血の轍(12)
押見修造(著)
/ビッグスペリオール
作品情報
少年審判、開廷・・・裁きの行方は!?
高台で向き合った従兄弟の”しげる”は、
かつてママに高台から突き落とされた”自分”だったーー
僕が消えることが正しいこと・・・そう思った瞬間、静一は”自分”を葬るため
しげるを突き落とし、殺めた。
それは、己の中のママとの決別の儀式。
罪悪感を一切感じることなく、静一は鑑別所に収監される。
そこで静一を待ち受けていたのは「内省」の日々。
深淵に意識が向かうなか、心の隙間にスルリと入って来たのは
しげるを殺してまで決別を試みた「ママ」だったーー!!
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商品情報
- シリーズ
- 血の轍
- 著者
- 押見修造
- 出版社
- 小学館
- 掲載誌・レーベル
- ビッグスペリオール
- 書籍発売日
- 2021.11.30
- Reader Store発売日
- 2021.11.30
- ファイルサイズ
- 79.3MB
- シリーズ情報
- 全17巻
※この商品はタブレットなど大きなディスプレイを備えた機器で読むことに適しています。
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この作品のレビュー
平均 4.6 (7件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
究極の”内省”エンタメ、というキャッチコピー。
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前の巻までの停滞がいっきにこの巻で……。
「なんなん」のリフレイン。
母親の顔……ひとつひとつの顔……。
静一はまだしも想定内だが、母親の描写は突き抜きすぎて、しかもありがちでなく。
萩尾望都「残酷な神が支配する」を先日再読したところだが、同じフォルダに入れてみたい。
しかしこの話、いつまでも終わらないか、無理に断ち切るようにしなければ、終わらないぞ……。
原理的に終わりがない話だからこその絶望。投稿日:2021.12.21
このレビューはネタバレを含みます
わあ、ええ、そんな…と一人で声をあげながら読んだ。本はいつも無言で読むので、自分にとってかなり珍しいことで、それだけ心が動かされたのだと思う。
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ママの短い前髪や幼い口調が年齢に似合わず子どもじみてい…て、本当に生まれ直したみたいに可愛くキラキラ目を輝かせて、グロテスクだった。
母の一挙一動が全部ものすごい殺傷力。刃物でザクザク切り刻み続けているようで、静一の気持ちに寄り添って読んでいたから痛くて痛くて仕方なかった。
・私は子供を作るべきじゃなかった。産まないほうがよかった=あなたは存在しないほうがよかった。
・産んだ後もずっと産まない方がよかったんかなって思ってた=実際に産まれて一緒に十余年過ごした上でも、やっぱりあなたは存在しない方がよかった。
・産んだのは自分を救うため。=あなたのためのことはひとつもなかった。
・ひとごろしになってくれてありがとう=幸せは願っていないどころか、地獄のような思いをしているあなたを見て嬉しく思う。
・もう捨てます。捨てていいですよね?=あなたは不要。そもそもひとりの人間とすら思っていない。
・首を絞められても無表情で「あっそう」=あなたが何をしても、私には何の影響も及ぼすことはできない。何も変えられない。あなたのすることは無意味。
・私の人生がはじまる。もう帰っていいですかぁ。最後まで静一をちらりとも見ない=あなたのことなど本当に心の底からどうでもいい。文字通り、眼中にない。
今までの苦しみも努力も我慢も全部母の愛をもらうためだったのに、全部全部ムダになった感覚だろう。あなたが産まれたことも生きてきたことさえも全部間違いでした、と言われて、これってつまり、「自分の存在すべてがムダになった」とほぼ同一だ。しかも他の人をどうでもいいと捨てさせられてしまった上で、唯一影響力がある人から言われるのだ。こんなのってない。むごい。
「しげちゃんが死んだのは、ムダでした。意味なく死にました。」も ものすごくひどい言葉だけど、彼にとっては完全にそうで、唸った。自分を殺そうと思ったけど殺せなかったわけだし、しげちゃんの死によって何の変化ももたらされていないんだから。
その後にこういう流れがきて、「静一の心が死んだのは、ムダでした。意味なく死にました。」と誰かに言われているような感じだった。
最後の、周りの人がだんだん歪んで消えていって、最後に自分も消えてしまう場面は、すごく恐ろしくて秀逸だった。無だ。残された「救護院に送致します。」という言葉は、ああこれが唯一残っている未来なんだ、という感じがした。
どうなるんだろう。こういうところから立ち直るのって、すごくすごく難しいことだ。ここまで辿り着くまでの流れは、足掻いても抵抗しようがないくらいの激流で、流されざるをえなかったんですって言っても過言じゃないくらいなのに。続きを読む投稿日:2023.09.25
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