終止符のない人生
反田恭平(著)
/幻冬舎単行本
作品情報
夢を叶えた瞬間からすべてが始まる
日本人として51年ぶりのショパン国際ピアノコンクール2位の快挙、自身のレーベル設立、日本初“株式会社"オーケストラの結成、クラシック界のDX化
脚光を浴びる若き天才は次代の革命家でもあったーー
いま世界が注目する音楽家の軌跡と未来
■序章 冠を獲りに行く
■第1章 ピアニスト反田恭平誕生
■第2章 いざ、世界へ
■第3章 人生を変えるショパンコンクール
■第4章 僕が世界で2位を獲れた理由
■第5章 音楽で食べていく方法
■第6章 音楽の未来
■第7章 僕を支えた天才たち
■おわりに
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 終止符のない人生
- 著者
- 反田恭平
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎単行本
- 書籍発売日
- 2022.07.21
- Reader Store発売日
- 2022.07.21
- ファイルサイズ
- 2MB
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (41件のレビュー)
-
【感想】
才能以上にとんでもない人脈の持ち主だ、というのが本書を読んだ率直な感想だ。
「地上の星座」。文中で筆者が使うこの言葉は、人と人との出会いが数珠繫ぎに繋がっていく様子を星座に例えたものだ。
…タカギクラヴィア株式会社の高木社長に見初められて、コンサート活動のマネジメント窓口になってくれたこと。タカギクラヴィアのサロンで演奏をするうちに、大手レコード会社である日本コロムビアのディレクターの目に止まり、メジャーデビューを果たしたこと。デビュー後のリサイタルを、たまたま東京フィルハーモニー交響楽団の宣伝部長が聞きに来ており、定期演奏会のオファーをもらったこと。そうした人と人とのつながりによって着実に大舞台でキャリアを重ね、音楽家としての視野がぐんぐん広がっていった。
もちろん、反田氏にチャンスを確実に掴むだけの実力があったのは間違いない。天賦の才を持つ人間が、素晴らしい師匠やライバル、支援者に出会えば、その才能を開花させ世界に名をとどろかせることができる、それを証明するかのような一冊だった。
――若い後輩のみんなに、僕は言いたい。
「誰がどこで聞いているかわからない。チャンスは目の前にあるといつも思え」
たった30席のサロンで開かれるフリーコンサートであっても、客席に誰がいるのかはわからない。「こんなコンサート、手抜きしたって構わないだろう」とわずかでも油断が生じれば、大きなチャンスを失うことになる。客がスマートフォンを見ながら上の空で聴いている会場であっても、雑音の行き交うカフェであっても、絶対に手抜きをしない。一人でも自分の演奏を通して心に染みる経験をしてくれるならそれだけで自分が奏でた音には意味がある。逆に言えば、怠けた演奏を耳にした人は二度と自分の演奏を聞いてくれないだろう。いついかなるときも全身全霊で取り組まなければならない。「手を抜かない」たったそれだけのことなのだ。愚直にして真摯な姿勢を失った者は、人生のチャンスをつかみ損ねるのだ。
――――――――――――――――――――――
【メモ】
反田家にはピアニストもヴァイオリニストもいなければ、プロの音楽家や音楽教師として活用している間も一人もいない。2歳から11歳までサッカーに夢中だったわけだし、音楽の早期教育とはまったく縁がなかった。母はスティービー・ワンダーが大好きで、自宅ではよく洋楽が流れていた。小さいころ僕が触れた音楽はそれくらいだ。
桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」は、1948年に開設された。小澤征爾さんや中村紘子さんが1期生だ。創設以来、僕は史上初めて「入学保留扱い」にされた。
「これから楽典の試験をやります」と言われて試験を受けたら、300点満点中わずか18点というとんでもない成績だった。ト音記号はどうやって書くのか。ドからソは音が何度上がるのか。音程や拍子の取り方なども知らない。西洋音楽の基本をまとめた「楽典」の存在も知らなかったし、そもそもそんな学問があることすら初耳だった。
バッハの曲を練習するとき、合唱の声と合わせるとイメージがつきやすい。録音した自分の演奏を流しながらピアノを弾き、一人でオーケストラごっこをやるのも楽しかった。1日1時間だった練習時間は、いつしか1日3時間まで延びていた。
