知らないと恥をかく世界の大問題13 現代史の大転換点
池上彰(著者)
/角川新書
作品情報
プーチン・ロシア暴走!――2022年2月、ロシア・ウクライナ侵攻は、世界のパワーバランスを大きく変えた。20世紀の時代に歴史の針が逆戻りしたかのような世界。ロシアVS欧米の対立構造は、「新・東西冷戦」の到来ともいえる。そして、もう一つの大国「中国」はどう動くのか? 混沌とした世界がどこへ向かっていくのか、歴史的背景を交えながら“世界のいま”を池上彰が読み解く。大人気新書シリーズ「知ら恥」の最新・第13弾。激動の時代に欠かせないニュース解説本だ。
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商品情報
- シリーズ
- 知らないと恥をかく世界の大問題
- 著者
- 池上彰
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川新書
- 書籍発売日
- 2022.06.10
- Reader Store発売日
- 2022.06.10
- ファイルサイズ
- 9.2MB
- シリーズ情報
- 既刊14巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (42件のレビュー)
-
【感想】
池上氏の「知ら恥」シリーズ第13弾。書かれた時期は2022年5月であり、ウクライナ戦争勃発から2,3か月経ったころだ。局面としては、ロシアがドネツク州のマリウポリ製鉄所を奪取するも、ウクライ…ナに反撃されて手痛いダメージを受けている......といったところ。
そのため、本書はロシアとウクライナに関する記述が多めになっているが、戦争が始まってからはまだ日が浅い。ウクライナ情勢をより細かく知りたい場合は、他の本を参考にするとよいだろう。
池上氏はちょうど同時期に、「世界の見方:東欧・旧ソ連の国々」も執筆しており、そちらもおすすめだ。学生への出張講義をベースに書かれた本であるため、ロシア問題をかみ砕いてわかりやすく説明している。また、周辺国の歴史にまで遡って書いているため、情報が厚い。
一方で「知ら恥」は、アメリカ・中国といった大国の情報から、普段あまり取り上げられない中東の国の情報までカバーしているのが嬉しいところだ。
ロシア・東欧について知りたいなら「世界の見方」、ロシア以外の国々も含めた広範的な時事問題を知りたいなら「知ら恥」、と併読するのがよいかもしれない。
池上彰の世界の見方 東欧・旧ソ連の国々 の感想
https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4093888507
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【まとめ】
本書の情報は2022年5月時点でのもの。
1 アメリカ
・2022年の中間選挙では、下院は共和党が多数になると予測されている(実際に11月の中間選挙で多数派となった)。
・バイデンの支持率が低迷している。理由は2つ。
1つ目は、アフガニスタンからの完全撤退の混乱。アフガニスタンの政治状況を無視して撤退したため、イスラム原理主義勢力タリバンが政権を再び掌握している。それどころか、タリバンに対する利益供与を禁じた経済制裁によって食料品や薬品が枯渇し、アフガニスタンは過去最悪の人道危機に陥っている。20年経って、結局、逆戻りしてしまった。
2つ目は国内問題。バイデンは社会保障プログラム拡充やインフラ整備など、巨額の財政出動を繰り出した。これが民主党内の中道派と進歩派の間で賛否両論となり、板挟みになっている。
2 ロシアとヨーロッパ
・クリミア併合、ドンバス戦争を受け、ウクライナ国内で「EUとNATOに加盟したほうがいい」という声が高まっていた。
・ロシアの行動原理は「凍らない港が欲しい」であり、不凍港を目指して進む「南下政策」をずっと行ってきた。
・「NATOは拡大しない」と約束したのに、旧ソ連のバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)や東ヨーロッパの国々が相次いでNATOに加盟していった。かつてのワルシャワ条約機構の同盟国が西側陣営に取り込まれていき、プーチンは「西側に騙された」という被害者意識を持っている。
