代中国によって「倭」という地名で呼ばれていた、「倭」というのは女性の頭の上に、穀物を乗せていたという意味の文字である。そこから転じて「ちび」という意味になった。日本人が小柄だったということでしょう。それを嫌って、お日様が中国よりも早く出る国、日の本、つまり「日本」という国名になった。初めは倭を「やまと」と読んでいましたが、元明天皇の時代に、二文字を持って佳字にせよというお達しがあり、同音の大和という好字が当てられた。(p41)
・戦いには「戦争」「事変」「乱」「変」がある、戦争は民族・国家間で武力闘争を行うこと、事変は国家間の宣戦布告なしに戦争に入ることで、地域的かつ小規模な争い。乱は、通常内戦を示し、政権に対して反乱を起こすがその政権が変わらないことを示す、変は、その逆で権力が変わることをいう。役という言い方もあり、これも戦争のことを示す(p48)
・菩薩は仏教において、その道を極めようとする人のことを指す、如来は、その道の一切の智慧を修得した人のことで、つまり悟りをひらいた仏陀ということになる、薬師如来とは、病気や薬のことに長けた仏様ということになる(p49)
・源平の戦いは、頼朝率いる源氏と平氏の戦いではなく、実際は源頼朝と平氏を中心としたグループと、伊勢平家を中心としたグループとの戦いということになる。一般に平家の落人と言いますが、平家ばかりではなく落人には平氏も源氏もいた、平氏が源氏の棟梁を立てたという図式で、平家以外の平氏の政権取りがあったということになる(p59)
・律令時代の「戸」は課税単位のことを示し、「大戸」「上戸」「中戸」「下戸」という課税対象者の立場を示した、仕事を終えた慰労の席や婚礼などの祝宴では「大戸」「上戸」の人達はたくさんお酒が飲めて「下戸」には少量のお酒した提供されなかったので、そこから転じて「下戸」はお酒が飲めない人達を指す言葉となった(p65)
・天皇を頂点に国家造りを行った彼ら(薩摩、長州藩)は神仏分離をはじめ、日本を変えてしまった。多くの軍人は反薩摩・反萩出身の人が多いし、今日の原発の多くはどこに造られているかと地図を広げると、圧倒的に反徳川方についた藩が多いことがわかる、福島・東海村・福井・松江(p73)
・近代社格制度を新たに作り天皇国家を構築しようとしたため、寺院は粗末に扱われ、僧侶の生活は困窮する有様となった、現在、戒名をつけてもらいお金を渡すのも、高い墓石代を払うのも、寺院が生きていくための方法であった。様々な忌日や法要を行い、節目ごとに供養するようになったのも彼らの生活が立ち行かなくなったから(p75)
・原爆をどこに落とすかもアメリカは決めていた、広島、長崎以外に、京都、横浜、小倉、新潟が候補に挙がっていた、軍事基地、工業地帯で、その上、周囲が山に囲まれた土地と定めた、山や盆地であれば原爆の威力を確かめられる、広島の次は小倉となっていたが、天候不順で長崎に変更された。長崎にはロマネスク様式の大聖堂(浦上天主堂)は東洋一と言われていた、多くのキリスト教信者が亡くなり、同じ宗教の信仰者が原爆を落とした、日本人の手で壊されたが、アメリカの圧力があったのは否めない(p93)
・日露戦争の1904年に、シフに軍事国債を引き受けてもらったおかげで日本海海戦に勝ったが、その国債を払い終わったのは82年後の、日米敗戦から41年も経過した1985年である、日清戦争の賠償金を本に金本位制を採用し、固定為替レートと各国の通貨を持つことになった、そのことで外国の信用を得て資金調達もやりやすくなったし、関東大震災の復興債・電力債など外貨の借り入れができた(p102)1ドル=1円のレートが敗戦によって1ドルが360倍になったので、シフへの返済額が莫大なものになった(p102)そのために、ユダヤ人利益のために、逆に日本が分割されなかったという喜びも日本人の間に生まれた(p104)
・皇帝には徳があり、そのことは目に見えないので、その判断基準を「法」(律令)と「礼」(政治的制度)で表した、儒教における徳は「仁義礼智信」の五徳が道徳倫理とされ、「孝・悌・忠」の行動の実践に表れるとされている、それを備えたものが国を統治できると考えた(p119)徳だけが及んでいるのが朝貢国、遣唐使や遣隋使を送った頃までの日本は朝貢国となる、「内臣」とは皇帝の徳・法・礼の全てが行き渡っている国や地域で、皇帝の直轄地、「外臣」は、徳と礼が及んでいる地域で、直轄地以外となる(p120)
・マッカーサーは日本を追い詰めなかった、混血化も行わず言葉も奪わなかった、天皇家や皇室を残し、神道の神社すら宗教法人にした、これはアメリカの見識である、ただし、彼らは不敬罪と治安維持法は退けた、それを残せば天皇制が復活すると考えたから(p160)
・武士は士族となり、それ以外は平民となった、士族といっても武士階級には、上士・中士・下士(郷士)と分かれていた、上士にも、馬に乗ることができる上級藩士、若年寄・奉行などの中級藩士などがあり、下士には、白札・郷士・徒士・足軽などに細分化されていた。羽織の色、襟の色も分かれていた、知行取りは、百石以上の武士で、お米とお金の両方が与えられていた(p168)
・農民が帯刀を許されるのには数十両、苗字を与えられるにも百両、大体130ー170領前後で武士になれた、一両を10万円とすれば、1300-1700万円である(p181)
・有史以来、日本は政治制度を何度か代えている、一度目は物部氏を中心とした自然神道による政治、それが仏教を信奉する蘇我氏と争ったのが始まり、蘇我氏が勝利した後は仏教による政治が続いた、徳川家康はそれを儒教に替えて政治を行い、薩長は天皇中心の神道国家を作り上げ、敗戦後はGHQによる「民主主義政治」ということになっている(p186)
・それまでの日本は外国の政治体制や思想を取り入れて国家運営をやってきたが、その文化を遠ざけた第一人者が秀吉だった(バテレン追放令、刀狩など)律令政治、徳川の儒教政治、維新後の欧化政策とは異なり、唯一外国文化を排除した(p194)
・宮内庁発行の書物によれば、忠君として載っているのは、柿本人麻呂、中臣鎌足、楠木正成、北畑親房、豊臣秀吉、本居宣長、である(p198)
・箱根より東に、狛江市・志木市。高麗郡など、新羅や高麗に関係する地名が多く存在するのも、彼らを都に近づけなかったことを示しているし、未開地の開拓のために入植したという方が当たっている、日本においては高麗人や新羅人よりも、百済人の方が優位に立っていたということになる(p214)
・多くの神社は南向きにある、そうすると私たちは北に向かってお辞儀をして手を合わせることになる、つまり天皇(北極星)に手を合わせることになる、北極星は北の空の真上にあって、光り輝いている、地球が周り季節が変わっても光を放ち続ける、自分たちの未来が永遠に輝いてほしいという願いがある(p235)
2023年2月11日読了
2023年2月19日作成続きを読む投稿日:2023.02.19
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