この作品のレビュー
平均 4.6 (8件のレビュー)
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本作は、黒ねこサンゴロウシリーズの最後の1冊である。
おれは日記をつける習慣はない。
三日まえはどこにた?
五日まえはなにをしていた?
ひと月まえは?
そんなことはおぼえ…ていない。
ただ、海があって、船がある。
たいくつなんかしない。
こんなサンゴロウだが、彼は自身の過去の記憶と向き合うことになる。
サンゴロウの失った記憶について、友人で医師であるナギヒコはずっと気にかけている。
ナギヒコは、サンゴロウの記憶について、
うみねこ島にむかうとちゅうで、なにかおそろしい目にあって、
それを忘れようとして消してしまったのではないかと考えている。
記憶は戻らないのではなくて、戻せない。
自分で封印しているのだと。
そして、その鍵はサンゴロウ自身の中にあると。
ナギヒコは、その記憶が戻せないのを、うみねこ島の医学ではどうにもならないのを悔しく思い、
一方、同じく医者であるクルミは、その封印は解くべきではないと考えている。
理由は分からないけれども、自分で選んでいるのだから正しいことのはずだと。
本作は、サンゴロウからナギヒコへの手紙という形式を取っている部分がある。
そこでサンゴロウは過去を回想するのだ。
じぶんがだれなのか、それをさがすのに、船がいちばん役にたつとおもった。
そのとおりだった。
消えた記憶は自分が閉じ込めたのだとしても、
なぜ閉じ込めたのか、例え苦しむことになっても、
それを知らなければならないとサンゴロウは考えた。
サンゴロウは、過去を知るために、ウミガメ号の船長を引退し、今は病床にあるカジキじいさんを訪ねる。
キララの海とハナミサキ海岸のあいだには、ブロックがある。
おれがあそこで難破したときに、ウミガメ号は<ブロックぬけ>をやった。
そうですね?
サンゴロウは、マリン号でブロックぬけをやれないかと考えていたのだ。
おれがこの島にやってきた、その道すじを逆にたどる。
そうすれば、すべての記憶がもどる。
ばらばらのかけらが、きちんとつながる。
いや、そんな保障はどこにもない。
反対に、もういちどすべてをうしなうことになるかもしれない。
サンゴロウは悩む。
そんなとき、北の海でヨットクラブのヨットが転覆し、
カジキ船長の娘のミサキが行方不明になってしまう。
それを聞いたカジキじいさんが病身を押して救出に出てしまうのだ。
サンゴロウは、カジキじいさんを追って、そして、ミサキを助けるために北の海に出る。
そこでサンゴロウが見たものは・・・。
私にはこれ以上を語ることはできない。
ただ、サンゴロウは黒ねこでなければならなかったのだということは言える。
そして、彼の抱える過去―彼は誰なのか、どこから来たのか―とその過去が象徴するもの。
それらを思い出さずとも自然と身に纏って生きてきたサンゴロウは、
この物語の主人公として生きるふさわしい存在だったのだ。
本シリーズは、全体としての文字数はそれほど多くはない。
だが、その余白は物足りなさを感じさせない。
そのまま読んでもおもしろいのだが、余白が深読みを許容する度量のように見える。
本作は、サンゴロウがうみねこ島に来てから3年後と書かれていた。
ケンとミリとサンゴロウの時間的には5年後である『ケンとミリ』が一番最後の話になるようだ。
サンゴロウが誰でどこから来たのかが、シリーズの一番最後に語られ、
それが全体の物語に見事な説得力を与えてくれた。続きを読む投稿日:2010.03.16
このレビューはネタバレを含みます
黒ねこサンゴロウシリーズ、最後まで読み終わりました。
レビューの続きを読む
物語は不思議な始まり方で、一体どのような終わり方をするのか気になっていました。
クールでかっこいい、でも優しい一面もあるサンゴロウ。
物語もサン…ゴロウらしいかっこいい終わり方です。
私には長く乗っている愛車があるので、マリン号とサンゴロウの関係が分かるような気がします。続きを読む投稿日:2022.11.17
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