・2014年から8年間、ロシアとウクライナは、ウクライナ東部のドネツクとルガンスクを巡って戦争をしていた。ゼレンスキー大統領はミンスク合意の修正を求めたが、ロシア側が拒否。そこで2021年1月、「我々の領土は渡さない」、「ミンスク合意を履行しない」と宣言した。
対するプーチンは再び軍事的圧力をかけ始め、2022年2月21日、ウクライナ東部の2地域「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」について「独立を承認した」と発表し、その3日後にウクライナに侵攻した。
3 ユーラシア
・カザフスタンの前大統領であったナザルバエフへの抗議から、カザフスタン国内でデモが発生。現トカエフ大統領はロシアに助けを求め、ロシアが軍事介入した。
・イランの大統領に、強硬派のライシ師が就任。核開発が進展する可能性がある。
・トルコの大統領エルドアンの失策によって、急激なインフレが進み、国民が苦しめられている。独裁者であるエルドアンは中国に接近しつつある。
4 中国
習近平が、憲法を改正して国家主席の任期を撤廃し、終身皇帝の座を固めつつある。
習近平は文化大革命2.0を行おうとしている。スローガンは「共同富裕」。金儲けをした経営者たちに寄付をさせたり、資金を人民に流させたりすることで、今度こそ「共産主義の理想」を実現しようとしている。
「豊かになったから、次は平等」。これは理想である。しかし中国は、少数の優れた指導者が民主集中制によって党を運営し、国を指導するという体制は変えない。それが変わらない限り、共同富裕の道は厳しい。
中国は今、猛烈に豊かになって過剰資本の状態である。一帯一路で資本を輸出し、世界に帝国主義を広めようとしている。
5 ゆれる世界情勢
・常任理事国であるロシアが拒否権を発動して、安全保障理事会が機能不全に陥っている。常任理事国が拒否権を乱発できないようにするには、国連憲章を変えなければならないが、憲章の改定には総会の3分の2かつすべての常任理事国の賛成が必要であり、完全に不可能な状態。
・ロシアと中国での言論統制が更に過激に。
・コロナによる格差が拡大し、マルクス経済学が再研究されている。
6 日本の現状
・日本は物価も給料も安く、一人当たりGDPも韓国に抜かれてしまった。先進国の中で賃金や生産性が最低レベルである。日本は失業率が低く休廃業も少ないため、ある意味平等な社会ともいえるが......。
・円の購買力が下がる一方で、石油や小麦の値段が上昇しているというダブルパンチに見舞われているのが今の日本社会。
・日本の自民党でも岸田首相が率いる宏池会の体質は、国際スタンダードでいうと「社会民主主義」に分類される。
岸田氏は池田勇人を参考にしており、「新しい資本主義」(=新自由主義からの脱却)を目指している。
安倍・菅(清和会)は「自助・共助・公助」という新自由主義路線だったが、岸田首相は、アベノミクスは失敗だったと思っているから「分配なくして次の成長なし」と言った。同じ党内でも、トップが変わることによって方針がガラリと変わるのが自民党である。自民党内で、清和会が「右寄り」とすると、宏池会は「中道」。
・自民党が勝ち続けている背景には、「野党が弱すぎる」ことがある。自民党は地方にも議員が多く、後援会もあり、分厚い支持基盤がある。労働組合を除く、医師会や農協などはほとんどが自民党支持。公明党も選挙になれば創価学会の会員が動いてくれる。それに対し、野党候補は、選挙となると、連合が支援しないことには戦えない候補者が大勢いる。続きを読む投稿日:2023.02.17
このレビューはネタバレを含みます
ロシアのウクライナ侵攻、AIの普及、資本主義経済によって引き起こされた格差社会、アフガニスタン問題、もしトラ、中国情勢、台湾有事などなど、「私たちが考えていかなければならない問題がたくさんあるなぁ」と…改めて感じました。特に、ウクライナ情勢に関しては、ソ連時代から今に至るまでの経緯やウクライナがなぜNATOに入ろうとしたのかなど、ふわっと理解しているつもりでも、「細かいことはよくわからない」という状態だったので、改めてことの複雑さを理解し、この問題は一筋縄ではいかないなと思いました。
レビューの続きを読む
他にも、興味をそそられる話題がたくさんあり、サクサクと読み進めることができました。次のシリーズが販売されているみたいなので、購入してみようと思います!とても興味深い、そして、これからの未来について考えさせられる一冊でした。続きを読む投稿日:2024.03.19
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