「少年マガジン」編集部で伝説の マンガ最強の教科書 感情を揺さぶる表現は、こう描け!
石井徹(著)
/幻冬舎単行本
作品情報
儲かる王道マンガのつくり方、すべて教えます。 「少年マガジン」内で“伝説の私家版" 『漫画編集者のための教科書』をアップ・トゥ・デートした完全版。橘玲氏、推薦「目からウロコの面白さ! 」
2021年、史上最高の売り上げ6759億円を記録した「最後のジャパニーズ・ドリーム」MANGA! マーチャンダイジングや権利ビジネスを含めると、もはや1兆円を優に超えると推定される。この「小さな巨大ビジネス」は、机とパソコン、アイディアさえあれば誰でも始められる。さあ、マンガ制作の世界へ、ようこそ!
〈漫画づくりの10カ条! 〉
1劣等感が不可欠。劣等感なきものは去れ!
2「そのうち【傍点4・・・・】面白くなる」連載など、ない!
3カタキ役には生身のモデルを使え!
4最終回から発想してみろ!
5キャラクターは「目」が9割!
6アイディアは口頭で伝えろ、時には体を使え!
7事実に囚われるな、嘘つきになれ!
8漫画はほとんど読むな!
9アイディア(企画)会議では先輩後輩、上下関係なく話し合え! 10部数やDL数を伸ばす方法は、必ず存在する!
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この作品のレビュー
平均 4.0 (4件のレビュー)
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講談社漫画編集者による、マンガへの熱い思い
講談社漫画編集者であった著者が、ライバル誌である集英社少年ジャンプを度々引き合いに出しつつ、日本のマンガやその作り方について熱く語っている。
投稿日:2024.05.14
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このレビューはネタバレを含みます
作家は“育てる”のが普通です。編集者は、ああでもこうでもないと頭を搾り、作家を育てながら伴走するのです。なのに勝手に“育つ”のを待つ編集者が時々いる。確かに、あまりにも絵が初心者的で商業誌に堪え得る…ものではない描き手に対しては、上手くなるまである程度待たなければならない。
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しかしその場合も、主線(輪郭)をもっとハッキリ描きなさいとか、デッサンが多少狂っても思い切り描きなさいなどと指導します。
ただ「“育つ”のを待つ」という編集者は、作家に「ダメだ」としか言わない場合が多い。そういう人の言い訳の1つに「作家の能力を引き出す」という台詞がある。作家の能力を引き出す力があるのなら、すぐにでもそれを引き出した作品ができるはず。作家の能力を引き出すには、その漫画家がどんな世界ならやっていけるのかに気づき、それに加えて具体的なアイディアを出せなくてはいけない。しかし、それができないのです。
こう言い張る人は、漫画家が持ってくる作品にただボツを出しているだけのように見える。彼らは漫画家を"育てる”のではなく勝手に“育ってくれる”のを待っている。これなら誰でもできる。原始農法です。たくさん漫画家を担当して、その中で漫画家自身が育つのをただ待っているだけ。
「作家の能力を引き出す」という行為は本来“育てる”人の言い分です。
普通、真剣に打ち合わせをして対処できる漫画家の数は、編集者1人につきいいところ4、5人です。それなのに20人も担当していてはおかしい。
現代は近代農法です。自分が育てる。本章でこれまでに述べたことをやるしかない。“育てる”能力がどうしたって要る。「作家の能力を引き出す」と言って、ただ漫画家と会って話をするだけでは、40年以上前の編集者のパターン。これならバカでもできる。
【ONE PIECE】
とかく主人公というものは、多くの読者に受け入れられたいので、読者に近い人物を設定しがちです。特に少年誌ではそうなる。いそうでいない無個性な人物になることが多々あります。
少なくとも最初の10話の段階で、ルフィが個性的なキャラクターだとは思えない。みんなに受け入れられるが、これが逆に主人公の個性を薄味にしてしまっている。
