この作品のレビュー
平均 4.2 (52件のレビュー)
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本書は、タイトル通り、「死刑」について平野啓一郎さんが講演で語った内容をテキストにしたものです。
平野さんは死刑について、以前は存置派でしたが、いまは廃止派になったといいます。ヨーロッパの人々と…の出会いから変化していったのだそうです。
また、平野さんは小説家らしく、書くことで考えを深めて、存置派から廃止派になったとも語っています。犯罪被害者側の視点を究めた小説『決壊』を書く上での思索が、反対派になった理由でもあるそうです。
本書では、大きく三つの理由から反対を論じられています。ざっくりとご紹介すると、「冤罪の理由」「自己責任論の理由」「倫理上の理由」です。
ところで、一九九七年に、あるTV番組で「なぜ人を殺してはいけないのか」というテーマが高校生から出たそうなのですが、その場の大人はそれにうまく答えることができなかったそうです。
平野さん曰く、殺してはいけない理由は憲法があるから(基本的人権の尊重)だと書かれていますが、なぜか会場の大人にはそれを言う人がいなかったと。
それを、日本の人権教育の失敗につなげて書かれているのですが、このあたりは私も失敗かもなと思いました。
何故なら私は、「相手の立場にたって考えよう」という教育は受けたように思っていて、<共感>についてかなり刷り込まれたものがあると自覚しています。ですが一方で、私は<人権>についてかなり後追いで理解したところがあるからです。
実際に、私が「健康で文化的な最低限度の生活を送ること」などの人権があることを理解できたのは、20代半ばの独学でした。
私的なハナシに逸れてしまいましたが、本書では他に論じられていることとして、<被害者ケアの欠如の問題>にも踏み込んで書かれていました。また<メディアが強める勧善懲悪への共感>という小見出しのところも大変興味深かったです。
絶対的なモンスターとしての人間なんて存在しない。多面的で複雑な人間の、部分部分が見た角度によってモンスターに見える、そういうことなのかな?と思いました。
それが善い方に動けば、有名な大リーガーや天下統一の政治指導者、悪い方に動けば、殺人事件の犯罪者のような。
他の平野さんの著書でも語られている”分人主義”がここでは私のアタマの中を駆け巡りました。
予備知識的ですが、死刑を廃止した国は、(EUもそうですが)イギリスやフランス、ドイツ、イタリアなど108ヵ国が「すべての犯罪に対して廃止」との資料があります。(本書付録「死刑に関する世界的な趨勢と日本」より。)
本書は私が、ある殺人事件のことを思っていた時に、本屋さんで見つけて購入したものです。100ページほどの講演本ですが、非常に多角的ですので、「死刑について」考えること以外にも、「人権について」「被害者ケアについて」「冤罪について」「勧善懲悪について」などの考えを深めるきっかけになると思います。
「深刻で難しい問題を、粘り強く冷静に話し合うことは、民主主義社会に生きている私たちに負わされた課題です。」(p93)
という平野さんの言葉が、強く残って響いています。続きを読む投稿日:2024.01.12
死刑制度について深く考えたことはありませんでしたが、何となくあった方が良いと考えていました。しかし、作者の考えに触れ、感情とは切り離して、国家が合法的に人を殺すことができる恐ろしさを理解しました。ただ…、もし自分が被害者家族になってしまったら、やっぱり死刑をもとめるかもしれません。それくらい難しい問題ですね。続きを読む
投稿日:2024.03.25
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