文明の渚
池澤夏樹(著)
/岩波ブックレット
作品情報
東日本大震災と原発災害から2年.この間,私たちは何をしてきたのでしょうか.そして,何がわかったのでしょうか.ボランティアとして,また取材者として被災地を歩き,被災者とともに,涙し,悩み,考えてきた作家が,この大災害の意味と原発を生んだ文明について,根底から問い直します.信州岩波講座での講演の記録.
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商品情報
- シリーズ
- 文明の渚
- 著者
- 池澤夏樹
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波ブックレット
- 書籍発売日
- 2013.03.06
- Reader Store発売日
- 2022.03.24
- ファイルサイズ
- 7.6MB
- ページ数
- 63ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (8件のレビュー)
-
カテゴリ 「読書(ノンフィクション12~) (70)」
「文明の渚」とはなんだろうか。
魚が陸に上がって人間になって行く一歩を記したように、我々も人間としてさらに一歩を記さないといけない。
そうい…うことをおそらく池澤夏樹さんは言っている。
「これからは農村文明が可能なのではないか。田舎でバラバラに暮らしながら、ツイッターで結ばれている。郵便物や宅配は来る。そして広いところに点在している家だから、自分のところの風車とソーラーだけでまかなえる。周囲から薪をとってくることもできる。そういう拡散型の社会を作ることができないのか。(略)手にしたものを捨てられるかといえば、それが一番むつかしくて、原子力もその一つですが、例がないわけではない。日本人は江戸時代に鉄砲を捨てました。アメリカがいまだにできないことを、あの時代にやってしまったのです。それから最近の例で言えば、フロンガスも手放しました。これも便利なものでしたが、そのまま使い続けていれば紫外線が増えて皮膚がんなどが増加するという怖いものでした。代替品を開発していって、一切つくられなくなっています。さあ、核はどうでしょうか。この電気漬けの生活は捨てられるか」(60-61p)
この小さなブックレットは池澤夏樹さんが2012年8月26日に長野県須坂市で行われた「信州岩波講座」の講演と質疑応答である。質疑応答の話の中で「今回専門家は信用できないということが明らかになった。僕たちが考える際に手元にデータがないときがある。そういう時にまずできることは、勉強することですが、(略)考えて議論して勉強してというのは、容易ではない。しかし、そういうところに来てしまっている。」と言っている。噛み砕いた本として岩波ブックレットを推薦している(^_^;)。確かに「考える」叩き台としてはいいかもしれない。
文学者と科学者の両方の眼を持っている池澤夏樹さんは
「原子力は原理的に人間の手に負えないのでやめたほうがいいと思っています。長年にわたって事故がないように原子力を運転していく能力は、人間にはない」という。(26p)
何故か。
一つは「お金になるから。(略)安全ではないという人たちを追い出して、閉じた社会をつくった。閉じた社会というのは、必ず腐るのです」(28p)
一つは「原子力はもともと爆弾です。それで発電するというのは、ダイナマイトでご飯を炊くようなものです。(略)いくつブレーキを並べたところで、壊れる時は壊れます。」(32p)
一つは「よく人間は道具を使う動物であると言います。しかし、簡単な道具ならばチンパンジーも使うし、上から水面にゴミを落として、餌だと思って上がってくる魚を捕まえる鳥もいます。「道具を使う」というだけでは人間を定義することはできない。あえて定義するのであれば、「道具がなければ生きていけない」存在が人間です。文明がなければ生きていけないのが人間です。自分が作った環境に依存してしまっている。しかし、文明の力には明らかに限界がある。この数十年の文明の発達があまりに急速であったから、つい自分たちは無敵だと考えて、やりたい放題やってきた。しかし、そうではないのです。多分、そういうことを我々は考えて、反省して、あるいは諦めて、覚悟した上で、平静な顔で、さりげなく、普通の日々を送らなければいけない。これは、誰をも安心させないメッセージです。しかし、本来生きていくというのはそういうことなのだと思います。」(37p)
短い文章の中に、実はたいへん厳しいことが書かれていた、そういう「考えるヒント」でした。
2013年4月9日読了続きを読む投稿日:2013.04.21
東日本大震災から1年5か月後に行われた講演会の記録。被災地を何度も訪れた池澤夏樹の言葉には重みがあるけれど、それ以上に心に残ったのは最後のメッセージ。
「よく見て、新聞を読んで、本を読んで、考えて、…悩んで、迷ってください。ぼくはいろいろ言ったけれど、それは全部嘘かもしれない。まことしやかに言っただけで。ある意見を聴いて、ああそうか、と思ったら別の意見を聴いて、いろいろな意見を自分の頭の中でぶつけてみてください。それが多分、それぞれの考える力を磨くことだから」
肝に銘じます。続きを読む投稿日:2019.10.31
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