コンビニ兄弟2―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)
町田そのこ(著)
/新潮文庫nex
作品情報
失恋をして居心地の悪さに高校をサボった永田詩乃は突然綺麗になった祖母と意外なところで出会う。バイト店員・廣瀬太郎は自分のことを退屈な男だと思っているのに、キラキラ美少女がその日常を乱し始める。親友と別離した村井美月は辛い現実を越えて新たな一歩を踏み出していく。大切な想いをささやかにつなぐ場所、名物店長と個性的な客たちが集う小さなコンビニの心温まる物語。
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商品情報
- シリーズ
- コンビニ兄弟
- 著者
- 町田そのこ
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫nex
- 書籍発売日
- 2021.12.23
- Reader Store発売日
- 2021.12.23
- ファイルサイズ
- 3.6MB
- シリーズ情報
- 既刊3巻
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この作品のレビュー
平均 4.2 (249件のレビュー)
-
あなたが行きつけの『コンビニ』を選ぶ理由は何ですか?
今や全国に57,000店もあるという『コンビニ』。都市部などでは今日の気分で行くお店を選べるくらいに、もうどこにでもあるのが『コンビニ』だと思い…ます。もちろん、人によってそんなお店の利用頻度は異なると思います。たまに行くという人から一日三食『コンビニ』飯です!という人まで、その利用の仕方は人それぞれです。
では、あなたはどういった理由で普段利用する『コンビニ』を決めているのでしょうか?立地、チェーン店の系列、店舗の規模等々、その『コンビニ』を選ぶ何らかの理由があるはずです。これこそ、その理由は人それぞれです。他人にどうこう言われる筋合いはありません。毎日利用する場所だからこそ、そのこだわりはそれぞれの人にあっていいはずだからです。
さて、ここに『イケメン』店長がいるという理由でたくさんの人が集う『コンビニ』があります。九州の『門司港』にある『テンダネス門司港こがね村店』というその『コンビニ』。この作品は、そんな『コンビニ』に集う人たちを描く物語。身近に当たり前にある『コンビニ』を背景に、それぞれの主人公たちが抱える悩み苦しみを描く物語。そしてそれは、そんな『コンビニ』を描くその先に、自分も通う『コンビニ』ですれ違う見ず知らずの人たちにもそれぞれに悩み苦しむ人生があることに気づく物語です。
『いってらっしゃいませ』と『帰り際、彼から微笑みと共に送られた言葉が頭から離れない』というのは、主人公の大石和歌(おおいし わか)。『門司港、行きたい…』と『何度目とも知れない呟きを零して』いると『幼馴染の鶴田牧男』に『ぱかんと頭をはたかれ』た和歌。そんな和歌に『うるせえな、さっきから』と言う牧男は『つか何で門司港なんだよ…なんであんなへき地に行きてえの』と訊きます。それに『へき地?よく知りもしないくせに…わたしは行きたいのさ、門司港に…』と返す和歌に『行けば?』と突き放す牧男。しかし、『愛するピピエンヌ号』を『田んぼに落としてしまった』たことをきっかけに『行きたくとも行けない』状況にあることを説明する和歌。『じゃあ、俺が連れてってやろうか』、『和歌が気に入ったっていう門司港、どんなところか観てみたい』という提案に乗った和歌は、牧男が『父から譲り受けた、古いシビック』に乗って出発します。そして、『超観光地じゃん。何あれ、人力車まで走ってる!』、『すごいだろー。いや、わたしの手柄じゃないんだけど』という『門司港』に到着した二人は、早速、『汗をだらだら流しながら焼きカレーを食べ』た後、『潮風号というトロッコ列車』に乗ります。『列車降りたら飲み物でも買おう。コンビニどっかにあったかな』と言う牧男に『降りたら行くところあるから』と和歌は『がっと腕を摑んで言』います。『列車を降りてから、記憶を辿ってテンダネス門司港こがね村店に向かう』ことにした和歌は『彼は、いるだろうか。絶対絶対、いてほしい。いますように!』と思いながら歩みを進めます。そして『視界にテンダネスの看板が飛び込んで』きて『頭の中でファンファーレが鳴った気がした』和歌は『駐車場を走り抜け、店に飛び込』みます。『いらっしゃいませ』と『やわらかな声がし』、『耳をやさしく撫でる声。ああ、間違いない。彼だ!』と思う和歌の横で『わ、イケメン』と呟いた牧男。『あー、やっぱこれ恋だわ』と思う和歌は『レジカウンター』へと走ると『あの!わたし大石和歌と言います!お名前、教えてください!』と話しかけます。それに、『志波、三彦。この店の店長をやっております』と答える彼。『志波さん。なんて素敵な名前。一秒でも会えるのなら、熊本と門司港の距離なんてケセラセラだ』と思う和歌。そんな『テンダネス門司港こがね村店』に集う人たちを生活感豊かに描いていく物語が始まりました。