コンクールで上位に入賞する猛者は、授業がない夏休みには毎日8~9時間も練習するのが当たり前だ。1日12時間も練習する者もいた。そういう人に比べると、僕の練習時間は圧倒的に短かった。ヤンチャ盛りの中学生だから、友だちと外で遊ぶ時間も大切にしていたのだ。
桐朋女子高校音楽科の川島先生のもとでピアノを学び、日本音楽コンクールで史上最年少1位に輝いたことが、世界へ飛び出す決定的な引き金となる。日本音楽コンクール第1位の縁で、ロシアのチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院で教鞭を執るミハイル・ヴォスクレセンスキー先生を紹介してもらい、19歳でロシアに渡った。
2013年9月にモスクワに来てから3年半が過ぎた。外国人は予備科で1年ロシア語を学び、本学科に進んでから5年学ばなければ大学を卒業できない。モスクワで3年半暮らすうちに、丸6年をこの場所で過ごす意味を見いだせなくなってしまった。それは、環境に慣れ過ぎてしまったからだった。そこで、モスクワ国立音楽院を中退することを決めた。
1回のコンサートで、人の心を激しく揺り動かす音楽家になりたい。報酬なんて二の次、三の次で構わない。音楽家としての原点に帰るために、これ以上モスクワにいるべきではないと考えた。
モスクワ国立音楽院を中退したあと、2020年のショパンコンクールを見据えて、ワルシャワ音楽院に入学する。
ショパンコンクールでは、無計画で無鉄砲に本番に臨んだところで、確実に闘いに勝てるわけではない。ショパンコンクールに臨むにあたり、おそらく誰もやったことがないであろう、綿密な準備を整えた。2010年と2015年、過去2回のショパンコンクールの参加者800人が弾いた曲を全部リストアップしたのだ。
ショパンコンクールでは、ショパン以外の音楽家が書いた曲を弾くことはできない。
「正」の字を書いて過去のコンクールを精密に分析するとともに、リサイタルやツアーでショパンを弾きながら、2016~2017年ころから自分の中で曲を精査していった。
予備予選と1次予選では、ショパンのエチュードを弾かなければならない。そこで2017年のツアーでは、全曲ショパンのエチュードばかりを弾くリサイタルを10回くらい集中的に開いた。同じコンセプトのコンサートに10回も臨めば、自分の手指がどのエチュードと合うのか、得意分野がわかってくる。本番のコンサートで実際にエチュードを弾きながら、予備予選と1次予選の選曲をプログラミングしていった。
1次予選、2次予選、3次予選、ファイナルと続くコンクール全体でストーリー性と物語性を見出し、アーティストが何を伝えたいのかを一本串に刺して提示する。プログラミングの妙技、編集の妙技によって、ショパンの見え方は見違えるほど鮮やかになる。こうして長大な時間と労力を注ぎこみ、ショパンコンクール本番での選曲が決まっていったのだ。
韓国でも中国でもベトナムでも、ショパンコンクール第1位のピアニストはとっくに誕生している。日本は世界第3位の経済大国であるにもかかわらず、未だに出遅れて世界一を生み出せていない。もちろん根本的には、ひとえに音楽家本人の実力が至らなかったということだとは思う。その上で敢えて苦言を呈したい。日本政府が文化・芸術の支援に力を入れるどころか、個々人の努力に任せて放置プレイしている現状には堪えられない。日本の国家予算全体に占める文化予算の割合は、フランスの8分の1、韓国の9分の1だ。10倍近い体制で国を挙げて音楽家を支援しているのだから、日本がフランスや韓国に負けるのは当然だと思う。
海外の大学に音楽留学するためには、多額の学費と渡航費用、生活費がかかる。ビザを取得するだけでも、ものすごい量の書類を提出して申請しなければならない。文化庁が若い音楽家に助成金をバンバン出し、経済的に支援してくれれば、どれだけ助かるか。
映画、演劇、音楽などの文化・芸術を、国家をあげて応援する。その努力が結果として結実しているのだ。文部科学省と文化庁は、いつまでも及び腰であってはならない。この点は政治家の皆さんに、政策を思い切って方向転換するべきだと申し上げたい。続きを読む投稿日:2024.01.09
ピアニストが好きだと読む本もそれよりになっていく今日この頃。
ショパンコンクールで2位になった反田さん。
それまでの人生もショパンに導かれたかのよう。
大河の始まりも反田さんのピアノが美しいんですもん…ね。
クラシックに携わってる方々は、クラシックの普及の為に凄く行動されてますよね。
角野さんもそうだよね~と思いながら読んでおりました。
まだまだ29歳、お若いですよね。
これからも期待しております。続きを読む投稿日:2024.02.29
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。