この作品のレビュー
平均 3.6 (7件のレビュー)
-
第三部 村上春樹と「壁抜け」のことを読了。著者によると村上春樹自身、作家人生40年を大きく2つに分けて考えているようだ。
初期の20年(70年代、80年代)の文学的主題の中心は”デタッチメント”。国…内においては全共闘の勃興と盛衰として現れた、世界的な学生反乱の季節(1960年代後半)から出発した村上春樹にとって、マルクス主義が代表するような政治的イデオロギー、つまり人々を動員する回路から距離を取るということだ。イデオロギーの力によって自分の生が歴史上に意味づけられることの昂揚と安心を覚えてしまった人間は思考する力を失い、集団の中に埋没して、破壊と殺人に加担する機械と化してしまう。その時代への反省から村上春樹の典型的主人公の「ぼく」はデタッチメントを選択して生きている。そして、マルクス主義が失敗した後の新しい世界を受け入れながらも、僕たちを見えない力で縛りつけるシステムの持つ暴力性という新たな悪に立ち向かう。そこには、「ぼく」とは異なり、イデオロギーからデタッチできない自らの分身的キャラクターが配置され、彼を横から助ける形で「ぼく」はコミットメントを果たすという構造となる。
作家生活40年の後半20年において村上は、現代における新しいコミットメントの形を模索してきたという。
「村上は創作の力を借りて歴史を物語ではなく、データベースとしてとらえ、既存の文脈を排除して、ゼロから歴史的な事実に向き合い善悪を判断してコミットすること。それが村上春樹が提示した新しい歴史へのアプローチであり、その正しさを獲得することによる自己の確立の方法だった。しかしそこには同時期にオウム真理教が陥り、後にドナルド・トランプが悪用する罠が存在していた。既存の物語から自由になり、イデオロギーから解放された歴史を前にしたとき、人間は自らの欲望に負け、自分が見たいものだけを見てしまう。これが陰謀論の温床となる。村上春樹はここに現代における新しい悪を発見し、対決を決意する。この誘惑に抗うために、彼が導入したのが女性からの承認。自分を無条件に承認する「母」的な女性を設定し、彼女からの承認で主人公は自己を安定させる。ときにはその女性が主人公のコミットメントを代行し、その責任を取る。そして主人公はコミットメントの成果だけを受け取る。」
女性たちが巫女のように超自然的な存在を媒介し、「ぼく」は彼女たちから無条件に肯定され、壁抜けの能力をさえ手に入れる。“デタッチメントからコミットメントへ”を完全に成立させるためには、その性差別的な依存構造に基づいたナルシシズムを解体するしかなく、それを恐らく村上自身も気づいている(負け戦と表現)ものの、どうしようもないというのが著者の分析だ。
70代を迎え、趣味のマラソンも完走できなくなり、肉体の衰えが性欲の減退につながり、村上を駆動していた燃料の一つが尽きかけている...というのが自分の見たてではあったが、無意識に刻み込まれた性差別的価値観の方が深刻となるとなかなかに厳しい。続きを読む投稿日:2024.03.22
SNSの隆盛で承認ゲームになってる世の中に対し、アラビアのロレンスや村上春樹の行動や発言から洞察する精神状態を考察し、その欠陥を浮き出すことにより、遅さから得る自己の取り戻しの持論に繋げる本
投稿日:2023.06.17
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。