“誰にとっても大切な想いをささやかにつなぐ場所、北九州門司港の小さなコンビニの心温まる物語”と内容紹介にうたわれるこの作品。町田そのこさんの違った側面が見れる隠れた人気作「コンビニ兄弟」の続編となっています。町田さんというと、本屋大賞受賞作の「52ヘルツのクジラたち」やすれ違う母と娘の姿を描いた「星を掬う」など目を伏せたくなるような厳しい現実を前にした人たちを透徹した目で描いていく作品を書かれる方という印象があります。この作品はそんな印象をお持ちの方に是非読んでいただきたい、上記した二作とは一味違う町田さんのかっ飛んだ世界観で物語は描かれていきます。一方でこの作品は『門司港』を舞台としており、まるで『門司港』のガイドブック?と思えるくらいに街並みの見事な描写もなされていきます。まずは、『門司港のいいところは、歩いていける距離にさまざまなものがあることだ』と描かれていく街並みを見てみたいと思います。
・『「跳ね橋が上がります」とアナウンスが聞こえて周囲を見回』す主人公は、『”ブルーウィングもじ”という名の、日本最大級の跳ね橋』が『跳ね上がる』のを目にします。
→ 『上がっていた橋が再び繫がったときに、最初に橋を渡ったカップルは一生結ばれるというジンクスがあって、「恋人の聖地」とも呼ばれている』『跳ね橋』を見て主人公は付き合い始めた頃の彼のことを思い出します。
・『お土産屋やショップ、飲食店が立ち並んでいる』『門司港レトロ海峡プラザ』へと足を向ける主人公。『地元情報番組でもよく取り上げられている』『観光客で溢れる場所』を目にします。
→ 『どこか浮ついた雰囲気のひとたちを眺めていると、とても近くなのに遠く知らない場所を歩いているような気分』になるという主人公は『日常とは違う、非日常感』の中に『足取りが軽くな』っていきます。
いずれも『門司港』の観光ガイドにも紹介されている有名な場所のようです。しかし、ガイドブックがあくまで場所の紹介のみであるのに対して、この作品では、そんな場所のリアルな描写にプラスして、そんな場所を訪れる登場人物たちの生き生きとした姿がそこに浮かび上がってくるのが何よりもの魅力です。私は『門司港』を訪れたことはありませんし、そもそも場所さえ不確かな状況です。しかし、前作「コンビニ兄弟」とこの続編を読んだことで、『門司港』に行ってみたくなるだけでなく、この作品を読んでから行くことは”聖地巡礼”的な楽しみ方があるようにも思いました。
次にこの作品の構成を見てみたいと思います。この作品は〈プロローグ〉と〈エピローグ〉で挟まれた三つの短編が連作短編を構成しています。では、そんな三つの短編をご紹介しましょう。
・〈第一話 恋の考察をグランマと〉: 『夕飯の赤貝の刺身に』あたって二日間休んだ間に『彼氏の金沢大輔に「好きな子できたんだ」、とフラれた』のは主人公の詩乃。『幸福がこんなにも脆いとは』と思う詩乃のある日の夕食の場面。『子どもの恋愛なんてろくなもんじゃない』と晩酌しながらよく喋る父親に気のない返事を返す母親。そんな場から逃げ出した詩乃は、祖母の部屋へと赴きます。そこには『ふんわりと綿あめを載せたみたいな髪に、品の良さそうなメイク』、『服は少し派手で』、『なんと、ペディキュアまでしている!』という普段とは『別人状態』になった祖母の姿がありました。
・〈第二話 廣瀬太郎の憂鬱〉: 『絶対、渡しておいて!』、『君宛てってわけじゃないから、勘違いしないでよ?』と『バイト中に六人の女性から連絡先を渡され』『すこぶる機嫌が悪』くなるのは主人公の廣瀬太郎。『彼女たちがほんとうに渡したい』のが店長であることに苛つく太郎は『何様だあいつら!』と同僚の『村岡に愚痴をこぼし』ます。そんな太郎は『樹恵琉さんに、関わるな!』と『三人の男性から』『いちゃもんをつけられた』ことも不満に思います。『アイドルのように可愛らしい顔立ち』をしている『志波三彦の妹、志波樹恵琉』。そんな不満を抱きながらバイトを続ける太郎の前にある人物が現れます。
