剛心
木内昇(著)
/集英社文芸単行本
作品情報
日本近代建築の雄、妻木頼黄(よりなか)。幼くして幕臣の父を疫病で亡くし、維新後に天涯孤独の身となり、17歳で単身渡米。のちにコーネル大学で学んだ異才は、帰国後にその力量を買われ、井上馨の「官庁集中計画」に参加。以来、官吏として圧倒的な才能と情熱で走り続ける妻木の胸には常に、幼い日に目にした、美しい江戸の町並みへの愛情があふれていた。闇雲に欧化するのではなく、西欧の技術を用いた江戸の再興を。そう心に誓う妻木は、大審院、広島臨時仮議院、日本勧業銀行、日本橋の装飾意匠をはじめ、数多くの国の礎となる建築に挑み続ける。やがて、数々の批判や難局を乗り越え、この国の未来を討議する場、国会議事堂の建設へと心血を注ぎこんでいくが・・・・・・。外務大臣・井上馨、大工の鎗田作造、助手を務めた建築家の武田五一、妻のミナをはじめ、彼と交わった人々の眼差しから多面的に描き出す、妻木頼黄という孤高の存在。その強く折れない矜持と信念が胸を熱くする渾身作、誕生!
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商品情報
- シリーズ
- 剛心
- 著者
- 木内昇
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文芸単行本
- 書籍発売日
- 2021.10.26
- Reader Store発売日
- 2021.11.25
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 448ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (21件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
江戸から明治へ。
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時代の移り変わりと共に、鎖国を解いた日本へ次々と流れ込む西欧文化。
新しい日本を造るため、古き佳き日本を捨て洗練された西欧技術を取り入れようと試みる政府に対しストップをかける一人の建築家・妻木頼黄の物語。
右にならえ、とばかりに何でもかんでも西欧建築の真似をするのではなく、日本の気候風土に適した日本古来の建築様式を巧く融合させようとする心意気がいい。
常に現場で働く職人たちに敬意を払う真摯な姿勢。職人たちに対する物腰はいつも柔らかい。けれどそこに妥協は一切ない。
強さと柔らかさをバランスよく兼ね備えた妻木の人柄がとても魅力的。
建物の揺れに対する強さの中心を示す”剛心”のように、いかなる試練を課されても全くブレない心が妻木の姿勢を崩さない。
「新たな技術を取り入れながらも、この国の、自分たちの根源を忘れずに引き継いでいくような建物にしたいと思っている。そういう建物がいくつも建つことで、江戸のような、心地いい街並みがきっとできる。子供たちの、またその子供たちの世代まで、誇りになるような街がね」
令和の時代を生きる我々の目の前に広がる景色は、妻木たち先人の強い信念が生み出した技と努力の結晶。
妻木から受け継いだ景色を、また次の時代へと引き渡して行かなければならないと強く思った。
妻木を陰ながら支える妻が更に魅力的だった。
木内作品に登場する女性たちは凛とした人が多くて好き。投稿日:2022.02.07
知り合いの幼馴染ということでこの作家さんのことを知り、幕末の青嵐に続いてこの本を拝読。歴史小説は好きなジャンルということもあり、楽しく読めた。実在の人物が出ると、読んでる時の妄想がフィクション以上に捗…る感じがする。木内昇さんの上手さのおかげかもしれないけど。
歴史的建造物や高いビルを愛でるのは好きだけど、技法には詳しくないので、作中の細かい描写にはついていけなかったところもあった。でも、妻木頼黄やその友人?弟子?意志を継ぐ者達の熱意が文字から伝わってきた。時代に翻弄されつつも自分の意思を持って突き進む男達の話は、シンプルにカッコいいな、と。
辰野金吾(東京駅の建築家)がすごい自己主張の激しい人扱い(からの悪役?っぽい感じ)されてたのが意外だったけど、国会議事堂と比べると確かに同じ時代に設計された建物とは思えない趣の違いを感じる。建物による主張か、土壌との調和か。どっちが良いってわけでもないとは思うけど、改めて明治大正昭和初期の建築を見たくなった一冊でした。続きを読む投稿日:2023.08.09
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