それを防ぐ唯一の方法は、周りに面白い人物を配置することです。第1話に出てくるシャンクスという謎の人物はとにかく格好いい。第3話のゾロは圧倒的な存在感がある。このようにどんどん関わる人物を登場させて、これぞという魅力的な人物を主人公の仲間にする手法は、じつはオーソドックスです。
そうやっておおよそ主人公グループができて、その全体の魅力的なキャラクター群の中で、主人公も魅力的な人物に見える。一種の錯覚の利用ですが、かなり有効な古典的手法です。
ルフィの仲間連中は、基本、最初はルフィと対立する。中には徹底的に闘っていたのに結果的には仲間になる。となると、いちばん偉い船長がルフィだから、そういう一癖ある連中を受け入れるたルフィが大物に見える。みんな、なんやかやいってルフィを頭目として仰いでいる。結果、そういうルフィが格好いい。
※「ルフィが無個性(キャラがない)で、個性的な仲間たちの頭目だから格好よく見える」という分析は不十分だと思う。なぜ個性的な連中がルフィを頭目として仰ぐようになるのか。実は、そこがルフィのキャラなのかと。
【はじめの一歩】
一歩が困難に対し何とか努力して克服する。その周りで友人たち(鴨川会長や鷹村)が一歩を応援する。この物語の根幹的パターンが第2話にして完成されています。パターン化をマンネリだとしてマイナス・イメージを持つ人が必ずいますが、愛すべきパターン化もあるのです。演劇や映画などでは、同じものを何度も見に行く人がいます。歌舞伎ファンは毎年、同じ演目を楽しみます。我々だって映画館で一度観たのに、レンタルDVDでまた観たりする。
漫画には、次はどうなるのだろうという興味はもちろんのこと、あの感覚をもう一度味わいたいという興味があります。よってパターン化は悪いことではない。もしウケるパターンを発見できたら鬼に金棒です。もちろん年がら年中、似たような人が似た騒動を起こしているだけの話だったら飽きられる。パターン化でも、毎回、味付けは変える。これはこれで大変な作業です。
主人公が動かないことが漫画では時々あります。主人公が引っ込み思案だったり、気が弱かったりすると、どう動かして物語を進行していいのか、作り手が分からなくなる。
そういう場合、緊急措置として次から次へと新しいキャラクターを出す。その中で動く面白いキャラクターができれば、その人物と主人公を絡めることによって動かせる。一歩は動かしやすい性格ではない。ところが周りに動くいいキャラクターがいるので、彼らと絡んで動いてくれる。「おおよそ一歩グループ」が2話目でできているのはひじょうに有効です。設定上
一歩が主人公ですが、よく読むと「おおよそ一歩グループ」が主人公になっている。
過去に対象年齢に関する議論が編集部で起きたことが何度かあった。この雑誌は大人の読者が多いのだから大人向けに作るべきだという人が何年かに1度、必ず現れる。もしそんなことをしたら、すぐに売れなくなる。
ディズニー映画も観客数としては大人のほうが多いに決まっている。それなら、と大人向けに話を変更したら誰も観に来ない。ディズニーはそこをよくわかっているから、グリム童話やアンデルセンの世界、いわばメルヘンの世界を守り通す。もしかしたら著作権が切れて金がかからないというのが大きな理由かもしれないが。
私が知る天才的な編集者たちは、初めは漫画が好きではなかった人が意外に多い。講談社にもすごい天才が2人いたが、両人とも漫画編集部志望ではなかった。「童話を作りたい」「文芸書をやりたい」と言って入社した。
そのうちの1人、Tさんは「ヤングマガジン」の編集者だった。「ヤングマガジン」はかつて私が所属した「月刊少年マガジン」の隣に編集部があり、Tさんとは時々、話をした。
ある時、Tさんが私に「これは絶対ヒットする」と言った作品があった。その作品を読んだ私は首を傾げました。私だけではない。他の多くの人もそうだった。バストショット多く、しかも主人公が三白眼だった。今でこそ瞳が小さく三白眼の主人公がけっこういるが、その当時はあり得なかった。