・〈第三話 クィーンの失脚〉: 『クラスメイトの栗原志摩には関わらないほうがいい』という噂を耳にしたのは主人公の村井美月。『いっつも変なひとと一緒にいるの。あれ、やばいよ』と教えてくれたのは『高校に入学してからできた友人、水戸江里奈』。『キモくてウケる。アニオタおつかれって感じ』と栗原のことを言う江里奈と同じグループの美月。そんな場に『三十代の女性教諭、林聡子』が入ってきて授業が始まりました。そんな中に栗原の方を見ると『何かをノートに書いている』様子。それを見つけた林が叱ると『先生、知っているのだ?昨日から始まった企画で…』と意味不明なことを語り始めた栗原。
三つの短編にはそれぞれ主人公が登場します。そして、それぞれの主人公たちが家族の関係性に悩んだり、友達関係に悩んだりという物語が綴られていきます。そこには、『テンダネス門司港こがね村店』はまさに背景として登場するだけであって『イケメン』店長が最前面に登場したり、ましてや視点が移動することはありません。このあたりが、もう少し『コンビニ』自体にもフォーカスがあたった前作との大きな違いだと思います。それでいて、そんな店長を想像させる描写があちこちに登場するのもこの作品の特徴です。
・『うつくしい見た目や頭を麻痺させそうな変な匂いを放っている』
・『その声は、楽器かと思うほど低くまろやかに響いた。え、このひと声すらヤバくない?』
・『刺激が強すぎる』、『濃縮タイプのめんつゆを薄めず使った感じっていうか、シャネルの香水を思い切り吹き付けられた感じっていうか、とにかく強すぎるのだ』
一体、『イケメン』店長とはどんな人物なのか?そもそも『外でファンクラブに囲まれてますねえ』と店員が冷静に語るところなど強烈極まりない状況です。これだけだと、そんな人物には近づきたくない、そう思ってもしまいます。しかし、そんな店長の本当の魅力がこんな風にも語られます。
・『店長がひとに好かれるのって、見た目だけじゃなくて、なんつーか、愛がすげえってのが重要』、『このひとは接する瞬間、自分の瞳の中にいるひとに対して誠実に愛を注いでいる。そのひたむきさのようなものが、ひとを惹きつけるのだ』。
う〜ん、なるほど。こんな風に聞くと、『イケメン』店長というどこか軽いイメージが少し変化しそうです。この続編ではいずれの短編もそんな店長が最前面に描かれることなく淡々とそれぞれの主人公の物語が描かれていきます。そして、そのそれぞれの物語は、まさしく町田さんならではの読み味を感じさせる極めて真面目で誠実な世界観を前提にした物語です。設定自体が「52ヘルツのクジラたち」のように重々しくはないので、あの重さを苦手に思われる方にはこちらの物語の方が楽しめるのではないかと思いました。〈エピローグ〉でこの世界がさらに続編へと続いていくことが匂わされもするこの作品。町田さんの物語世界の魅力を再認識させていただいた作品でした。
人気作「コンビニ兄弟」に続く続編として刊行されたこの作品では、『イケメン』店長が働く『テンダネス門司港こがね村店』という舞台を用意することで、町田さんの他の作品には見られないはっちゃけ感を味わうことができました。その一方で、
・『たいていの宝物は自分の手の中で初めて輝くもんなんだよ』
・『正しさの陰に苦しんでいるひと、傷ついているひとがいるなら、正しさを主張しなくていいこともある』
そして、
・『こんなに自分に向き合おうとしてくれるひとがいることが、嬉しい』
町田さんならではの心に深く刻まれる言葉の数々にも出会えるこの作品。リアルな『門司港』の描写に、”聖地巡礼”をしたくもなってくるこの作品。
町田さんの魅力は、本屋大賞にランクインした重厚な作品を読むだけではわからない。改めてそう感じた、今後の続編にも期待したくなる作品でした。続きを読む投稿日:2023.03.01
1巻に引き続き、2巻も面白かった!
本当に、人の内面を描くのが上手だなぁと思いながら読んでた。あ〜こういう人いるよな〜って共感するところもあれば、私もこういうこと人にしてたかも…と反省するところもあっ…て、毎回新しい発見がある。
最後の美月の話が個人的にとてもよくて、
梓の時点での話を読んだ時はただ単に嫌な子やな〜としか思ってなかったけど、自分が正しいと思ってたことも他の人にとっては…っていう話はよくあるし、案外自分では気づけないことだと思う。
やったことはよくないことだったけれど、反省できて、いい友達ができて良かった。
志摩のお母さんの台詞がとても素敵だったのでメモ。こんなお母さん欲しいなあ続きを読む投稿日:2024.04.29
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