しかし、「ヤングマガジン」のアンケートを覗いたらびっくりし、さらに1年後、ぶったまげた。この作品が、きうちかずひろ『ビー・バップ・ハイスクール』(1983~2003年連載)。講談社の漫画単行本の売上新記録を樹立した。諌山創『進撃の巨人』が出てくるまで、20年以上記録は破られなかった。その後もTさんは「え!?」と驚く作品を世に出し、ヒットを飛ばした。常識外の嗅覚があるとしか思えない。Tさんは生涯で漫画の単行本を3冊しか買わなかったという。
もう一人の天才Kさんは、ラブコメを少年誌で初めて始めた人です。一大ブームを起こした。それが、柳沢きみお『跳んだカップル』(「週刊少年マガジン」1979~1981年連載)。少女誌でラブコメがずっとウケているのだから、少年誌でもウケると思ったのだ。先入観が全くない。小林まこと(1958年~、代表作『1・2の三四郎』『ホワッツ・マイケル』『柔道部物語』など)を見出したのもKさんで、ジャンル的に偏りがない。
Kさんは「週刊少年マガジン」編集部の在籍が長かったが、後に「BE・LOVE」の編集長になった。彼が編集長になってすぐに驚いたことがあった。ある時、「週刊少年マガジン」にいる私をこっそり呼び出し、絵コンテの束を差し出していった。
「お前は『泣かせ』が得意だろ。これをおyンで感想聞かせろ」
大先輩の命令なので、私はその絵コンテを一生懸命に読んだ。驚いた。第1話から直球の「泣かせ」だった。事故で失明した女性と盲導犬の話で、よくできてはいるが、大人の女性誌で、これほど直球の「泣かせ」ドラマがウケるか疑問に感じた。
翌日、Kさんから、また呼び出された。それとなく感想を訊かれた。私は正直に言った。すろとKさんは鋭い眼差しで「絶対ウケる!」と断言。この作品が波間信子『ハッピー!』(「BE・LOVE」1995~2010年連載)で、結果、大ヒット。女性誌としては長い連載だったのでご存じの方も多いでしょう。
女性漫画誌の編集部に行って、いきなりヒット作を飛ばすのもすごいが、私が驚いたのはその制作態度です。編集長なので自分の意見を押し通すことだって可能だったと思う。でも、それをしない。
おそらく「BE・LOVE」編集部の部下にも読ませたでしょう。それでも、なお自分の感覚に疑いを持っていた。そこで他部署の、私のような若造にも感想を訊きに来た。これはなかなかできない。自分の中で確信が生まれるまで、とことん他人に訊き、考える先輩の態度に心底、感動した。
2人とも普段は人間的に面白い人と言われていた。それこそ漫画に出てくるキャラクターのようにエピソード満載。しかしそれだけの人ではない。日常生活はかなりいい加減そうに見えたが、作品作りのスイッチが入ると別人になる。「これは絶対ヒットする」とか「絶対ウケる」と言う時の顔には凄味があり、ザ・プロフェッショナルの顔になった。
TさんもKさんも漫画市場においてはマスのメンタリティを持っていたと思う。選挙でいうところの浮動票層です。支持政党はないが選挙に行くこともある。つまり、コアな漫画ファンではないが、漫画が嫌いでもない。まあまあ好き。
浮動票層であるこの2人が面白いと思ったら、漫画全般に好意的で評論家じみたファン層も、だいたいは面白いと思う。なにしろ浮動票層はちょっと面白いくらいじゃ買ってくれない。すごく面白くないと反応しない。そもそも漫画の読者の多くが浮動票層で、面白くなければ雑誌を買う。つまらなければ買わない。「マガジン」なら「マガジン」をずっと買い続けるファンではない。
漫画をあまり知らずに漫画部署に配属された人は、浮動票層の気持ちがわかる。今までの作品に縛られない。こういう映画があったなとか、こういう小説があったな、と発想が多岐にわたる。今までになかったタイプの漫画だっていい、と思える。
一方、漫画を熟知する人は、漫画とはこういうものだという固定観念を持ちやすい。過去の作品で頭がいっぱいで、自分が新しい作品を作ることを忘れる。今までの漫画から発想するので、出来上がってもどこかしら見たことのある作品になる。今までに会った漫画の焼き直しなら縮小再生産に陥る可能性が高い。漫画は歌舞伎や文楽じゃない。いつしか誰も読んでくれなくなる。
もちろん漫画に精通しつつ多くのヒット作を作った人も大勢いる。しかし、よく話を聞くと、すさまじく映画を観たり小説を読んだりしている。続きを読む投稿日:2022.12.22
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